ニュース

【JAF鈴鹿グランプリ 2018】SF最終戦、石浦選手・キャシディ選手・山本選手が記者会見。自力優勝可能なチャンピオン候補

新型「SF19」でHaloを正式採用

2018年10月26日~28日 開催

最終戦を前にして自力王者の可能性を残している3人のドライバー。左から石浦宏明選手、ニック・キャシディ選手、山本尚貴選手

「2018年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦 第17回JAF鈴鹿グランプリ」が10月26日~10月28日の3日間、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット 国際レーシングコースで開催される。開催初日の10月26日はフリー走行が行なわれたほか、スーパーフォーミュラのプロモーターであるJRP(日本レースプロモーション)による記者会見が行なわれた。

 この中で日本レースプロモーション 取締役 上野禎久氏からこれまでのSF19の国内テストで試されてきたHalo(ヘイロー)を2019年に導入される新型車両となるSF19で正式採用されることが決定したと明らかにされた。

 2018年からF1やF2などの欧州のフォーミュラレースで導入されたHaloだが、ベルギーGPでフェルナンド・アロンソ選手のドライブするマクラーレンがシャルル・ルクーレル選手のザウバーの上に乗り上げた事故ではHaloがあったことによりルクレール選手が大きな怪我を免れたこともあり、効果に関してはモータースポーツ界全体で理解が進んでおり、実際に国内のサーキットでテストしてもらった結果視界などにも問題がないと判断されたため、今回の導入決定に決まったとのことだ。

 また、記者会見にはこのスーパーフォーミュラの最終戦では、最終戦で自力チャンピオンの可能性を残している、ポイントリーダーのニック・キャシディ選手、ランキング2位の石浦宏明選手、ランキング3位の山本尚貴選手の3人が呼ばれて、最終戦を前にした心境などが語られた。

SF19でHaloを標準採用すると決定、今週末の佐藤選手、中嶋選手のデモ走行でも装着

株式会社日本レースプロモーション 取締役 上野禎久氏

 日本レースプロモーション 取締役 上野禎久氏は「かねてよりテストしてきたSF19のHaloを正式に採用することを決定した」と述べ、来シーズンから新型車両として導入されるスーパーフォーミュラの新型車両となるSF19(ダラーラ社製)の導入を正式に決定したと明らかにした。

 SF19のテストが開始された時点ではHaloの導入は正式には決まっておらず、暫定的に搭載してドライバーの視野などに問題がないかを確認してから導入するとJRPでは説明してきたが、8月1日に行なわれた富士スピードウェイ、8月31日に行なわれたツインリンクもてぎ、9月20日~9月21日のスポーツランドSUGOという3つのサーキットで行なわれた開発テストでドライバーの視認性、さらには脱出テストなども行なった結果ドライバーからのフィードバックは良好で、導入することが決定されたと上野氏。上野氏によればもちろんHaloの導入でコストはあがることになるが、チームもそれは必要だという声がほとんどで反対意見は特になかったとのことだ。

 Haloは2018年からF1やその直下のカテゴリーとなるF2でも導入されている。特に2018年のベルギーGPのスタート時に発生した、フェルナンド・アロンソ選手のマクラーレンが、シャルル・ルクレール選手のザウバーに乗り上げた事故では、Haloがあったからルクレール選手が大けがをしないで済んだと考えられており、Haloの安全面での有用性に関して疑いの声は既にないという状況だ。

 上野氏によれば「ヨーロッパではオッケーかもしれないが、日本のサーキットでも視認性に問題がないかは慎重に確認すべきだと考えたので、テストでそれを確認してからと考えてきた。今回10名のドライバーに確認して全員に問題がないと言ってもらえた」とのことで、ドライバーからは導入が歓迎されているとのことだった。

 なお、上野氏によれば明日(10月26日)の17時から36番ピットでHalo付きのSF19を利用して脱出テストを行なうほか、日曜日には2017年のインディ500王者の佐藤琢磨選手と2018年のル・マン24時間レース勝者の中嶋一貴選手によるSF19のデモ走行が行なわれる予定になっているが、そこでもHalo付きのSF19が利用して行なわれるとのことだ。

王者争いの3人以外も含んで熾烈な予選、決勝レースになると予想と山本選手

左から石浦宏明選手、ニック・キャシディ選手、山本尚貴選手

 JRPの記者会見では、今回の最終戦で決着がつくチャンピオン争いの中で、このレースで優勝したりすることで、他選手の結果にかかわらず自力でチャンピオンを決定できる3人のドライバー、ポイントリーダーのニック・キャシディ選手、ランキング2位の石浦宏明選手、ランキング3位の山本尚貴選手が招待され、現在の心境を語った。

――このレースに向けての心境をお一人ずつ。

ニック・キャシディ選手

キャシディ選手:今シーズンはパーフェクトなシーズンだ。自分が成し遂げたことには満足している。今週もこれまでと同じアプローチでミスしないようにいきたい。一番悔しかったのはオートポリスだけど、それは過ぎたことで、今週末しっかりまとめていきたい。

石浦選手:今年は開幕3戦を終えた段階でポイントがとれておらず、第3戦の菅生も0点だったので、チャンスないのかかなと思っていた。しかし、富士のレースからいい流れになってきて、最終戦でチャンピオンを争ってこの会見場にこれたし、チャンスが残せていて良かった。毎年、最終戦チャンピオンシップの権利を残してくることを目標としている。去年はポイントリーダーでレースに臨むこともあり、緊張していた部分もあったが、ポイントで負けているので余裕がある。最終戦は楽しんでやっていきたい。

山本選手:開幕戦、菅生と2勝できて幸先のよいスタートを切れたが、シーズン中盤は失速して取りこぼしもあった。そうして最終戦を迎えるにあたり、チャンピオンのチャンスがあることはラッキーだと思っている部分がある。中盤戦では取りこぼしがあったのにここにいることができるのは、チャンスをもらったのだと思ってプッシュする。こういうチャンスは毎年ある訳ではないので、何が何でもチャンピオンを取りたい。こうしてSF、そしてSUPER GTのどちらの選手権でも最終戦を前にしてチャンピオンの権利があることに、チームやホンダに感謝したい。そういう環境で走れることの喜びと感謝の気持ちを持ちつつ、最終戦に臨みたい。

――チャンピオン争いに向けてプレッシャーなどはあるか?

キャシディ選手:これまでしたチャンピオン争いは4回あるが、みな最終戦までもつれていた。例えば、F3では山下選手と同ポイントで最終戦に臨んだし(筆者注:最終的にキャシディ選手がチャンピオンになった)、昨年のSUPER GTもそうだったし、そうした経験が今に繋がっている。このシリーズではまだ自分は若いと思っているし、ハードにトライするだけ。そうして得られた経験を次につなげていきたい。(今回の結果いかんに関わらず)また別のチャンスがあるといいと思っているので。

石浦宏明選手

石浦選手:初優勝まで時間がかかってその年にチャンピオンを取った。初めての時は落ち着かないという経験もしたけど、その後後は毎年いいレベルで走れていて、自分の中ではチームとの関係も良く、信頼もしてもらえている。今は落ち着いて自分の力を出せる環境であるので、自分の力を出しさえすればというメンタルにある。その意味ではこれまでの経験が役立っている。

――山本選手はキャシディ選手が明日ポールを取ると自力王者が消滅するが、そのあたりも計算しているのか?

山本選手:あえて誰が何位になってということは気にしないようにしてここまで来たので、それは今知った(笑)。今、自分のメンタルが崩れ始めている……参考にさせてもらいます(笑)、ニックにはポールとられないように(笑)。自分でも鈴鹿は得意なコースだと思っているが、実はギリギリ勝ったレースばかり。今年の開幕戦でも、意外とギリギリで勝ちをつかんでいる。その意味でプレッシャーがないわけではないので、経験は自分の味方になると思っている。どのレースとも同じメンタリティではない。そうした中で、立場だったり経験だったりで変化していく。常にそうしたことを考えながらレースをしないといけない。この中で何ができるのか、待ち望んでいるのか楽しみな部分ではある。

――今日のフリー走行での状況を教えてほしい

キャシディ選手:今日はそれなりだった、予想していたよりはわるくはなかったが。でも方向性は見えており、明日へ向けて予選は激しい争いになると思っている。気にしているのは石浦さん、彼とは持っている道具が同じだからリファレンスになると考えている。今の時点では僕らの車がトップパフォーマンスかわからないけど、その中でベストを尽くすのが仕事だ。戦略は大丈夫だし、あとは完璧なスタートをして全力を出すだけ。

石浦選手:(同じく鈴鹿サーキットで行なわれた)開幕戦では予選6位で、あまり速く走れなかったので、直近のレースとの違いを見てデータを見直した。今日のフリー走行では思った通りの結果を得られた。実は最後の計測ラップでスピンしてしまったので、タイムとしては残っていないけど、スピンするまでは思った通り走れていた。実は走り出しがどうかなという部分を心配していた。鈴鹿は特別なコースで久々スーパーフォーミュラで走ってどうかと漠然として不安があったのだが、いいフィーリングがつかめて安心した。ここまでは順調だが、チャンピオンシップを争っているドライバー以外にもここで勝ちたいというドライバーは沢山いて熾烈な争いになると思うが、自分たちが想定してきたことを組み立てていって結果をつかみたい。これまで優勝したレースでもそうしてきたので。

山本尚貴選手

山本選手:順調にいい仕事ができ、いいパフォーマンスを確認することができた。今日の夜に雨が降る予報なので、明日のコンディションは変わる可能性があるのでそれに合わせ込んでいきたい。ほかの2人のことは、直接争っている相手なので意識しないと言うことはない。今日もセッションが終わった後で、どこにいるのかを確認した。石浦選手も言ったように、僕らだけがレースしている訳ではなく、この1戦で人生が変わる人だっているだろうし、この3人が簡単に勝てる訳ではない。明日の予選は熾烈な争いになると思う。

スーパーフォーミュラのドライバー選手権のトロフィー、日曜日にこれを手にしているのは誰か?