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コンチネンタル、「人とくるまのテクノロジー展」出展内容についてバート・ヴォーフラムCEOなど解説
「自動運転」「電動化」「コネクティビティ」の3分野で技術展示
2018年5月11日 16:32
- 2018年5月10日 発表
コンチネンタル・オートモーティブは、5月23日~25日にパシフィコ横浜・展示ホール(神奈川県横浜市)で開催される自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2018 横浜」の出展概要を発表し、5月10日に報道関係者向けの事前説明会を開催した。
今回のイベントでコンチネンタルは、「Making Mobility A Great Place To Live(モビリティを素晴らしい空間へ)」をブースコンセプトに設定。「自動運転」「電動化」「コネクティビティ」の3分野で技術展示を実施する。
「自動運転」では、車両が周辺状況を検出するキーコンポーネントとなる「3Dフラッシュライダー」を出展。近距離検出を目的に開発されているコンチネンタルの新技術では、120度の視野角で毎秒30回の「高解像度3D点群」を生成。視野内のピクセルに対して正確な距離測定をリアルタイムに実施することで、自動運転の「運転ストラテジー」構築で必要となる物体リストができあがる。
天候や時間帯に左右されずに「リアルタイムのマシンビジョン」と「環境マッピング機能」を同時に実現し、コンチネンタルが用意しているレーダーやカメラといったセンサー類と協調して車両周辺に存在する物体を常に検出する強力なパッケージを形成するという。
「電動化」では、場所によって変化する充電環境に幅広く対応し、AC(交流)、DC(直流)などさまざまな電源からの充電が可能になる汎用充電システム「AllCharge」をはじめ、モーター、インバーター、ファイナルリダクションギヤを一体化したEV向けのパワートレーンユニットなどを展示する。
また、車両の電動化に関連して、タイヤ部門も持つコンチネンタルでは軽量化によって効率的で環境負荷の低いモビリティを実現するため、車両の骨格部品で一般的に使用されるアルミニウムや溶接鋼などをポリアミドに置き換える軽量化ソリューションも紹介。ポリアミド製リアクレードルを採用することで車両が軽量化されるほか、車両の製造過程におけるエネルギー消費量やエミッションの削減が可能になり、組立工程の簡略化も同時に実現できるという。
「インテリジェントモビリティを実現するための重要な技術」と位置付ける「コネクティビティ」では、コンチネンタルの考える「包括的コネクティビティ」というアプローチを体現する直感的なHMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)として、最新型の「カーブドセンタースタックシステム」を出展。
湾曲させたAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)2個で構成する12.3インチタッチディスプレイ、美しいフラッシュサーフェイス化と使いやすさを兼ね備える「ハプティック(触覚)フィードバック」を採用する操作パネルなどを搭載。また、乗員のジェスチャー認識を可能にするToFカメラは同時にドライバーのコンディションチェックなども行ない、よそ見や眠気などを検知できるようにしている。
「3Dフラッシュライダー」は物体とのとの相対速度も計測可能
事前説明会では最初に、コンチネンタル・オートモーティブのCEOであり、シャシー&セーフティー部門 日本担当も務めるバート・ヴォーフラム氏がプレゼンテーションを実施。
ヴォーフラム氏はコンチネンタルのグローバルでの活動やこれまでの歴史などについて語った後、今回の人とくるまのテクノロジー展出展に関連する解説を行ない、グローバルで年間130万人が交通事故死している現状を「満席の『エアバスA380』が毎日墜落しているのと同じ」と表現し、この対策に迫られていると説明。また、2050年までに都市で暮らす人口が現在の2倍になる予想があると紹介して、この人々にきれいな空気を提供するために自分たちが開発するテクノロジーで貢献したいと述べた。
さらに現在ではコネクテッドされた機器を誰もが日常的に使うようになっており、自分たちの顧客がこのインテリジェントな状況をクルマなどのモビリティにも期待するだろうとコメント。これらのトピックに対応するため、コンチネンタルは今回の人とくるまのテクノロジー展で「自動運転」「電動化」「コネクティビティ」の3点をテーマにしていることを紹介した。
具体的な内容では、ヴォーフラム氏は自身が担当するシャシー&セーフティー部門で取り扱っている「自動運転」について説明。コンチネンタルでは「自動運転」の分野で、現在「クルージングショーファー」「自動駐車」の開発に取り組んでおり、「クルージングショーファー」は高速道路での使用を想定したレベル3の自動運転技術となり、2020年~2021年に市場導入を予定しているという。
さらに将来的な活動として「ロボカー」「ロボタクシー」と呼ばれる無人運転車の提供もロードマップに上げており、すでにパートナーと協力して開発に取り組んでいるという。コンチネンタルではテクノロジーのプラットフォームとして提供する予定とのことで、日本市場での導入も視野に入れているとコメント。日本はドイツに次いで「ロボタクシー」の導入を想定しており、「自動運転」について日本市場も重視していると強調した。
人とくるまのテクノロジー展での展示を予定する「3Dフラッシュライダー」については、映像を使って周辺環境をセンシングする技術となり、単なるスキャナーに止まらないシリコンベースの製品になることが技術的な差別化要因になるという。製品化については2020年~2021年をターゲットとしており、コンパクトなパッケージングとして提供するとコメント。また、このセンサーでは周辺の物体との距離を3Dで捉えることに加え、それぞれとの相対速度も計測可能で、ヴォーフラム氏はこれについて「4D(4次元)で表現可能」と紹介し、コンチネンタルで用意しているライダー、カメラ、サラウンドビューセンサーなどのセンサー類のデータと合わせて計算することで、包括的な環境モデルを実現できると解説している。
「電動化」の解説は、コンチネンタル・オートモーティブのパワートレイン部門 日本担当である田中昌一氏が実施。
田中氏は車両の電動化について、日本では燃費、欧州ではCO2削減という形で効率向上が世界的に求められ、これに加えて排出ガスのクリーン化で規制強化が続けれている現状を紹介。これまでは段階的にテスト結果の数値によってハードルが高められてきたが、この先は新たなチャレンジとして、実際にクルマが使用されるシーンでのクリーン化が課題として課されるようになるとの予想を述べ、「今後は関数的に難しさが高まる」と実情を語った。
この対策として、一番の近道はEV化であると紹介しつつ、2030年にEVが市場の19%を占めるようになるとの将来予測を示し、これは逆に80%以上の車両でエンジンを搭載することを意味すると説明。また、自動車生産台数は今後も右肩上がりの予想となっているが、実際に販売が増える市場はアジアや南米、アフリカなどの新興国であり、日本で市場を席巻しているようなハイブリッドカーではなく、もっと導入コストの低い技術が求められると説明。コンチネンタルではこういったニーズに対応するため、“マイルドハイブリッド”と表現される「48Vシステム」の技術をすでに市場投入している。
人とくるまのテクノロジー展では、将来技術として開発しているモーター、インバーター、ファイナルリダクションギヤを一体化したEV向けのパワートレーンユニットを展示。これについて田中氏は「前輪駆動のクルマのエンジンとトランスミッションを下ろしてこのパワートレーンユニットを搭載し、あとはフロントタイヤのドライブシャフトと接続するだけで前輪駆動のEVができあがるというイメージ」と解説している。
さらに将来的にはEVなどの充電時間をいかに短縮するかが注目されると述べ、バッテリーのイノベーションに加え、コンチネンタルでは場所によって変化する充電環境に幅広く対応し、AC(交流)、DC(直流)などさまざまな電源からの充電が可能になる汎用充電システム「AllCharge」の開発を進めており、これについても人とくるまのテクノロジー展で紹介するとしている。
「コネクティビティ」ではインテリア部門 日本担当の青木英也氏が解説を実施。コンチネンタルでは「自動運転」による「ゼロアクシデント」、「電動化」による「クリーンパワー」といったメガトレンドの実現に向けた柱として「コネクティビティ」を捉えており、路車間通信、車車間通信などで情報を手に入れるほか、クルマを運転するドライバーとの関係性も含めた「包括的コネクティビティ」として取り組んでいると説明。
このドライバーとクルマのやり取りで重要になるHMIとして、最新型の「カーブドセンタースタックシステム」を人とくるまのテクノロジー展で製品展示。青木氏は「見やすい表示、感覚的に扱えるスイッチ類などの操作系といったものが求められ、こうした技術をHMIに盛り込むことで『包括的HMI』になります」と解説している。
また、「コネクティビティ」のベースとなる通信技術では、次世代通信技術の5G(第5世代移動通信システム)をNTTドコモと共同開発しており、5Gの実現によってクラウドサーバーを使った情報共有に加え、クルマ同士が直接通信してそれぞれのADAS(先進運転支援システム)を制御して協調させることも可能になると説明。青木氏は5Gのレスポンスタイム(レイテンシー)が10mm秒ほどで、これはクルマの車内にあるエアバッグが展開を判断するレスポンスタイムと同等であり、安全システムに十分利用できると解説している。
また、車両が外部と接続されることで問題となるセキュリティ面では、コンチネンタルではこれまでに買収でグループ企業とした「エレクトロビット」「アルグス」の技術を利用して、セキュリティをパッケージで提供できることが大きなメリットであると青木氏は説明。コンチネンタルが車内にあるECUなどのハードウェア面、エレクトロビットがや車内ネットワークや外部との通信、アルグスが不正侵入などを検知して対応する全般を担当。「コネクティビティ」によってさまざまな面でクルマの利便性は高まるが、一方で機能の高度化に対応してセキュリティを高めることも求められる時代になっていると語った。