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【F1日本グランプリ 2018】予選は安定のハミルトン選手がポール獲得。雨によるドラマティックな展開でベッテル選手が9位に

2台のトロロッソ・ホンダは6位と7位から決勝スタート

2018年10月5日~7日 開催

ポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)

「2018 FIA F1世界選手権シリーズ 第17戦 Honda日本グランプリレース」が10月5日~7日の3日間にわたり三重県鈴鹿市にある鈴鹿サーキットで行なわれている。2日目となる10月6日には練習走行3回目と予選が行なわれ、予選の結果をもって明日に行なわれる予定の決勝レースに向けたグリッドが決定した。

 ポールポジションを獲得したのはルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)、2位はバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)、3位はマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)となり、ハミルトン選手とドライバー選手権争いをしているセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)はアタックしようとしたところで雨が落ちてきてタイムアップならず、9位と予想外のグリッドからスタートすることになってしまった。

予選9位と予想外の下位に沈むことになったセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)

 昨日の練習走行で好調さを維持していたトロロッソ・ホンダの2台はいずれも予選2回目を突破して予選3回目に進み、雨が降ってくる前にタイムを出していたこともあり、運を味方にしてブレンドン・ハートレー選手(28号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が6位、ピエール・ガスリー選手(10号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が7位となった。

予選のトップ3、左から2位のボッタス選手、1位のハミルトン選手、3位のフェルスタッペン選手

3回のフリー走行すべてでトップタイムをマークしたメルセデスのルイス・ハミルトン選手

 12時から1時間行なわれた練習走行3回目では、朝方降っていた雨もあがり、その間にサポートレースも行なわれたことで路面はドライになっていて、各車両ともにドライタイヤを付けてコースに飛び出していった。ただし、この日の鈴鹿市の天気は若干不安定で、路面温度26℃、気温25℃と気温的にはさほど暑くはないものの、湿度は90%を超えており、非常に蒸し暑い天候となっているだけでなく、風速が6.2mというやや強めの状況で行なわれた。

 スタートして10分ぐらいが過ぎると、西コースで降雨が始まり、その後コース全体の観客が合羽を着出すような状況になり、コースはドライからややウェットへと変わり、コースに出ていた車両はピットに戻ってしまった。その後、半分の時間が経過した12時30分ぐらいから、雨が上がりコースが徐々に乾いていき、バルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)がコースインすると、続いてチームメイトのルイス・ハミルトン選手がコースイン。両車ともコースをゆっくり1周して回り、1度ピットに戻って車をチェックした後、再度コースに入りタイムを出していった。それに触発され各車ともコースインしていった。

 そうすると天気の方もそれに呼応するように改善していき、ついには太陽が顔を出してくる状況。これにより各車ともタイムを縮め始めた。コースはドライになったが所々ウェットパッチ(濡れているところ)が残っている状況で、キミ・ライコネン選手(7号車 フェラーリ)がS字のアウト側に飛び出してグラベルの上を走るなどのアクシデントも発生していた。かつ、残り数分の段階でニコ・ヒュルケンブルグ選手(27号車 ルノー)が同じS字のイン側にコースアウトし、タイヤバリアにクラッシュするという事故が発生。幸いにしてヒュルケンブルグ選手には怪我などはなかったが、彼のルノーはリアセクションが大破してしまった。仮にこれでエンジンやギヤボックスなどを交換することになれば、次の予選までの2時間でそれを終えないといけないことと、グリッド降格のペナルティが科せられることになる。なお、FP3はこの事故により赤旗終了となった。

 このセッションでトップに立ったのはメルセデスのルイス・ハミルトン選手、2位はチームメイトのボッタス選手。これでハミルトン選手は3回あったフリー走行で3回ともトップで、今回の仕上がりはかなりよさそうだ。それに次ぐ2位はセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)で、3位も同じフェラーリのライコネン選手。4位にはマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)、5位はメルセデスのボッタス選手、6位がダニエル・リカルド選手(3号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)となっており、やはりフェラーリとレッドブルによる表彰台争いが焦点になりそうだ。

 期待のトロロッソ・ホンダは好調のブレンドン・ハートレー選手(28号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が13位、それに対してエースのピエール・ガスリー選手(10号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)は20位となった。ハートレー選手は引き続き好調さを維持しているものの、ガスリー選手はFP2を燃料系のトラブルで15分しか走れなかったこともあって、セッティングが進んでいないようで、セッション中にも運転しづらさを訴えていた。このため、2時間後の予選に向けて不安が残る仕上がりとなってしまった。

練習走行3回目(FP3)順位表

順位カーナンバードライバー車両タイムトップとの差周回数
144ルイス・ハミルトンメルセデス1分29秒599-13
25セバスチャン・ベッテルフェラーリ1分29秒715+0秒11614
37キミ・ライコネンフェラーリ1分30秒054+0秒45513
433マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・タグホイヤー1分30秒304+0秒70513
577バルテリ・ボッタスメルセデス1分30秒422+0秒82313
63ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング・タグホイヤー1分30秒474+0秒87510
731エステバン・オコンフォースインディア・メルセデス1分31秒088+1秒48912
811セルジオ・ペレスフォースインディア・メルセデス1分31秒483+1秒88412
955カルロス・サインツルノー1分31秒513+1秒91414
1020ケビン・マグヌッセンハース・フェラーリ1分31秒521+1秒92213
118ロマン・グロージャンハース・フェラーリ1分31秒636+2秒03714
1216シャルル・ルクレールザウバー・フェラーリ1分31秒760+2秒16114
1328ブレンドン・ハートレースクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分32秒030+2秒43113
1418ランス・ストロールウィリアムズ・メルセデス1分32秒201+2秒60214
1527ニコ・ヒュルケンブルグルノー1分32秒224+2秒62512
169マーカス・エリクソンザウバー・フェラーリ1分32秒442+2秒84310
1714フェルナンド・アロンソマクラーレン・ルノー1分32秒608+3秒00914
1835セルゲイ・シロトキンウィリアムズ・メルセデス1分32秒631+3秒03214
192ストフェル・バンドーンマクラーレン・ルノー1分33秒034+3秒43513
2010ピエール・ガスリースクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分33秒105+3秒50610

ザウバーのエリクソン選手のクラッシュなどの波乱の中、2台のマクラーレン、ルノーとウィリアムズが1台ずつQ1落ち

 15時から行なわれた予選は、F1の通常の予選方式である予選1回目(Q1、5台脱落)、予選2回目(Q2、5台脱落)、上位10台による予選3回目(Q3)というノックアウト方式で行なわれた、Q3に進んだ車両は明日のレースでQ2で出したタイヤを使う必要があり、Q2までで脱落した車両は明日のレースでタイヤ選択の自由があることにになる。明日の決勝レースは今回の週末ではなかった晴れの予報で気温や路面温度なども高くなることが予想されており、タイヤ選択の自由を得るのかどうか、また、Q3に進む車両はスーパーソフト、ソフト、ミディアムという今回のタイヤのうちどのタイヤをQ2で履いてタイムを出すのかなどが焦点となる。

 15時から始まったQ1では、雨は上がったものの、所々濡れているところが残る路面の中で行なわれることになった。なお、天気予報では鈴鹿市の周囲や海では雨が降るものの、鈴鹿サーキット周辺は雨が降らないまま1時間が経過するとなっていたが、どのようになるのかは神のみぞ知るという状況。このため各チームともに雨雲レーダーとにらめっこという状況の中で予選は始まっていった。開始時の路面温度は29℃、気温26℃、湿度は83%と午前中よりはマシになったものの、やはり蒸し暑く感じる気候の中でのセッションとなった。FP3でリアセクションを壊したニコ・ヒュルケンブルグ選手だが、リアセクションの修復が完了して無事予選に参加することができた。

 そうした状況を反映してか、Q1はやや荒れた展開になった。残り10分ぐらいでフェラーリのベッテル選手がスピン。ただし、コース上に停止しただけで、そのままコースに戻ることができた。ところが、その直後ダンロップコーナーで、マーカス・エリクソン選手(9号車 ザウバー・フェラーリ)が、前を走る車をよけようとしてアウト側にいってしまい、そのままグラベルに飛び出して外側の壁にクラッシュしてしまった。これで赤旗がでてセッションは一時中断となった。

Q1でクラッシュして車を降りるマーカス・エリクソン選手(9号車 ザウバー・フェラーリ)

 残り9分57秒からセッションは再開され、いくつかのコーナーでは小雨が降っている状況の中でのタイムアタックとなった。この時点までで15位以内に入っていなかった、ストフェル・ヴァンドーン選手(2号車 マクラーレン・ルノー)、セルジオ・ペレス選手(11号車 フォースインディア・メルセデス)や2台のルノー勢などがコースへと出て行った。それらの車がタイムを出したが、Q1のカットラインの下になってしまったフェルナンド・アロンソ選手(14号車 マクラーレン・ルノー)も含めて他のクルマはピットにとどまったまま。今後もさほど天候が崩れないと見ているのだろう。

 そうしたアロンソ選手や、14位、15位とカットラインギリギリにいた2台のトロロッソ・ホンダなどがコースに出たのは残り3分。それにより、10位以下の車両はすべてコースに出てきて、タイムアタックが開始された。すでに止まっていたエリクソン選手以外にQ1落ちしたのは、FP3でクラッシュして修復したばかりのヒュルケンブルグ選手、セルゲイ・シロトキン選手(35号車 ウィリアムズ・メルセデス)、アロンソ選手、ヴァンドーン選手のマクラーレン2台となった。特にマクラーレン2台は、クラッシュしたエリクソン選手を除くと2台そろって最下位となっている。

予選18位となったフェルナンド・アロンソ選手(14号車 マクラーレン・ルノー)

レッドブルのリカルド選手がパワーユニットトラブルでQ2脱落の波乱の中、2台のトロロッソ・ホンダがそろってQ3へ

 安定しない天候は小雨となっていたQ1の後、Q2を前にして日が出てくるという、もう誰にも予想できないようなめまぐるしい変化を見せていた。予定より若干遅れて始まったQ2は、5台が脱落することになる。順当に行けばトップ3チーム(メルセデス、フェラーリ、レッドブル)の3台は当確で、残り4台の座を、いわゆるBリーグと呼ばれる中断勢が争う展開となる。日本のファンとしてはホンダパワーのトロロッソがQ3にいけるかが注目ポイントとなる。

 このQ2が始まると、2台のメルセデス勢は明日のレースをやや堅い方のソフトタイヤでスタートすることを狙って、2台ともソフトタイヤを履いてQ2に登場した。これに対して、フェラーリとレッドブルはスーパーソフトタイヤを選んでおり、これが成功すればメルセデス勢はソフトタイヤで明日スタートができ、スタートでレースをリードすることができれば、ピットストップを先に延ばすことができるので、大きなアドバンテージになりそうだ。だが、ハミルトン選手は1分28秒017、ボッタス選手は1分27秒987をマークして1-2となった。これにより、Q2の突破はほぼ確実になり、メルセデスのアドバンテージはコース上だけの速さだけでなく、タイヤチョイスという点でも有利になりそうだ。

 セッションの中盤には、レッドブルのリカルド選手がピットの入り口あたりでパワーを失って停止した。下り坂になっている鈴鹿サーキットの特性を利用してなんとかピットまで戻れたが、この時点でタイムを出されておらず、トラブルが直なければ、Q2で脱落ということになってしまう。

トラブルで予選15位に沈んだダニエル・リカルド選手(3号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)

 そしてなんと、残り3分の段階で今度はもう1度メインストレートで強い雨が降ってきた。シャルル・ルクーレル選手(16号車 ザウバー・フェラーリ)がデグナーの出口でスピンするなどもはやタイムを出すことができない状況となってしまった。これで脱落はルクレール選手、ケビン・マグヌッセン選手(20号車 ハース・フェラーリ)、カルロス・サインツ・Jr選手(55号車 ルノー)、そしてリカルド選手となった。この結果によりトロロッソ・ホンダはピエール・ガスリー選手(10号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が9位、ブレンドン・ハートレー選手(28号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が10位となった。

予選6位と大健闘したブレンドン・ハートレー選手(28号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)
予選7位のピエール・ガスリー選手(10号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)

ベッテル選手が降雨でアタックできず不運の9位の中、ハミルトン選手が圧倒的なタイムでポール。2台のトロロッソ・ホンダが6位と7位に

ポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)

 Q3のスタート時には、多くの人が目を疑う光景がピットレーンの終わりに広がっていた。他のチームがみなスーパーソフトのドライタイヤを装着していたのに対して、フェラーリの2台はインターミディエイトのウェットタイヤを装着していたのだ。ドライバーのベッテル選手が「コースは全然ドライだけど」というとチーム側は「スプーンではウェットのはずだ」と答えるものの、結局1周して両車ともに入ってきてスーパーソフトに交換して出ていくという悲しい状況に。フェラーリは結局時間を無駄にしただけに終わってしまった。しかも、ベッテル選手はスーパーソフトタイヤに変えてすぐのラップでセクター2でミスをしてタイムロス、これにより9位に相当するタイムしか出せておらず、残り1回のタイムアタックにかけることになってしまった。その間にハミルトン選手はこの週末で1番早い1分27秒760というタイムをマークし、2位はボッタス選手の1分28秒059をマークした。それに続くのはレッドブルのフェルスタッペン選手。

 なんと、その後雨が強くなってしまい、それ以降誰もタイムを更新することができなくなってしまった。これにより、大きな得をしたのは、いち早くタイムを出していたトロロッソ勢。ハートレー選手が6位、ガスリー選手が7位となり、明日のレースはそろっていい順位からスタートすることになった。ホンダとしては、ロシアで投入した新しいスペック3のエンジンの効果がでたということもでき、歓迎すべき結果だろう。

 最終的な順位はポールがハミルトン選手、2位がボッタス選手、3位がフェルスタッペン選手、4位がライコネン選手、5位がロマン・グロージャン選手(8号車 ハース・フェラーリ)、6位がハートレー選手、7位ガスリー選手、8位エステバン・オコン選手(31号車 フォースインディア・メルセデス)、9位ベッテル選手、10位セルジオ・ペレス選手(11号車 フォースインディア・メルセデス)となった。

予選2位となったバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)
予選3位となったマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)
予選4位になったキミ・ライコネン選手(7号車 フェラーリ)
予選5位となったロマン・グロージャン選手(8号車 ハース・フェラーリ)
2位のバルテリ・ボッタス選手
ポールを獲得したルイス・ハミルトン選手
3位のマックス・フェルスタッペン選手

予選の結果表

順位カーナンバードライバー車両タイムトップとの差周回数LAPS
144ルイス・ハミルトンメルセデス1:28.7021:28.0171:27.76011
277バルテリ・ボッタスメルセデス1:29.2971:27.9871:28.05912
333マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・タグホイヤー1:29.4801:28.8491:29.05710
47キミ・ライコネンフェラーリ1:29.6311:28.5951:29.52113
58ロマン・グロージャンハース・フェラーリ1:29.7241:29.6781:29.76117
628ブレンドン・ハートレースクーデリア・トロロッソ・ホンダ1:30.2481:29.8481:30.02315
710ピエール・ガスリースクーデリア・トロロッソ・ホンダ1:30.1371:29.8101:30.09315
831エステバン・オコンフォースインディア・メルセデス1:29.8991:29.5381:30.12613
95セバスチャン・ベッテルフェラーリ1:29.0491:28.2791:32.19213
1011セルジオ・ペレスフォースインディア・メルセデス1:30.2471:29.5671:37.22916
1116シャルル・ルクレールザウバー・フェラーリ1:29.7061:29.86412
1220ケビン・マグヌッセンハース・フェラーリ1:30.2191:30.22613
1355カルロス・サインツルノー1:30.2361:30.49012
1418ランス・ストロールウィリアムズ・メルセデス1:30.3171:30.71410
153ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング・タグホイヤー1:29.8064
1627ニコ・ヒュルケンブルグルノー1:30.3617
1735セルゲイ・シロトキンウィリアムズ・メルセデス1:30.3728
1814フェルナンド・アロンソマクラーレン・ルノー1:30.5736
192ストフェル・バンドーンマクラーレン・ルノー1:31.04110
209マーカス・エリクソンザウバー・フェラーリ1:31.2134