新型「エアロクイーン」(左)と「エアロエース」(右) 三菱ふそうトラック・バスは5月15日、大型観光・高速路線バス「エアロクイーン」「エアロエース」に新機能・新装備を加えた新型モデルを発表した。
今回の新型モデルでは乗客、ドライバー、経営者それぞれの立場から「大型バスになにが求められているのか?」という部分を追求。その答えを具体化した装備を盛り込んだ仕様になっている。グレードはベースモデルの「エコライン」、快適装備と機能装備を加えた「プロライン」、さらに上級装備を追加した「プレミアムライン」という3モデルを用意している。
新型エアロクイーン/エアロエースの特徴を紹介する前に、それぞれの違いを説明する。エアロクイーン/エアロエースとも観光、高速路線バス向けの車両だが、エアロエースは通常のバスより客室が高いハイデッカータイプ。そしてエアロクイーンは客席位置をさらに高い位置にしたスーパーハイデッカーとなるとともに、全高も客室高もエアロエースより高くなっている。また、エアロクイーンはエアコンが床下に装備されているに対して、エアロエースは天井に付いているという違いもある。
新型エアロクイーン。客席位置がハイデッカーよりさらに高いスーパーハイデッカーとなる。エアコンは床下直冷式 エアロクイーンは客室床下にエアコンが設置されるので、トランクルームはエアロエースより1区画減る2スパンとなる。ただ、全車客室フロアのフラット化と床下配線の省スペース化によりトランク室内高が拡大されている 新型エアロエース。ハイデッカータイプでエアコンがルーフについている天井直冷式 天井直冷式のエアロエースはトランクルームが3スパンとなり、荷室が広いのが特徴。そのため、乗客の荷物が多い空港線などに多く使用される 客室バリエーションもエアロクイーンとエアロエースでは異なるが、大型バスはバス会社の用途に合わせて仕様が決められることが多いとのこと。それだけに、客室の仕様から車種を見分けにくい。観光、貸し切りバス用として設定されているエアロクイーンのみ、後列のシートを向かい合わせにしたサロン仕様が用意されている。なお、トイレは全車オプション。
エアロエースの客席。従来型は通路に対して1段高い位置にシートが付いていたが、新型ではフロアの高さがフラットになった シート生地は10種類あり、枕カバー、窓下クッション、腰レザー、天井色、床材、カーテンなどの組み合わせは多数。標準的なシートにもリクライニング機構が付いている 標準仕様では最前列が3点式ELRシートベルト。そのほかのシートは新保安基準対応の2点ELRベルト。プレミアムラインでは全席3点式ELRベルトになる シートバックにはフック、ドリンクホルダー、ネットポケットが付く。壁には電源が取れるコンセントも用意される。エアロエースのウィンドウは固定式 トイレはオプション。最後尾のシート列のスペースをすべて使っているタイプなので、内部はかなり広い こちらはエアロクイーンの客室。エアロクイーンも客室の床に段差を設けていたが、今回のモデルからフラットな床になった。そのため、出入り口から客室に上がる階段が1段増えている 補助席も用意。トイレがないので最後尾は5人分のシートが付く。ウィンドウは2段式で下は開閉できる 装備面で最初に紹介するのは安全性について。三菱ふそうの自動ブレーキはABA(Active Brake Assist)という名称。従来モデルでは「AMB2.0」を搭載していたが、新型エアロクイーン/エアロエースは衝突被害軽減ブレーキ第2段階規制(AEBSフェーズ2)に合うABA3に進化している。
フロントガラスにはドライブレコーダーのほかに白線認識カメラが取り付けられ、カメラと各種センサーの情報からドライバーの運転注意力が低下していると判断された場合、警報を発するMDAS-III(運転注意力モニター)を装備。さらにメータークラスター上部にはドライバーの顔認識カメラを新たに搭載。左右の脇見や目の開閉状態を感知してドライバーの注意力が低下した場合、ブザーと画面表示で警告する。これらの機能を合わせて「アクティブ・アテンション・アシスト」という名称になっている。
続いては車両挙動安定装置のESP。コーナリングや車線変更時の挙動をセンサーが監視し、車体が不安定になったことを検知すると警報を発する。さらにエンジン出力やブレーキを自動で制御して車両を安定方向へと修正する機能だ。
このほか車間距離保持機能付きオートクルーズ「プロキシミティー・コントロール・アシスト」や、フットブレーキを使わない減速手段である「流体式リターダー」も装備する。さらにドライバーの覚醒状態は関係なく、車体が車線を逸脱すると画面表示と運転席に組み込まれるバイブレーターが振動し、ドライバーに警告するLDWS(車線逸脱警報装置・運転席バイブレーター付き)もある。
ナンバー横がABA3のセンサー。フロントガラスには白線認識カメラとドライブレコーダーが付く。ドライバーの顔認識カメラはメータークラスター上部にある コクピットは従来モデルのデザインを踏襲しているが、機能は最新で最大の特徴は新型エアロクイーン/エアロエースには国内大型観光バス・高速路線バスでは初めてとなるATを導入している点。搭載されたのは新型8速AMT「ShiftPilot(シフトパイロット)」だ。このトランスミッションはシフトレバー(マルチファンクションレバー)がステアリングコラムに付くので、運転席まわりにレバーがなく、スッキリした印象になっている。
メーターには各種情報を表示するマルチファンクションモニターを装備。表示の切り替えはステアリングに付くステアリングホイールスイッチで行なう。
エアロクイーン/エアロエースともコクピットのデザインは同じ。運転席は可動範囲が広く、ドライバーの体型や好みに合わせやすくなっている。プレミアムラインはサスペンション+シートヒーター付きのハイグレード運転席となる。プロラインにはオプション スイッチ類は装備の違いによって数が異なる。ここには隆起のある路面を通過するときに車高を30mmアップさせるためのスイッチや、乗降時に車高を95mm下げてステップと路面の高さの差を減らし、乗り降りしやすくするニーリング装置のスイッチもある ステアリングコラム左のレバーは「ShiftPilot」のマルチファンクションレバー。オートモードは走行に応じた最適なギヤで走行。ダイナミックモードはエンジン回転数を高めにキープして力強さを優先。ドライバーの選択でギヤチェンジを行なえるマニュアルモードもある。ペダルレイアウトは2ペダルで、ブレーキは坂道発進補助装置のヒルホールド&イージーゴー機能付き。右レバーはライトやワイパーの操作用 エンジンは従来の12.8リッターからダウンサイジングされた直列6気筒DOHC 7.7リッター「6S10」(T2)を搭載し、エンジンの軽量化と低燃費化を実現した。なお、排気量が下がることで影響が出る低回転域を補助するため、2ステージターボを採用。さらに高圧コモンレールシステムを導入して力強い動力性能を実現する。また、アイドリングストップ&スタートシステムも装備しているので、ここでも燃料節約ができる。ディーゼルエンジンの排出ガス対策にはダイムラーAGの技術であるBlueTecシステム(DPF+尿素SCR)を採用している。
サスペンションは全車にECS(電子制御サスペンション)を搭載。あらゆる走行シーンにあわせてエアスプリング、ショックアブソーバーを電子制御。車体の揺れを抑えて車両姿勢の保持と乗り心地のよさ、そして操縦安定性を高い次元で実現させている。
機能面の解説は以上となる。その他装備、室内の仕様については写真にて確認していただきたい。
直列6気筒DOHC 7.7リッター「6S10」(T2)エンジン。ターボは2ステージ式で最高出力は280kW(380PS)/2200rpm、最大トルクは1400Nm/1200-1600rpm。燃料タンク容量は405L。排出ガスクリーン化には再生制御式DPFと、尿素水を噴射して化学反応を起こしNOxを分解する尿素SCRを採用。尿素タンク容量は40L 厳しい排出ガス規制に対応するためマフラーまわりの装置を大型化。車体下部は空気の流れとエンジンの排熱を考慮した作りになっている アルミホイールはプレミアムラインに標準装備され、プロライン/エコラインにはオプション設定。サスペンションは全車電子制御のECS。リアタイヤ周辺を照らす補助灯はLED化され明るさがアップ。バスは内輪差が大きいので、夜間の切り返しや細い道を走るときはかなり走りやすくなったとのこと バッテリーは車体右前部に収納される。ここからヘッドライト裏にもアクセスでき、ライト系のメンテナンスも行なえる マルチファンクションモニターの表示例。運転、走行装置、車体状態(ドア開閉など)、メンテナンス&故障表示、基本設定などの項目に分かれていて、さらに詳細設定が可能 ガイド向けの装備。左前席前のサービスボックスには冷蔵庫と電気式の湯沸かし器が内蔵されていた。右側の棚にはキー付きのボックスも装備 ガイドが立って解説する際の背もたれも用意され、その下にはガイド用のシートがある。ドライバーの交代要員がいるときはコクピット後に座るが、その際に足を伸ばせるように仕切りボードに足を入れる穴が用意されている ミラーは電動調整式。左側のミラーステーには巻き込み予防のためのサイドビューカメラが埋め込まれている。リアにもカメラがある。また、リアウィンドウの枠には青色LEDを使った後面シグネチャーライトが付く(プレミアムラインに標準装備、プロラインにオプション)。これによりリアビューをスタイリッシュに見せるだけでなく、後方からの被視認性も高まるので安全性も向上する ボディ形状は全モデル違いはない。新型はサイドウィンドウ前部の下に「FUSO AERO」のプレートが付く