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三菱ふそう、9月に電気トラック「eCanter」発表。川崎工場で急速充電設備の開設式

CHAdeMO/Comboの2方式に対応。24時間稼働で他社モデルも利用可能

2017年5月10日 開設

充電器とeCanterの前に立つ関係者。左から国土交通省 自動車局 次長 島雅之氏、経済産業省 製造産業局長 糟谷敏秀氏、三菱ふそうトラック・バス株式会社 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO) マーク・リストセーヤ氏、代表取締役会長 松永和夫氏、川崎市長 福田紀彦氏

 三菱ふそうトラック・バスは5月10日、同社の川崎工場に電気トラック向けの急速充電設備「EV Power Charger(EVパワーチャージャー)」を設置した。これは9月に発表し、量産を予定している電気トラック「eCanter」を前に、電気トラックの利用者向けに環境を整えるため。一般道に面しており、24時間利用可能になる予定。

誰でも利用でき、駐車スペースの大きな充電設備

 EV Power Chargerは川崎工場の周囲の公道に面した2カ所で、それぞれ4台の急速充電器を備える。JRの線路側に設置したFUSO EVチャージャーでは、4台のうちの1台が国内のCHAdeMOと欧州のComboの両方式に対応する充電器となり、Combo方式の車両が来ても充電できる。

 これまでの充電器と異なるのは、3t積みの電気トラック「eCANTER」に対応するスペースを備えていること。国内で販売されるeCanterはCHAdeMO方式だが、既存の乗用車を想定した充電設備では、車両スペースの関係で対応できないところもあるという。

 装備する急速充電器は全台とも50kW充電に対応するタイプで、トラックの仕様により充電地容量は異なるとしながらも、20%程度の残容量で入ってきたeCANTERが40~50分間で80%まで充電できるという目安を打ち出している。

 急速充電設備の設置場所は、JR新川崎駅の南西方向に広がる川崎工場の外周に面しており、工場東側となるJR横須賀線側の道路沿いで新川崎ふれあい公園近くと、工場の南西側になるガス橋通り沿いの2カ所。CHAdeMO/Combo両対応の充電器は新川崎ふれあい公園側に設置される。

 EV Power Chargerは、対応する認証カードを持っていれば利用が可能。9月に発表予定のeCANTERだけでなく、他社のEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド)でも区別することなく利用できる。

 なお、川崎工場では太陽光発電施設を導入。最大出力680kWで、CO2ゼロでの充電環境が整っているとしている。

EV Power Chargerは小型トラックのサイズに対応する駐車スペースを備える
通常のCHAdeMO方式の急速充電器
CHAdeMO/Combo両対応の急速充電器
CHAdeMO/Combo両対応の急速充電器はデルタ電子製
こちらがCHAdeMO方式の充電ソケット
Combo方式の充電ソケットは左側にある
開設式ではテープカットが行なわれた

三菱ふそうの全国の拠点約250カ所にも充電設備を設置

 EV Power Chargerを開設した5月10日には、急速充電設備において開設式が実施され、三菱ふそうトラック・バスや政府、自治体関係者が出席した。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)のマーク・リストセーヤ氏がeCanterで登場
自ら充電器のスイッチを押して充電開始
会場で挨拶

 三菱ふそうトラック・バス 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)のマーク・リストセーヤ氏は、eCanterに乗って会場に登場。降りるとすぐに充電器を接続してみせた。リストセーヤ氏が充電器に接続した時点で充電残量は25%。開設式が終了するまでの50分ほどで80%まで充電が行なわれることを自らデモする形になった。

 リストセーヤ氏は、挨拶のなかでeCanterを今年納車することを明言。「単に製品発表ではない、都市流通におけるトラック産業の革命」と述べたほか、「都市に住む人々の快適な暮らしのために、都市内の交通により排出されるCO2や騒音を削減する必要があると考えている。ふそうの電気トラックとバスが解決。電気エネルギーにより排出ガスゼロの輸送が実現する」と説明し、この排出ガスゼロの輸送を「FUSO Positive Energy」と呼ぶとした。

 さらにリストセーヤ氏は「充電ネットワークなしでは電気トラックは成功しない。そして充電設備は、自動車メーカー単独では作ることはできない。政府の活動によるお客さまへのサポートが必要」と出席した政府関係者、自治体関係者を前に要望した。

 また、リストセーヤ氏は三菱ふそうトラック・バスによる充電設備の拡充については、営業所や整備工場など国内約250カ所に2~3年で設置したいという希望を明らかにしたほか、コンビニエンスストアのセブン-イレブンの配送トラックにもeCanterが採用されることを明らかにした。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 代表取締役会長 松永和夫氏
経済産業省 製造産業局長 糟谷敏秀氏
川崎市長 福田紀彦氏

 開設式には、三菱ふそうトラック・バス 代表取締役会長の松永和夫氏、経済産業省 製造産業局長の糟谷敏秀氏、川崎市長の福田紀彦氏も登壇した。

 松永氏は京都議定書が採択された1997年のCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)について触れ、「COP3から20年という節目の年に、当社が世界で初めて実現できたことに感動している」「CO2を全く排出しない、騒音も出ない電動トラックに、先鞭をつけたセブン-イレブンの慧眼に感謝」と述べた。

 経済産業省 製造産業局長の糟谷敏秀氏は、「トラックにおいては航続距離、積載量の技術的課題で電気トラックの商品化が実現されてこなかったが、eCanterを開発され、まことに心強い動き」と評価。電気トラックの充電設備について補助も検討するとした。

 川崎市長の福田紀彦氏は、CO2削減について「非常に高いハードルで、私達の生活すべてを変えていかないとならない」とし、川崎市が公害問題を克服したことに絡めて「川崎市内のみならず、全国に川崎工場で作られるeCanterが発進していくことを本当に期待している」と期待を寄せた。

開設式中はずっとモニターに充電レベルが表示され、終了するころには充電レベルが80%を示した
マーク・リストセーヤ氏と松永和夫氏が充電器の前でポーズ

eCanterは9月発表。試験では4割近くコスト削減

 発表予定のeCanterは9月に発表予定。2017年に合計150台を生産する予定で、地域別の割当は国内50台、欧州50台、北米50台。国内向けは川崎工場で製造し、欧州と北米向けの100台はポルトガルの工場で生産するという。国内50台のうち25台がセブン-イレブンで使われる。2018年以降はさらに生産台数を拡大する見込み。

 eCanterは「キャンター E-CELL」としてポルトガルで実証実験運用をしたが、燃料やメンテナンスなど含めた総コストが従来の64%に削減されたという。

eCanter