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【SUPER GT第7戦 オートポリス】GTA 坂東正明代表、第6戦SUGOで起きたドクターカーのニアミスは「ドクターの正義感によるもの」

2018年10月21日 開催

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT第7戦オートポリスの決勝レースが行なわれた10月21日、SUPER GTシリーズを運営するGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏による定例会見が行なわれた。

SUGOのドクターカーとレースマシンのニアミスは「ドクターの正義感によるもの」

 最初に坂東氏があいさつを行ない、「オートポリスで晴天の中、久しぶりにSUPER GTが行なわれるということで、非常によかったなと思っている。この時期にしては珍しいような天候で、お客さまも対前年比130%以上の来場となっており、当日券を手に入れるためゲートで待ってもらっているような状況。この導線の引き方やもろもろでトラブルが起きているので、レースが始まるまでにはお客さまに見てもらえる環境をしっかり整えたい。ここで起きているトラブルについては、サーキット側にもこれだけの集客のあるレースという認識を持ってもらって、解消するため来年度に向けた反省としたい。より多くのお客さまに楽しく見てもらえる体制を1つひとつ作っていきたい」。

「残り2戦の戦いとなって、今回の予選を見てもらっているところでは、GT500クラスはホンダさんの勢いが止まらないという状況になっている。GT300クラスの方は、JAF-GTがこのコースを得意としているところがポイントで、タイヤについてもかなり差が出ているように感じている。戦いは厳しさを増しており、より厳しくなるほどお客さまにとっては面白いレースになるという見方もある。あと残りの2戦で、今日はこの天候のいいレースを、被災された熊本、大分という地域で開催することで、この地域の人たちを元気にする意味でも成功させたい」と語った。

 板東氏のあいさつに続き、質疑応答が行なわれた。

――最初にSUGOで行なわれた第6戦について。レース終盤に出たドクターカーがコース上でマシンと交錯するような場面があったが、なぜこのようなことが起きたのか。また、今後の対策などについてGTAの立場から教えてほしい。

坂東氏:最初からこのような質問を受けることにはなりたくないなぁということがまず1つ。ただ、実際に起きてしまったことなので、われわれとしては、技術やレースコントロールの安全面などについて、オーガナイザーの体制にプラスアルファのアドバイザーとしての立場になる。これをFRO(ファースト・レスキュー・オペレーション)というもので、レース運営の補助としてやっている。GTAは公認団体ということでやっている以上、権利も主張するが、当然ながら責任も負わなければならないというところで、オーガナイザーとクラブ、GTAの共催でイベントを進めている。

 今回の件は、われわれの用意するドクターカーとオーガナイザー側の用意するドクターカーを配置して、コースのあらゆる場所で起きる事故処理ができるよう検討している。それぞれどこに配置しているかは把握しているが、実際の車両に「ドクターカー」と書いてあるかは、非常に分かりにくかった。(SUGOでは)14番ポストと15番ポストの間にドクターカーがいて、64号車が14番ポストの手前側のところでクラッシュした。ドクターカーの位置からはコースを振り返るような場所で、ドクターが見て、クラッシュした車両からドライバーが出てこないという状況だった。

 コントロールタワーでは無線でドクターに待機と連絡して、ほかの部分でのクラッシュもあったので、ほかのドクターカーに安否確認を見てもらうように指示した。ただ、(14番ポストと15番ポストの間にいるドクターが)なかなかドライバーが出てこないということで、ドクターが「行かなければいけない」と正義感で判断した。基本的なところで、ドクターカーの出動はイエローフラッグでは出ず、レッドフラッグになったら出るということがFIAを含めて1つのルールになっている。われわれのFROは、それでは間に合わないかもしれないということから、予備的に行なっているものになる。今回の件はオーガナイザー側だが、イエロー区間ながら正義感から状況を判断して出てしまった。

 そこからだとコースを1周しなければならず、ほかの場所でFROが作業しているといったこともあって、状況から二次災害が起きる可能性も出てしまったのも事実。ドクターをとがめるようなことではないが、コントロールタワーからの無線といった組織としての指示に従うようにしてもらいたい。ただ、自分(坂東氏自身)としては、ドクターの持つドライバーを助けたいという強い意思はいいことだと思う。

 今回の問題は、独自の判断で動いてしまったこと。われわれはインターナショナルでレースを行なっており、「あの白いクルマはいったい何だ!?」と世界に発信されてしまったことも事実で、世界に向けて東南アジアにあるSUPER GTというレースのクオリティや認知度をアピールしてきた部分について残念な結果になってしまった。

 コントロールタワーからの統制などの部分で、無線の環境が非常にわるかったり、オフィシャル無線が上手く届かないといった問題もある。昨年もコントロールタワーから指示が出ていない段階でオフィシャルがマシンを片付けに入っているといったこともあって、無線や運営の指示系統などもより強化していかなければいけないというのが今後の反省点で、手伝っていただいているオーガナイザーのオフィシャルからは非常に意欲的なところを感じるので、体制作りを醸成していきたい。非常に残念なことだったが、何も二次災害が起きなくてよかったというのが本音の部分。

CLASS 1規程の2.0リッターターボエンジン搭載車が11月~12月に走行テスト実施

――DTMで、ワークス参戦ではないものの、アストンマーティンが参戦することが発表された。車両は開発中とのことだが、当然ながら車両は「CLASS 1規程」で新開発していると思われる。GTAとしてこの参戦についてコメントしてほしい。

坂東氏:ITRの担当者から深夜に電話があった。見覚えのない番号なので出なかったら、着信が20数回あって、最後にはメールが来た。そこでこちらから電話すると、ITR側は非常に興奮して喜んでいた。まだアストンマーティンの参戦は、台数なども正式には聞いていないが、2020年ではなく、2019年にBMW、アウディとレースをすると。ベンツに変わって新しいところが出てくることは、わわわれとのコラボレーションの道が近付く。

 2020年に向けたCLASS 1規程の車両作りでは、2.0リッターターボのエンジンではベンチテストも終わって、11月~12月には車両に搭載した走行テストもBMWとアウディで行なわれると聞いている。そこにアストンマーティンが出てくることは非常に喜ばしいこと。SUPER GTとのコラボレーションでは、サスペンションのハブやアップライトの部分として、向こうではホイールもワンメイクだが、こちらとしてはホイールのワンメイクは行なわない方針。そこで、ホイールナットの深さやハブ形状が異なるので、日本のホイールメーカーと、どうしたらハブを加工せずにいけるか、ナットの作り直しだけでいけるかなどを検討している。CLASS 1規程でも、日本で競争しているアイテムでは、日本のファンが何を面白いと思って見てくれているのか考えての規則作りが必要だと思っている。

 空力については合わせていく。現在は速さに対しての要素で剛性よりも空力が一番大きいと思っている。CLASS 1規程で空力をしっかり合わせておかないと(ITRから)クレームが来てしまうところになる。そこで気になるのがホンダ(のNSX)で、ミッドシップでも2019年~2020年(のマシン作り)で空力を合わせる、もしくはBOP(性能調整)をかけるといったことできちんと状況を作り上げたい。トヨタ(レクサス)、日産は当然ながら、DTMにも意見を聞きながらホンダのマシンに対するBOPをクリアにしていきたい。

 アストンマーティン(の参戦)は非常にいいことで、CLASS 1規程の知的財産権や開発費のGTAとITRの按分などをクリアにしていけば、諸外国の他メーカーなども容易にSUPER GTのGT500クラスに参戦できるようになり、逆にこちらでも、ワークスだけでなくプライベートでDTMに出られるようになるかもしれない。いろいろなことが考えられるのではないか。

――2019年5月のゴールデンウィークが10連休になることはほぼ確定したが、SUPER GTで申請されている開催カレンダーでは第2戦の富士大会が開催されることになっている。交通集中や宿泊などについてどのような対策を考えているか。

坂東氏:5月の富士開催はSUPER GTで一番多くのお客さまを集めているイベント。これが10日の連休になっても大きく変わることはないと思うが、より欲張って、身動きができないというほどのお客さまを集めてみたい。呼吸するのも息苦しいというぐらいのお客さまに来てもらって、そして満足して帰ってもらう。当然ながら、小山町や御殿場市などと協力して、周辺環境を整備して10連休中を2日間をきちんと過ごしていける環境を作りたい。この間も裾野市の方に新しいホテルができていて、宿泊の方もより考えていかなければいけないと思っている。