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スバル、ボーイング 787初号機を展示する「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」を事前内覧
「空を飛ぶクルマを作りたい」と、戸塚正一郎 航空宇宙カンパニー プレジデント
2018年10月9日 16:00
- 2018年10月12日 オープン
スバルは10月7日、セントレア(中部国際空港)に10月12日に開業するボーイング 787初号機展示施設「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」を報道関係者に公開した。これは、10月7日にスバルのユーザーコミュニティ「#スバコミ」向けの事前内覧を行なった後に実施されたもの。#スバコミ向けの内覧会には#スバコミメンバーから100人の枠に1000人の応募があったとのことだ。
スバルはボーイング 787型機の中央翼部分をセントレアの至近となる半田工場で製造しており、ボーイング 787や777の主要サプライヤーとなる。世界のベストセラーとなっているボーイング 787の部品の約35%は日本製で、スバル、三菱重工業、川崎重工業などが製造。スバル、三菱重工業、川崎重工業が製造する大型部品はセントレアからボーイングの組立工場がある米国ワシントン州シアトルのエバレットに空輸で出荷されている。その縁もあり、ボーイングは787の初号機(ZA001)をセントレアに寄贈(関連記事:ボーイングからの寄贈機、ボーイング 787飛行試験1号機「ZA001」がセントレアに到着)。その展示施設としてフライト・オブ・ドリームズが作られることになり、スバルはその協賛企業となった。
ボーイング 787型機の愛称はドリームライナー、セントレアからシアトルまで空輸する輸送機はボーイング 747LCF ドリームリフターで、セントレア内にはドリームリフターで運ぶ製造部品の一時保管センターであるドリームリフター・オペレーションズ・センターもある。2016年には機能拡充のためにドリームリフター・オペレーションズ・センター 2も追加整備された。ボーイング 787は現在月産12機のペースで作られており、売れ行きが好調なことから2019年からは月産14機に引き上げられる。単純計算で、約2日に1回スバルの中央翼がセントレアから出荷されていくことになる。
フライト・オブ・ドリームズでは、ボーイング 787初号機を囲むように2階と3階に「SEATTLE TERRACE(シアトル・テラス)」を展開。このシアトル・テラスには自由に出入りでき、シアトル系のレストランなどが立ち並ぶ。もちろんシアトルコーヒーの代表格であるスターバックスも出店し、ボーイング 787初号機を眺めながら食事などを楽しめるようになっている。
メインとなるのは体験エリア「FLIGHT PARK(フライト・パーク)」。フライト・パークは有料エリアで、個人向けチケットは、大人(中学生以上)1200円、子供(3歳~小学6年生)800円。営業時間は10時~17時(最終入場は16時30分)。ボーイング 787初号機を仰ぎ見ることができ、チームラボプロデュースの9つの体感型コンテンツを楽しめる。このコンテンツは各社がいくつかに協賛を行なう形で用意されており、スバルは2つに協賛している。
1つは、コンテンツマップ02番の「Boeing Factory(ボーイングファクトリー)」。このボーイングファクトリーでは、シアトルにあるボーイングのエバレット工場をプロジェクションマッピングで体感できるようになっており、スバル製造の中央翼に主翼を組み込む様子を見ることができる。もう1つは07番の「787 Dreamliner Explorer」で、アプリを使って実際のボーイング 787初号機のまわりを巡り、部品を集めるというもの。63のアイテムを集めたら、ちょっとしたプレゼントをもらうことができる。もちろん中央翼も集めることができる。
実際の機体を見ることができる、ホンモノの力強さ
そのほか各種テクノロジなどを用いた体感コンテンツもあり、詳細は関連記事(セントレア、ボーイング 787初号機を展示する複合施設「FLIGHT OF DREAMS」公開。体験エリア「FLIGHT PARK」を紹介)を確認してほしい。
いずれも楽しいものだが、フライト・パークに立ってボーイング 787を仰ぎ見ると、その大きさに圧倒される。一般的にボーイング 787は中型旅客機に分類されるのだが、とにかく大きい。サイズ的には全長56.7mm×全幅60.1m×全高16.9mという数字だが、巨大製造物としての生命感がある。
それを無料で見られる(真下から見るには有料エリアに入る必要があるが)のは、とても有益なことだし、有益とか無益以前にとても楽しいことだ。日本はものづくり大国でありながら、このように航空機を楽しみながら見られる施設は皆無に近い。そういった意味で貴重な施設だし、東京や大阪からは新幹線と名鉄で容易にアクセスでき、北海道や沖縄からは航空機でセントレアに行けばよいとうアクセスの容易さも魅力といえるだろう。
スバルの航空機産業を率いる戸塚正一郎 航空宇宙カンパニー プレジデントは、この初号機にはとても苦労したといい、中央翼についても「外見からは分からないが何度も設計変更をした」とのこと。ただ、ボーイング 787では3次元設計を用いており、中央翼につながるいろいろな部品データをもらい、そこに接続できるようなカタチで設計、それをボーイングの工場で調整なしに組み立てているのが新しいという。
設計で難しかったのは、「ボーイング 787がカーボン素材(東レ製、つまりこれも日本製)を多用しており、そことの接合を考慮すること」で、いろいろ新しいことを行なっているとのことだ。
スバルの航空宇宙カンパニーでは、「無人機研究システム」や「無人偵察機システム」「新多用途ヘリコプター(UH-X)」の開発に取り組んでおり、いずれはそれらの技術を活かして「空を飛ぶクルマを作りたい」(戸塚氏)という。
スバルの協賛意図について広報部 部長 岡田貴浩氏に聞いたところ「SUBARUはその環境方針で『大地と空と自然』がSUBARUのフィールドとしていますが、今回FLIGHT OF DREAMSが子供達に『空』への興味を高める魅力的なコンテンツを持っていること。そして中部地区の航空機産業の一員として日本の航空宇宙産業の発展に貢献したいこと。その2つが協賛の目的です」とのこと。
フライト・オブ・ドリームズは、セントレアのターミナルの南端エリアに位置しているが、2019年に第2ターミナルができると第1ターミナルと第2ターミナルの中央エリアに位置することになる。旅客機を屋内に丸ごと展示し、しかも飲食エリアもしっかり備える世界でも珍しい施設のため、多くの人が訪れる施設になるだろう。