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【人とくるまのテクノロジー展 2018】ジェイテクト、旭化成、コンチネンタル、島津製作所、ショーワ、日本特殊陶業などパーツサプライヤーブースレポート

ジェイテクトは動作温度-40℃~85℃の「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」、旭化成はカメラ脈波センシング「VitalBit」初公開

2018年5月23日~25日 開催

入場料:無料(登録制)

ジェイテクトブースで初展示された「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」

 神奈川県横浜市のパシフィコ横浜・展示ホールで、5月23日~25日の会期で自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2018 横浜」が開催されている。入場料は無料で登録制。

 このイベントでは597社が出展しており、展示ホール内の1207ブースで各社の製品や技術を紹介しており、本稿ではパーツサプライヤーの展示内容の一部について掲載する。

ジェイテクト

2.2V~3.8V 高耐熱リチウムイオンキャパシタ

 ジェイテクトのブースでは、世界初となる動作温度-40℃~85℃を実現した「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」を初展示。この高耐熱リチウムイオンキャパシタは、同社で大型車向けEPS(電動パワーステアリング)を製品化するため開発をスタートさせたところ、乗用車で一般的に使われている12Vの補機用バッテリーでは出力が足りず、補助としてリチウムイオンキャパシタの使用を検討したところ、耐熱性の部分で要件を満たす製品がなく、大型車向けEPS開発がストップする事態になったことが開発のきっかけになっているという。

 取引メーカーにも高耐熱化した製品のリクエストを出しつつ、自社でも独自に開発を開始したところ、ジェイテクトの方が先に実用化にたどり着いたため今回の発表になったとのこと。すでに2019年4月をめどに先行量産を始め、2019年10月には本格的な量産をスタートさせるべく、工場の生産ラインの調整が進められている。

2.2V~3.8V 高耐熱リチウムイオンキャパシタを4個使った「EPS用補助電源システム」
側面にはEPS用のほか、12Vの出力コネクターを設定
EPS用補助電源システムの解説パネル

 また、ジェイテクトの取り扱う製品ではエンジン関連の鋳造パーツやドライブトレーン、ベアリング類が高い販売比率となっているが、これから先でクルマの電動化が進めば売り上げの減少が避けられず、これまで得意としてきた分野とは異なる分野の製品に活路を見出していくことも必要なってきたこともあり、この高耐熱リチウムイオンキャパシタには大きな期待がかかっているという。

 今回の展示では、開発のきっかけとなった「EPS用補助電源システム」と合わせてブース内で紹介しているが、このほかにもジェイテクトではクルマ向けの「電動4輪駆動システム」や「電動ターボチャージャー」などに応用することを計画。さらに乗用車以外でも、農機や建機、鉄道などの分野で高耐熱のリチウムイオンキャパシタは需要があるとしており、広い視野で製品化を模索していくという。

高耐熱リチウムイオンキャパシタはジェイテクトブースの正面でも展示され、回転するショーケースを使ってアピール
高耐熱リチウムイオンキャパシタで培ったノウハウを応用した参考出品の「高耐熱リチウムイオン二次電池」。リチウムイオンバッテリーはさまざまなパテントが他社に押さえられているためジェイテクトとして製品化する計画はないが、ジェイテクトが特許出願した高耐熱化の技術を他社に提供することは可能とのこと。高耐熱化で冷却システムが不要になり、コンパクトで軽量な設計を実現できることも大きなメリットだとアピールしている

旭化成/旭化成エレクトロニクス

旭化成と旭化成エレクトロニクスの合同ブースで初公開されたカメラ脈波センシング「VitalBit」

 旭化成と旭化成エレクトロニクスの合同ブースでは、カメラ脈波センシングの「VitalBit」を初公開し、システムの作動を体感できるデモを行なった。

 VitalBitでは、スバルの新型「フォレスター」に採用された「ドライバーモニタリングシステム」で使用するような車内向けカメラを活用。赤外線映像からカメラに写った人の顔を検出し、脈波の抽出と脈拍数の算出を行なう技術となっている。

 VGA以上の解像度を備えたカメラであれば幅広く連携可能なソフトウェアとなっており、この技術でセンシングした乗員の脈拍データを活用して、ドライバーの体調急変を検知してADAS(先進安全システム)で車両を路肩に停止させたり、乗員のストレスに対応するBGMの選曲、エアコン調整、香りによる演出などが可能になるとのこと。乗員の動きなどがノイズになり、腕時計のように装着するウェアラブル端末と比較するとセンシング精度は劣るものの、日常的に無意識に利用できることがメリットになるという。

VitalBitの体験デモ
カメラが目、鼻、口の位置から顔を検出。右下の数字が脈拍数となっている
VGA以上のカメラに幅広く対応。既存のシステムに追加可能なシステムになっているという
2017年に続いて展示されたコンセプトカー「AKXY(アクシー)」は装備内容をリニューアル。前回は閉めたままだったボンネットが取り外され、内部の旭化成製品が紹介されている
インテリアでは、アクリル樹脂シート「デラグラス」を使ったアームレストが注目点
デラグラスでは樹脂表面に焦点を結ばせることが可能になり、内側から投射した映像をディスプレイのように表示できる。展示では木目調パネルのアームレストにエアコンやオーディオの情報が次々に表示されていた

コンチネンタル・オートモーティブ

最新型HMIとして展示された「カーブドセンタースタックシステム」

 コンチネンタル・オートモーティブのブースでは、事前に実施された出展概要説明会の記事でもすでに紹介しているように、「自動運転」「電動化」「コネクティビティ」の3分野で技術展示を実施。

「コネクティビティ」の展示として用意された最新型HMI「カーブドセンタースタックシステム」では、縦型、横型のAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)2個を使い、インテリアデザインにマッチする曲面ディスプレイで全面を構成。画面の内側に「ハプティック(触覚)フィードバック」を内蔵し、感圧センサーも備えてタッチ操作に対応。表面に軽く触ったときもボタンが反応するほか、指先に力を入れると押し込まれたような触感が振動で再現される。

 また、上下のディスプレイ間にはカメラが内蔵され、乗員のアクションを検知可能。展示デモでは「手のひらをかざすことで音楽再生のミュート」「サムアップで再生中の音楽をお気に入り設定」という2種類のアクションが登録され、ディスプレイに触ることなく操作できることが示された。

ナビ表示を行なっている横型ディスプレイの下にカメラを内蔵。画面内にあるサムアップのアイコンの外周がインジケーターになっており、乗員のアクションを検知すると時計回りにインジケーターが点灯。1周するまで維持するとアクションが入力される
縦型ディスプレイの中央には凸形状の二重丸が設定され、ダイヤルアクションをサポート。利用状況によってオーディオ音量やエアコン温度の操作に対応していた
縦型ディスプレイ下端はカーナビやオーディオ、エアコン設定などの切り替えスイッチとなっている。しっかりした強度のあるディスプレイだが、「ハプティック(触覚)フィードバック」によってクリック感が与えられ、カチッと押し込んだような手応えが感じられた
「3Dフラッシュライダー」

 赤外線センサーを使った「3Dフラッシュライダー」では、120度の視野角で周辺環境をセンシング。物体の位置と距離を計測するほか、毎秒30回の検出で相対速度も検出。物体の位置と距離を演算して「高解像度3D点群」として扱う。赤外線による検出は天候や時間帯の影響を受けにくく、相対速度をチェックできることもメリットになる。

「3Dフラッシュライダー」のユニット
画面左上が物体の形状、左下が物体との距離になり、これ組み合わせて点群データを生成している
コンチネンタルブース

島津製作所

島津製作所のエンジン筒内高速モニター「DIOMELAS(ディオメラス)」

 島津製作所のブースでは、5月21日に「世界初のエンジン筒内高速モニター」として発売した「DIOMELAS(ディオメラス)」を展示。レーザー光を往復させて吸光度を測定し、エンジン内の温度、CO2濃度、水分濃度をチェックする小型プローブの先端部分なども間近で見学できるようになっていた。

 ワンオフの特注品としてはエンジン筒内の状況をチェックする機器はこれまでにも存在していたが、1回で計測できるのは温度やCO2濃度など個別の情報だけで、計測してからデータ化するまでに時間がかかるものとなっていた。ディオメラスでは1回の計測時に3つの情報を取得でき、最短2万分の1秒という周期で高速計測できることが大きなアドバンテージになるという。

エンジンに取り付けられるディオメラスの小型プローブ。金色の先端部分に設定された四方のスリットからエンジン内の気体が入り、内側でレーザー光が往復するときに気体内をレーザー光が通過。戻ってきたレーザー光に含まれる要素を解析することで、エンジン内の状況を測定する仕組みとなっている

ショーワ

 ショーワブースでは、フィードフォワード制御を採用する同社の「SHOWA EERA(ショーワ・イーラ)」シリーズの第3弾「SHOWA EERA ステアリング」を展示。バイクのステアリングに装着して操舵加重を変化させるステアリングダンパーであるSHOWA EERA ステアリングでは、減衰力の設定変更にフィードフォワード制御を用い、走行状況に適したセッティングを自動選択。交差点や市街地走行では操作を軽く、高速巡航時などは操作を重くしてライダーの負担を軽減する。

「SHOWA EERA(ショーワ・イーラ)」シリーズの3製品。右が最新バージョンとなる「SHOWA EERA ステアリング」で、中央が第1弾の「SHOWA EERA Balance Free Damping Force」、左が第2弾の「SHOWA EERA ライドハイト」
SHOWA EERA ステアリングはハンドル中央に設置。ダンパーのバルブ開度をフィードフォワード制御で自動調整してライダーの負担を軽減

日本特殊陶業

日本特殊陶業ブースで展示された3種類の次世代自動車技術

 NGKとNTKの両ブランドで製品を展開している日本特殊陶業のブースでは、次世代自動車技術として現在開発を進めている酸化物積層電池の「全固体電池」、燃料電池車の安全性を高める「水素漏れ検知センサ」、完全自動運転や高度道路交通システムなどが実用化された場合の大容量データ通信に対応する「高周波用途多層TCC」を展示した。

NTKブランドで開発が続けられている「全固体電池」
全固体電池の技術概要
NTKブランドで市販化されている「水素漏れ検知センサ」の「EGAS-HL」
EGAS-HLに内蔵されているMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子
EGAS-HLの解説パネル
大容量データ通信に対応する「高周波用途多層TCC」
日本特殊陶業ブース