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三菱ふそう、CO2削減を実現しながら川崎工場を快適にした発電や空調などの新システムを公開

CO2は5%削減、エネルギー総合効率は82.6%へ向上

2019年1月15日 開催

ガスコージェネレーションシステムの中心となるガスエンジンと発電機

 三菱ふそうトラック・バスは1月15日、神奈川県川崎市にある同社の川崎工場にガスコージェネレーションシステムを導入し、運用を開始したと発表。そのシステムを同日報道機関向けに公開した。

 新たに導入されたシステムでは、ガスエンジンで5750kWの発電を行なうほか、発電時の排熱を利用した温冷水ネットワークを構築。生産ラインやオフィスの冷暖房に活用し、CO2の削減とエネルギー総合効率の向上を実現した。

新システムでは温水によるセントラル冷暖房システムを採用

 2018年12月13日に完成して稼働開始したシステムの中心となるのは、三菱重工業製のガスエンジン。排気量は48万3000ccの18気筒で原動機出力は7863HP。直結した西芝電機製の発電機の出力は5750kWで、川崎工場で使用する電力量の約半分をまかなう。システムはエンジンによる発電だけでなく、排ガスボイラーによって蒸気を作り、機関冷却水から温水も取り出す。発電効率は45.0%、蒸気回収が19.1%、温水回収が18.4%となり、総合効率は82.6%となる。

 温水を取り出すことで、これまでの約1000の独立した冷房および暖房設備に変え、セントラル冷暖房システムのゾーン空調とした。冬は暖房、夏はチラーを使って冷水を作り、冷房に活用する。空調能力でも車両組立ラインでは従来が計1.3MWだったものを3.0MWと2倍以上に引き上げている。しかも、エネルギー消費量とCO2排出量は5%削減した。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 生産本部 施設管理技術部 部長のシューマッハ・トーステン氏

 新しいガスコージェネレーションシステムの導入の目的について、三菱ふそうトラック・バス 生産本部 施設管理技術部 部長のシューマッハ・トーステン氏は「職場環境、作業環境を改善」と説明した。さらに「CO2削減は大きな目標。プロジェクトの大きな原動力はCO2削減、維持費の削減」と語った。

 また、周囲に与える影響についても「近隣住民に決して迷惑をかけることはない。騒音もないし振動もない。工場からさまざまな大気汚染を出すこともない。隣の会社にも環境において影響を与えていることはない」と強調した。

新しいガスコージェネレーションシステムの導入効果

 2000年から2018年3月まで利用した旧システムでは、ガスタービンエンジン2機を使って6000kW×2の発電出力を持ち、電力のほかに蒸気を取り出していたが、効率は電力が30%、蒸気が42%の計72%。しかも、出力を調整できず蒸気を無駄にしていたこともあったという。

 新システムでは発電量は減っているが、これまで外部から取り入れるエネルギーの大半をガスに依存していことに対して、新システムではガスと電気の比率を50:50としたことで、リスク分散を含めた電気とガスの需給エネルギーの分散化を図っているという。

 具体的な導入効果はCO2削減やエネルギー消費削減のほか、維持費を50%削減している。生産ラインの空調改善では、冬である現在、生産ラインの作業員の体感温度が上がり、従業員のモチベーションをアップさせて製品の品質向上にもつながっていくという。

 なお、川崎工場内では、今回ですべてに冷暖房用冷温水ネットワークを張り巡らせたわけではなく、一部に止まっている。古いシステムからの置き換えを続けながら2020年以降はさらに範囲を広げるという。

2020年までに、生産部門においてCO2の12%削減が目標

三菱ふそうトラック・バス株式会社 企業渉外部 部長の越前晃氏

 三菱ふそうトラック・バス 企業渉外部 部長の越前晃氏は、三菱ふそうトラック・バスの環境指針について「地球温暖化の防止、汚染の防止、資源の有効活用と廃棄物の低減。これら3つを重点的な取り組みとして、全社的に環境改善として取り組んでいる」と説明。

「全社的な目標で2015年比で2020年までに、生産部門においては、CO2を12%削減、それ以外の部門においてはCO2を5%削減というものを数値目標として活動している。商品開発部門においては、低公害、CO2削減を図ったいい商品の開発であったり、電動化の商品の開発、サプライマネジメント部門では、購入してくる部品の効率を向上させてエネルギー消費量の低減につなげていきたい」とした。

環境中期行動計画 2016年~2020年
各拠点におけるエネルギー消費

 また、川崎工場以外の各拠点については「省エネルギー化を進めている」とした。

ガスコージェネレーションシステムを公開

エネルギーセンターの建物内。ガスエンジンの手前にあるのは発電機

 続いて、川崎工場の敷地内で運用が開始された新しいガスコージェネレーションシステムが公開された。川崎工場の敷地内にはエネルギーセンターがあり、建物内にガスエンジンと発電機を設置した。エネルギーセンターから各所へは配管で結ばれている。

三菱重工製の18気筒 48万3000ccのガスエンジン。建物内に設置して騒音が外に漏れないよう配慮している
ガスエンジンは建物内にあるが、排出ガスは屋上に向け、騒音の低減などを図っている。48万3000ccのエンジンだけに消音装置も大きい。ふそうのディーゼルエンジンと同様に尿素による排出ガス浄化システムも備わっている。取材時は気温が低かったため湯気となっているが、特に匂いなどはなかった
ガスエンジンの排出ガス部分から蒸気も取り出している
エネルギーセンターからの配管が各所に伸びている
蒸気はガスエンジンのほか、8台のガス炊き貫流ボイラーでも作られる
蒸気と温水の熱交換器
川崎工場内は各所に配管が設置されている。銀色の管に温水または冷水を循環させる
生産ラインの上に設置された空調の吹き出し口。生産ラインの作業員に温風または冷風を届ける