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コンチネンタル、“包括的コネクティビティ”を事業部トップが解説する事業戦略説明会

さらに進化する「無線経由のアップデート」や「衛星コネクティビティ」を紹介

2017年6月16日 開催

神奈川県横浜市のコンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン横浜本社でコネクティビティに関する事業戦略説明会が行なわれた
コンチネンタル・インテリア部門 インフォテインメント&コネクティビティ事業部長 エグゼクティブ・バイス・プレジデント ヨハン・ヒーブル氏

 コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンは6月16日、コネクテッドカーの実現に向けたコンチネンタルの包括的コネクティビティの取り組みなどについて、インフォテインメント&コネクティビティ(IC)事業部のトップであるヨハン・ヒーブル氏がプレゼンテーションを行なう事業戦略説明会を開催した。

 プレゼンテーションでヒーブル氏は、コンチネンタルのコネクティビティに対するビジョンについて紹介するにあたり、毎年130万人が交通事故によって命を落とし、CO2排出量のうち20%が道路交通から出されているといった自動車業界の置かれた現状を紹介。合わせて、世界で1日に9億時間がネット接続に費やされているという新しいトレンドについて紹介し、自動車業界では物流のコストを大きく低減する自動運転、動力の内燃機関から電動化といった動きとともに、コネクティビティにも注目が集まっていると語り、これによってクルマ同士がつながり、クルマとクラウド、クルマとインターネットがつながるようになると述べた。

 ヒーブル氏は自動運転によって事故が減っていき、電動化によってクリーンパワーが実現され、コネクティビティは自動運転と電動化の実現と改善などをサポートすると位置付け、コネクティビティの重要性を強調した。

この先のモビリティ社会のキーとして、自動運転、電動化、コネクティビティが注目されているが、コネクティビティは自動運転と電動化のどちらも大きくサポートする技術領域
コンチネンタル・オートモーティブの前身であるモトローラ時代から、21年に渡ってコネクテッドカーに取り組んでいるという

 また、包括的コネクティビティという言葉の意味合いについてヒーブル氏は、クルマがインフラや各種スマートデバイスだけでなく、スマートフォンなどを持ち歩いている歩行者やほかのクルマともつながりを持つことだと解説。コンチネンタルではコネクテッドカーを実現していくため、ドライバーや乗員とやり取りする「包括的HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)」を生み出す必要があり、さらに車内にある既存のアーキテクチャーもコネクテッドをサポートできる方法を模索していく。これらのハード面に加え、インフラやクラウドと接続するシステムインテグレーションを行なうためソフトウェアが注目を集めており、コネクテッドカーの実現に向け、自動車メーカーやサプライヤーはソフトウェア開発を行なう多くの人材を採用するようになっていると語った。

 具体的な技術面では、コンチネンタル・オートモーティブがモトローラのモビリティ部門までさかのぼる20年以上の歴史を持ち、クルマと携帯電話を活用するビジネスを続けてきたことを紹介。2016年には4G LTEの製品を初めて車両向けに導入し、現在では5Gの通信技術にも取り組みを始めており、これについては弊誌でも、5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展2017 横浜」の会場で、コンチネンタルがNTTドコモと共同して5Gネットワークによるリアルタイム映像伝送のデモンストレーションを実施したことを紹介している。

 ヒーブル氏は、5Gは携帯電話などでの通信が入り口になる技術であると考えられているが、クルマでの導入にあたっては、高温になる車内環境やクルマの長い耐用年数に対応できるよう、システムの堅牢さが求められ、自動車に合う製品にする必要があると述べ、コンチネンタルではこれまでにテレマティクスやコネクティビティに関連する製品を3000万ユニット以上出荷したいう実績を紹介し、2020年までに新しく9つのプログラムで量産化を予定してこれから2026年までにさらに4000万ユニットの製品を出荷する計画であるとアピールした。

コネクテッドカーの実現にはインフラや歩行者などとの通信に加え、「包括的HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)」などで車内環境も対応させていく必要がある
IoTであるコネクテッドカーでは、ほかのIoT製品と同じようにセキュリティの確保が重要になることに加え、高温対策や10年以上使われることも想定したハードウェアの堅牢さも求められる
日産自動車やスバルでも採用実績があり、2020年には「ファーストステップの5G製品」を市場に投入する予定

自動車メーカー7社の9製品に「OTAアップデート」を提供

「OTAアップデート」や英インマルサットとのコラボレーションについて解説するヒーブル氏

 コネクテッドカーの導入によってさまざまなサービスの実現が期待されているが、そのなかでもヒーブル氏が「重要なトピック」として挙げるのは、無線通信でシステムをアップデートする「OTA(オーバー ザ エアー)アップデート」の技術。コンチネンタルでは2005年から車内インフォテイメントの無線ファームウェア更新をスタートさせ、すでに自動車メーカー7社の9製品に技術を提供しているという。この技術のメリットについてヒーブル氏は「路上を走っているクルマに新しいフィーチャーを継続的に提供すということが重要になります」とコメントしている。

 また、通信衛星を使った通信事業を行なっている英インマルサットとのコラボレーションについても解説。コネクテッドカーで常時接続を実現するにあたり、米国などでは携帯電話のカバレッジがシームレスではなく、広い国土を走り続けているうちに携帯電話回線での接続が途切れてしまったり、直接的な契約回線ではないローミングでの接続になるケースもあるという。この問題を解消する1つの手段となるのが、1月のCES 2017で公開したインマルサットとの取り組みになり、静止衛星を活用する接続は通信速度も必要十分であり、メリットとしてはグローバルなカバレッジを実現でき、地球上のほとんどのエリアを1社とのやり取りでカバーし、自動車メーカーも各国の各種規格や通信キャリアに製品を対応させる作業を省略できることが挙げられた。

 このほか、自動運転を実現する重要なステップとなる次世代テレマティクスの「C-V2X」に関して、大本の規格となる「LTE-V2X」が2017年上半期に発行されたあと、コンチネンタルでは2017年末から2018年のタイミングで最初の試験を実施予定であると明らかにした。従来からあるセンターを介して通信する「ネットワーク通信」のほか、クルマや人が歩くそれぞれの場所で直接通信する「ダイレクト通信」があり、ダイレクト通信では5G規格に含まれる通信機能を使ってV2Xの接続を実現するという。また、C-V2Xは低遅延であり、同じ方向に走るクルマ同士でカメラなどのセンシング情報を共有する「センサーシェアリング」に活用することで、交通の安全性をさらに高められると紹介された。

“完全なコネクテッドカー”で求められる技術要素
クルマを販売したあと、ユーザーがサービス工場にクルマを預けることなく機能をアップデートできるOTAアップデートを「重要なトピック」とヒーブル氏が紹介
英インマルサットとのコラボレーションで通信衛星を活用したコネクテッドカー技術も開発中。衛星を使っても通信コストが高くならないようにしたいと述べられた
2021年の実用化を目指している「C-V2X」。クルマ同士や歩行者などと直接接続する「ダイレクト通信」も用意される
C-V2Xは低遅延で低消費電力。クルマ同士を接続して新しい先進安全機能に活用することも期待されている
DSRCの「802.11p」にも製品を用意
シームレスな常時接続を実現するため、カーネギーテクノロジーともコラボレーション
5Gをコネクテッドカーに採り入れていくため、NTTドコモと共同テストを行なっている