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三菱ふそう、118億円を投じて川崎工場に本社と生産設備を統合する新プロジェクト「キャンパス プラス」説明会
先行してリニューアルした新オフィスや工場見学会も実施
2017年11月17日 15:50
- 2017年11月15日 開催
三菱ふそうトラック・バスは11月15日、新たに同社トラック生産の主力工場である川崎工場に対して118億円を投資。「K1」と呼ばれる川崎工場 第一敷地にJR東北本線・新川崎駅の周辺に点在する本社、開発拠点といった機能を集約し、同時に工場内にある既存設備を大幅にリニューアルする「Campus+(キャンパス プラス)」と呼ぶ新プロジェクトを実施すると発表した。
すでに一部の設備でリニューアルが始まっているキャンパス プラスは、三菱ふそうの親会社であるダイムラー・トラック・アジアが新しい成長戦略として掲げた「DTA ONE」の活動の1つとなるもの。これまで離れた場所にあった各部門をお互いの関係者の目が届く場所に集約することで業務の効率化を図り、生産施設のIT化や「インダストリー4.0」対応などの近代化で商品力を強化していくという。
同日に川崎工場内で行なわれた説明会は、三菱ふそうトラック・バス 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)のマーク・リストセーヤ氏、同副社長兼生産本部長のスヴェン・グレーブレ氏と記者によるラウンドテーブル形式で実施された。
リストセーヤ氏はこのなかで、現在は世界各国で大きな変化が起きており、この変化に対応できない国や人は上手くいかなくなると語り、自分たち三菱ふそうは「新しい現実に合わせていく」とコメント。そのためには「明確なビジョン」を持ち、ビジョンを実現するために「製品」「プロセス」「人材」といった3つの目標を立てて行動していくと述べた。リストセーヤ氏は3つの目標でも人材が最も重要な部分であるとしている。
ダイムラー・トラック・アジア全体で「2020年までに全世界で22万台以上を販売する」という製品では、5月に大型トラックの新型「スーパーグレート」、大型観光バスの新型「エアロクィーン/エアロエース」を発表したことを紹介し、スーパーグレートは前進安全装備やセキュリティ、高い効率を誇り、燃費はクラスにおける絶対的なベンチマークになっていると位置付けた。また、エアロクィーン/エアロエースでは静かでスムーズなバスになっており、静粛性については「メルセデス・ベンツのCクラス同様という乗用車レベルの騒音レベルに抑えている」とリストセーヤ氏は述べたほか、今年はEV(電気自動車)のトラックである「eCanter」の量産も開始したことも語った。
リストセーヤ氏はこのアピールポイントについて、「なぜかと言うと、日本ではドライバー不足が大きな問題になっております。あらゆる騒音や阻害要因で乗り心地がわるいとドライバーが『運転に集中できない』『乗りたくない』と感じてしまうのです。お客さまにとって『ドライバーがどう思うか』が重要な要素になるので、乗り心地と安全性という要件を満たしていくことが義務になるのです」と解説している。
また、eCanterについては「トラックの電動化は今、そしてこれからも川崎から発信されていきます」と語り、日本に革新的な技術において将来性があることをアピールし、とくに中国の会社に対して明確なシグナルを送る義務があるとコメント。今年から量産化したeCanterに続けて、今後6年で次世代の「Canter2.0」や「Canter3.0」と呼べるモデルのほか、「eローザ」「eエアロクィーン」「eスーパーグレート」の市場投入を視野に入れているという。これに向けて自信を持っており、明確な方向性として投資を行なっていくとした。
プロセスや人材では、労働人口が減少傾向となっている日本において、「高い要件を満たして、若い能力ある日本人に来てもらえるような魅力ある会社になりたい」と語り、実際にこの3年間で20代前半の若い社員を工員として採用し、社員の平均年齢が44歳から40.5歳と3.5歳若返りしているという実績を示した。また、コミュニケーションの機会を増やすことが重要であると述べ、これがキャンパス プラスで1つの敷地に社員が集まる理由であるとしたほか、この5カ月間で5000台以上のiPhoneを事務系の職員に配布したというエピソードを紹介。みんなが同じ標準を持って理解し合えるようにしているという。
また、将来的な成長に向けて高いレベルで投資しているとリストセーヤ氏はアピール。「K2」と呼ばれる川崎工場 第二敷地を大和ハウス工業に売却して短期リースにスイッチし、新川崎駅前の高層ビル内にある本社からK1に移動することで収益構造を改善。K2の売却で得た利益を、K1に新たに建設する「キャンパス プラス」「プロダクト・センター」や、既存の工場施設の改修に再投資していくという。すべてにおいて最善のものを目指すとして、施設面での投資額が94億円になると明らかにした。
この施設改修では「いすゞや日野、UDとは競争しません。日本でトップクラスであるソフトバンクや楽天、そういった自動車業界に限らない会社のレベルで競いたいと考えています。そのため生産本部の施設をアップグレードして、オフィスや工場、手洗い場やトイレなど全面的に新しくして、社員指向で清潔感のあるものにしています」とリストセーヤ氏は語った。
生産を行なう工場は「インダストリー4.0」をキーワードに、自動化はすでにロボットの運用の段階ではなく、アルゴリズムを変化させて生産をデジタル化するという。より柔軟性のある生産システムを導入して、生産ラインを速くスムーズにして品質も高め、マーケットの需要に合わせて変えられるようにしたいと述べ、そのためにこれから1年半で24億円を追加投資するという。これにより、前出の施設面の投資である94億円と合わせ、118億円になることを説明した。
また、質疑応答ではコストの効率化という視点から人員削減を行なうつもりがあるのかという質問に対し、生産本部長のスヴェン・グレーブレ氏が回答。グレーブレ氏は「効率を高めるというのは人を減らすことではありません。また、これから10年での革新として、ブルーカラーである工員の革新があると思っています。日本のブルーカラーは非常に効率性が高く、日本でのタクトタイムは世界トップクラスです。ブラジルや北米、ドイツと比べても世界的に最も高い数値になります。その優秀なブルーカラーの人数を減らすことはありません。私たちが考えているのは、ホワイトカラーが従事する繰り返しの仕事、経理などはソフトウェアでも対応できます。また、オーダーを受け付ける受注システムもアルゴリズムでカバーできます。こうした点で効率性を高めたいと思っています。すでに生産部門には機械が入り込んで生産性を高いレベルまで上げており、これからはオフィスにAIなどが入り込んで生産性を上げていくと思います」と語った。
すでに進行している新プロジェクトの一部を見学
また、当日は川崎工場の敷地内ですでに進められているキャンパス プラスについて、新施設の建設予定地や先行してリニューアルされた一部オフィススペース、急速充電設備などを実際に確認できる見学会も実施された。
次世代技術のチェックや導入検討などが行なえる「Bot Lab(ボットラボ)」
「インダストリー4.0」に向けた新しい取り組みとして紹介された「Bot Lab(ボットラボ)」。ここでは将来的に生産ラインや開発業務などに取り入れたいと考える先進的なロボット技術を試験的に導入。さまざまな部門の担当者が出入りできるようになっており、思い描くような使い方ができるかチェックしたり、他部門の担当者に意見を求めることができるという。