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ミシュラン、2016年発売の新型「X One」を「アドバンスユーザーミーティング」で公開

転がり抵抗を15%低下させ、偏摩耗を大幅に低減する「X One Multi Energy T」

2015年9月11日開催

 日本ミシュランタイヤは9月11日、同社のトラック・バス用タイヤユーザーなどを対象とした「2015 ミシュラン アドバンスユーザーミーティング」を都内で開催。このなかで2016年に発売を予定しているトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「X One」の新製品「X One Multi Energy T」についての情報を公開した。

2016年に発売する「X One Multi Energy T」について説明する日本ミシュランタイヤ トラックバスタイヤ事業部 技術部長 大江一孝氏

 事前にとくに説明もなく、ミーティング中にサプライズ公開のように紹介された新製品「X One Multi Energy T」は、ミーティングの中盤に実施された「ミシュランの革新的な取り組み」を紹介する1例として取りあげられた。

 解説を担当した日本ミシュランタイヤ トラックバスタイヤ事業部 技術部長 大江一孝氏は、「2つの新製品をご紹介いたします」と語りはじめ、8月に発売したトラック・バス用低燃費オールシーズンタイヤ「XZN+ MIX ENERGY」に続き、「まだこれは発売されておらず、まだ先の発売になりますが、今日集まっていただいた大切なお客さまに先行してお知らせさせていただきます」と語り、「X One Multi Energy T」を紹介した。

 同社のトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「X One」の新製品となる「X One Multi Energy T」は、偏摩耗に対してさらなる革新的な技術を投入することを開発のメインテーマとして、現行モデルの「X One XTE」「X One XTE*」の後継製品となるタイヤ。タイヤの接地面の最適化し、状況に左右されず一定に保つ「アドバンス・ケーシング・テクノロジー」と「X One」の基幹技術であるインフィニコイルをさらに進化させた「ワイド・インフィニコイル」で偏摩耗を大幅に低減させるほか、ゴム自体にも進化させた「アドバンス・テクノロジー・コンパウンド」を採用することにより、転がり抵抗を15%低減(ISO28580のテストにおける数値)させて低燃費性能を高めているという。

サプライズ公開された新製品「X One Multi Energy T」。2016年の発売を予定している
「X One Multi Energy T」のトレッドパターン。タイヤサイズは「X One XTE」「X One XTE*」と同じ455/55 R22.5
進化の大きなポイントは「偏摩耗大幅低減」「15%転がり抵抗低減」という2点
「アドバンス・ケーシング・テクノロジー」「ワイド・インフィニコイル」「ディレクショナル・マイクロサイプ」が偏摩耗を、「アドバンス・テクノロジー・コンパウンド」が転がり抵抗を抑制する
従来型よりカバーする面積をさらに広げた「ワイド・インフィニコイル」が均一な接地面を確保
内容の解説はなかったが、タイヤコンパウンドも進化させて転がり抵抗を15%(ISO28580のテストにおける数値)低減させた
「アドバンス・ケーシング・テクノロジー」では、これまでの「スタンダード・ケーシング」(左)では荷物の有無による車両重量の変化でケーシングが変形し、この影響で接地面の形状や力のかかり具合が変わってしまっていたが、新しい「アドバンス・ケーシング」ではトラックの幅広い荷重変化を受けてもケーシング形状の変化を抑え、接地面の形状を安定させて偏摩耗を低減する

 このほかに大江氏は、もう1つの「XZN+ MIX ENERGY」についても解説を行い、「このタイヤをひと言で表すなら、“ミシュランが考える日本市場のためのトータルバランスミックスタイヤ”と位置づけられます」と紹介。日本以外の市場ではトラックなどに装着されるタイヤは、駆動輪、操舵輪など目的別に異なるタイヤを装着することが一般的になっているが、一方の日本市場では古くからトラック用タイヤのサイズがかなり画一的で、1台のトラックでタイヤをローテーションして経済性を高めている。このため、トラックのどの車軸に装着されても問題なく性能を発揮できることが求められ、「XZN+ MIX ENERGY」はそんな日本市場での使い方に適したタイヤであると語った。

 さらに商用車としてのトラックで重要視される耐摩耗性に加え、近年ユーザーから強く要望されるようになった低燃費性能も、従来製品となる「XJW4+」と比較して10%以上向上させていることを紹介。フランスのメーカーながら日本市場でのニーズに応える製品開発に務めていることをアピールしている。

欧州、アジアなどを問わず、日本市場以外ではタイヤが装着される車軸に合わせて別のタイヤが用いられるのが一般的だが、日本市場は全軸で同じタイヤを装着することが主流になっているという
製品名のアルファベットなどにそれぞれ意味合いが与えられており、Xはミシュランの製品であること、Zはすべての車軸に装着できること、Nはフランス語の「雪(neige)」で雪道にも対応すること、MIXはオールシーズンタイヤであることを表しており、さらに+で長寿命であることを表現している
「XZN+ MIX ENERGY」は「低燃費性能」「ウェットグリップ」「オールシーズン性」「多用途対応」といったユーザーメリットを備えている
従来製品の「XJW4+」からの変更点
輸送業者20社でのテストで従来品比10%以上のライフ性能向上を実証している
転がり抵抗はサイズにより上下するものの、10%以上の性能向上を計測している
日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ベルナール・デルマス氏

 このほかにミーティングでは、冒頭に日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ベルナール・デルマス氏からのビデオメッセージを放映。デルマス氏はスケジュールの都合が合わずに参加できないことを非常に残念だと述べたほか、1889年から続くミシュランの歴史について紹介。モビリティの発展に貢献することがミシュランの使命であると語り、これまでにトラックの安全性や低燃費性に大きく高めるダブルタイヤ、ウェット路面でのグリップ力や耐摩耗性と低燃費性の両立などに貢献するシリカ入りタイヤコンパウンドなど、先進的な技術の市場投入してきたと語っている。

日本ミシュランタイヤ トラック・バスタイヤ事業部 執行役員 高橋敬明氏

 デルマス氏のビデオメッセージに続いて登壇した日本ミシュランタイヤ トラック・バスタイヤ事業部 執行役員の高橋敬明氏は、ミシュランのもう1つの大きな業績としてラジアルタイヤの発明を紹介。それまでの2倍という寿命を発揮するラジアルタイヤは、タイヤメーカーにとっては売り上げの減少に繋がる可能性を持つ技術であったものの、デルマス氏も口にした「モビリティの発展に貢献することがミシュランの使命である」との考え方から、ユーザーのメリットを優先して製品化した結果、それまで販売量で世界10位のメーカーだったミシュランが大きく飛躍する原動力になったというエピソードを述べ、「2015年の今日でも、先進的で業界の発展に貢献できる提案をしていかなければならない。これは日本だけでなく、世界における使命だと考えています」とコメントした。

 また、2015年の活動では、2014年12月から正式稼働を始めた「e-Retread(イーリトレッド)システム」の運用内容について解説。運用を開始してからデータの蓄積が進んだことで、リトレッドのベースとなる「台タイヤ」についてさまざまなデータを解析できるようになり、現在ではユーザーに対してどのようにタイヤをあつかうと台タイヤとして再利用できる可能性を高めるかなど、情報提供や提案などができるようになったと語った。

タイヤメーカーとしての売り上げ減少という懸念より、ユーザーの利益を優先してラジアルタイヤの販売を開始したことで会社は大きく成長。「モビリティの発展に貢献すること」をミシュランの使命と位置づけている
ミシュランでは先進的な考えで新しいことにチャレンジする運送会社を「アドバンスユーザー」と位置づけ、協力して発展に繋げたいと考えている
2014年12月にスタートした「e-Retread」を活用し、ユーザーにリトレッド可能な「台タイヤ」(使用済みタイヤ)を増やしていく提案を始めている
タカラ物流システム 常務執行役員 丸山利明氏

 このほか、ユーザーの代表として、タカラ物流システム 常務執行役員の丸山利明氏が「X One」の導入効果などについての発表を実施。丸山氏は「X One」導入に至るまでにも、一般的な13.5t積みトラックより効率が高められる15t積みのトラックを多大な苦労の末に導入したり、運送会社としてさまざまな取り組みを続けてきた苦労を紹介。しかし、2015年8月から適応が始まった新しい保安基準などによってトラックの重量は増加する一方、車両が重くなっても積み荷をできる限り減らさずに済む方策として「X One」を導入したことを紹介した。

 丸山氏は「X One」導入が必ずしも順風満帆ではなく、とくにドライバーからは大きな環境変化に対する不満が多く寄せられていることなどを明かしつつも、軽量化と転がり抵抗の低下などによって燃料費を削減できていること、同時に導入した空気圧モニタリングシステムによりドライバーの安全を確保しやすくなること、珍しいタイヤがドライバーと顧客のコミュニケーションのきっかけになることなどをメリットを紹介し、今後も導入を進めていく予定であると述べている。

タカラ物流システムでは、車両の重量増によって積み荷の積載量を確保できなくなることが課題となっていた
15t積みトラックの導入で効率向上を計画
「X One」導入のメリット
1軸重につき約100kgの軽量化を達成
タイヤの変更で約3.5%の低燃費化に繋がった。丸山氏はこの低燃費化がもっとも大きな効果だと感じていると述べている
リグルーブによってタイヤの寿命をさらに高めることも大きなメリット
2015年度中に「X One」を装着する2台のトラックを導入予定。今後は大型トラック全車で「X One」化を目指すとのこと
会場の駐車スペースでは「X One」装着車両を展示していた

(編集部:佐久間 秀)