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三菱ふそう、118億円を投じて川崎工場に本社と生産設備を統合する新プロジェクト「キャンパス プラス」説明会

先行してリニューアルした新オフィスや工場見学会も実施

2017年11月15日 開催

説明会で併催された三菱ふそうトラック・バス 川崎工場の見学会

 三菱ふそうトラック・バスは11月15日、新たに同社トラック生産の主力工場である川崎工場に対して118億円を投資。「K1」と呼ばれる川崎工場 第一敷地にJR東北本線・新川崎駅の周辺に点在する本社、開発拠点といった機能を集約し、同時に工場内にある既存設備を大幅にリニューアルする「Campus+(キャンパス プラス)」と呼ぶ新プロジェクトを実施すると発表した。

 すでに一部の設備でリニューアルが始まっているキャンパス プラスは、三菱ふそうの親会社であるダイムラー・トラック・アジアが新しい成長戦略として掲げた「DTA ONE」の活動の1つとなるもの。これまで離れた場所にあった各部門をお互いの関係者の目が届く場所に集約することで業務の効率化を図り、生産施設のIT化や「インダストリー4.0」対応などの近代化で商品力を強化していくという。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)マーク・リストセーヤ氏

 同日に川崎工場内で行なわれた説明会は、三菱ふそうトラック・バス 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)のマーク・リストセーヤ氏、同副社長兼生産本部長のスヴェン・グレーブレ氏と記者によるラウンドテーブル形式で実施された。

 リストセーヤ氏はこのなかで、現在は世界各国で大きな変化が起きており、この変化に対応できない国や人は上手くいかなくなると語り、自分たち三菱ふそうは「新しい現実に合わせていく」とコメント。そのためには「明確なビジョン」を持ち、ビジョンを実現するために「製品」「プロセス」「人材」といった3つの目標を立てて行動していくと述べた。リストセーヤ氏は3つの目標でも人材が最も重要な部分であるとしている。

 ダイムラー・トラック・アジア全体で「2020年までに全世界で22万台以上を販売する」という製品では、5月に大型トラックの新型「スーパーグレート」、大型観光バスの新型「エアロクィーン/エアロエース」を発表したことを紹介し、スーパーグレートは前進安全装備やセキュリティ、高い効率を誇り、燃費はクラスにおける絶対的なベンチマークになっていると位置付けた。また、エアロクィーン/エアロエースでは静かでスムーズなバスになっており、静粛性については「メルセデス・ベンツのCクラス同様という乗用車レベルの騒音レベルに抑えている」とリストセーヤ氏は述べたほか、今年はEV(電気自動車)のトラックである「eCanter」の量産も開始したことも語った。

 リストセーヤ氏はこのアピールポイントについて、「なぜかと言うと、日本ではドライバー不足が大きな問題になっております。あらゆる騒音や阻害要因で乗り心地がわるいとドライバーが『運転に集中できない』『乗りたくない』と感じてしまうのです。お客さまにとって『ドライバーがどう思うか』が重要な要素になるので、乗り心地と安全性という要件を満たしていくことが義務になるのです」と解説している。

 また、eCanterについては「トラックの電動化は今、そしてこれからも川崎から発信されていきます」と語り、日本に革新的な技術において将来性があることをアピールし、とくに中国の会社に対して明確なシグナルを送る義務があるとコメント。今年から量産化したeCanterに続けて、今後6年で次世代の「Canter2.0」や「Canter3.0」と呼べるモデルのほか、「eローザ」「eエアロクィーン」「eスーパーグレート」の市場投入を視野に入れているという。これに向けて自信を持っており、明確な方向性として投資を行なっていくとした。

ダイムラー・トラック・アジアの掲げる新戦略「DTA ONE」
最新技術を投入したニューモデルを矢継ぎ早に市場投入している
電動化技術をアピールする「eFuso」ブランドをさらに拡大させていく計画

 プロセスや人材では、労働人口が減少傾向となっている日本において、「高い要件を満たして、若い能力ある日本人に来てもらえるような魅力ある会社になりたい」と語り、実際にこの3年間で20代前半の若い社員を工員として採用し、社員の平均年齢が44歳から40.5歳と3.5歳若返りしているという実績を示した。また、コミュニケーションの機会を増やすことが重要であると述べ、これがキャンパス プラスで1つの敷地に社員が集まる理由であるとしたほか、この5カ月間で5000台以上のiPhoneを事務系の職員に配布したというエピソードを紹介。みんなが同じ標準を持って理解し合えるようにしているという。

 また、将来的な成長に向けて高いレベルで投資しているとリストセーヤ氏はアピール。「K2」と呼ばれる川崎工場 第二敷地を大和ハウス工業に売却して短期リースにスイッチし、新川崎駅前の高層ビル内にある本社からK1に移動することで収益構造を改善。K2の売却で得た利益を、K1に新たに建設する「キャンパス プラス」「プロダクト・センター」や、既存の工場施設の改修に再投資していくという。すべてにおいて最善のものを目指すとして、施設面での投資額が94億円になると明らかにした。

 この施設改修では「いすゞや日野、UDとは競争しません。日本でトップクラスであるソフトバンクや楽天、そういった自動車業界に限らない会社のレベルで競いたいと考えています。そのため生産本部の施設をアップグレードして、オフィスや工場、手洗い場やトイレなど全面的に新しくして、社員指向で清潔感のあるものにしています」とリストセーヤ氏は語った。

 生産を行なう工場は「インダストリー4.0」をキーワードに、自動化はすでにロボットの運用の段階ではなく、アルゴリズムを変化させて生産をデジタル化するという。より柔軟性のある生産システムを導入して、生産ラインを速くスムーズにして品質も高め、マーケットの需要に合わせて変えられるようにしたいと述べ、そのためにこれから1年半で24億円を追加投資するという。これにより、前出の施設面の投資である94億円と合わせ、118億円になることを説明した。

「人材」ではよりよい労働条件、コミュニケーションの改善が、「プロセス」では生産のエリアの刷新、生産方法の最適化がポイント
開発施設と倉庫のあるK2の敷地は売却済み。K1への移転が完了するまでのあいだ短期リースで継続利用している。新川崎の駅を挟んで逆サイドにある本社は新たに建設される「プロダクト・センター」に移転する
大規模改修の予算として94億円を投資する
事務所や工場の改修はすでに進められており、「キャンパス プラス」「プロダクト・センター」は2018年末に完成予定
工場の先進化で24億円を投資していく
計118億円を投資して、川崎工場を今後も重要な生産拠点として運用していく
三菱ふそうトラック・バス株式会社 副社長兼生産本部長のスヴェン・グレーブレ氏

 また、質疑応答ではコストの効率化という視点から人員削減を行なうつもりがあるのかという質問に対し、生産本部長のスヴェン・グレーブレ氏が回答。グレーブレ氏は「効率を高めるというのは人を減らすことではありません。また、これから10年での革新として、ブルーカラーである工員の革新があると思っています。日本のブルーカラーは非常に効率性が高く、日本でのタクトタイムは世界トップクラスです。ブラジルや北米、ドイツと比べても世界的に最も高い数値になります。その優秀なブルーカラーの人数を減らすことはありません。私たちが考えているのは、ホワイトカラーが従事する繰り返しの仕事、経理などはソフトウェアでも対応できます。また、オーダーを受け付ける受注システムもアルゴリズムでカバーできます。こうした点で効率性を高めたいと思っています。すでに生産部門には機械が入り込んで生産性を高いレベルまで上げており、これからはオフィスにAIなどが入り込んで生産性を上げていくと思います」と語った。

すでに進行している新プロジェクトの一部を見学

 また、当日は川崎工場の敷地内ですでに進められているキャンパス プラスについて、新施設の建設予定地や先行してリニューアルされた一部オフィススペース、急速充電設備などを実際に確認できる見学会も実施された。

新施設「プロダクト・センター」の建設予定地。現在は以前にあった試作関連の建物を取り壊したあとに基礎の部分を作る段階で、11月末から本格的な建設がスタートするという。敷地面積は約3000m2で、オフィスの床面積は約1万m2とう5階建ての建物になる計画。新商品開発の部門が中心となり、本社機能も「キャンパス プラス」と分割しつつ入る予定
三菱ふそうが所属するダイムラー・トラック・アジアの「DTA 品質マネージメント本部」はすでにリニューアルを完了。ダイムラー・トラック・アジアが事業展開している日本、インドなどの市場で販売される車両の品質管理に加え、満たすべき仕様やガバナンスなどの管理も行なっている
こちらは人事・総務本部/IT・プロセス本部のオフィス
オフィスの周辺には大小さまざまな会議スペースを設定。共通しているのは「互いの視線が届くこと」で、これはラウンドテーブル内でリストセーヤ氏がたびたび口にしていたキーワード
オフィスの一角に用意されたリフレッシュスペース。社員の息抜きの空間であり、新しい発想が生まれる場にしたいとの意図から設定されているという
工場施設も新施設と合わせて外観をリニューアル中。外壁は白く塗装される予定
リニューアルに合わせ、CO2削減などに向けた取り組みも進めていく計画。川崎工場ではこれまでもガスタービン2基によるコージェネレーションシステムによる発電を行なっており、発生した蒸気を生産に活用してきたが、リニューアルで工場中にパイプラインを敷設。発電には新たにガスエンジンを用いて、発電と同時に温水を作成。温水を暖房などに利用してエネルギー効率を高める取り組みになる

次世代技術のチェックや導入検討などが行なえる「Bot Lab(ボットラボ)」

「インダストリー4.0」に向けた新しい取り組みとして紹介された「Bot Lab(ボットラボ)」。ここでは将来的に生産ラインや開発業務などに取り入れたいと考える先進的なロボット技術を試験的に導入。さまざまな部門の担当者が出入りできるようになっており、思い描くような使い方ができるかチェックしたり、他部門の担当者に意見を求めることができるという。

さまざまな次世代技術を先行導入させてチェックできる「Bot Lab」。現場責任者から内容の紹介が行なわれた
米Rethink Roboticsの協働ロボット「Sawyer」。7軸アームとカメラを備え、最大4kgまでの荷物を移動できる
「青いボックスに入っているECUを取り出し、貼られたラベルをスキャナーで読み取って所定の位置に置く」という作業工程を想定して、動作のチェックなどをしているシーン
1回置いたECUを再度持ち上げるとき、アームのケーブルが段ボールに引っかかって動作がストップ。そこで担当者がアームを動かし、回避する動き方をSawyerに学習させた。アームを動かすことで動作を教える「ダイレクトティーチング」という機能を持ち、プログラミング知識がない人でも動作を教えることができるようになっている
対象物を細かく確認するコグネックス製カメラをアーム下側に設置
もう1台のSawyerでは「所定の引き出しを開けて内部からラベルを取り出し、ほかの場所に移す」という作業を行なっていた
Sawyerの解説パネル
下半身に固定したアシストスーツは、自由に移動しつつ、中腰の姿勢でも身体にかかる負荷を軽減してくれる
エンジンのシール材塗布を自動化する試み。ここでは動作確認のため、アームの先を水で濡らして隔壁部分の上をなぞっていた
セグウェイも2台用意
5月に行なわれたeCanter発表会でも紹介された急速充電ステーション
eCanter
CHAdeMO方式の急速充電器
急速充電器が設置されていることを示す看板
急速充電ステーションの一角には充電中の時間にひと休みできるよう、自動販売機とベンチなども置かれていた

川崎工場の生産ライン見学会も実施

 キャンパス プラス説明会の終了後には、「キャンター」「ファイター」「スーパーグレート」などを生産している川崎工場の生産ライン見学会が行なわれた。

シャシーフレームは外部で組み立てられ、トラックで運び込まれてくる
シャシーフレームにアクスルやリーフスプリングなどの足まわりを組み付ける行程。大型トラックはフレーム天地逆にして、上から足まわりを組み付けていく
小型トラックは位置決めをした足まわりのところにシャシーフレームを運んできて組み付ける
アクスル搭載を終えたシャシーフレームは、自動搬送台車に載せられて次のラインに移動
大型トラックのシャシーフレームは、自動搬送台車に載せる前に組み付け作業のために反転させた天地を元に戻す「正転ひっくり返し」が行なわれる
屋内の上層で運ばれるエンジンとトランスミッションを一体化させた「パワーパック」をシャシーフレームに組み付ける
パワーパックを固定したあと、ドライブシャフトを接続し、燃料タンクなども組み付けていく
シャシーフレームのラインと並行して組み立てられてきた「運転席」をシャシーフレーム側に移動させて一体化させる
新調に位置決めをしつつ、シャシーフレームの上に運転席を下ろしていく。運転席とシャシーフレームを固定しながら、同時にヘッドライトなども取り付け
前輪の取り付けシーン。転がしていったタイヤを、フロアごと持ち上げてハブボルトに差し込む
ナットの取り付けは下側から。指先で仮止めしていく
後輪はダブルタイヤ
ガトリング砲を思わせる専用工具でナットを固定
タイヤを取り付けたあとはラインから下ろされ、自走で最終検査の工程に向かう
工場見学中には、リニューアルされた更衣室なども披露された
敷地内には「ローソン三菱ふそうトラックバス店」もある