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三菱ふそうの電動トラック「eCANTER」をセブン-イレブンとヤマト運輸に導入
両社とも年内に配送業務で利用開始
2017年10月20日 20:05
- 2017年10月19日 実施
三菱ふそうトラック・バスは10月19日、電気で走行する3t積みの電気トラック「eCANTER」の導入セレモニーを実施した。今回導入する企業はセブン-イレブン・ジャパンとヤマト運輸で、それぞれ25台の計50台。今後、11月から配送などの実務に順次投入する。
eCanterは小型トラック「キャンター」の電動仕様。リチウムイオン充電池を搭載し、最高出力135kWのモーターを搭載して電気で走行する。セブン-イレブン向けの仕様とヤマト運輸向けの一部では冷蔵設備を持っており、その電源供給を含めても1回の充電あたり100km以上走行できるという。
メルセデス・ベンツのPHEV用バッテリーを6個搭載
eCANTERは3t積み。最高出力135kW、最大トルク390Nmのモーターを搭載し、バッテリーはリチウムイオンバッテリーで11kWhの容量のものを6個搭載し計66kWh。最高速は80km/hで1回の充電で約100km走行できる。充電はCHAdeMO方式による急速充電と200Vの普通充電に対応する。
現在のeCANTERに搭載するバッテリーは同じダイムラーグループであるメルセデス・ベンツと共同開発のもので、メルセデス・ベンツのPHEVに搭載するものとほぼ同じ。1個あたりの容量は11kWhで重量はケース込みで約120kg。車両のフレーム両端に2個ずつ4個、ディーゼル車ではエンジンがあったキャブ下後方に2段重ねで2個の計6個を搭載している。モーターはさらにその後ろに搭載、通常のキャンターと同じく後輪を駆動する。
ディーゼル車であればエンジンやトランスミッション、燃料タンクと搭載燃料で300~400kgあったが、それがバッテリーなどに置き換わる。車両重量は2990kgで、積荷も含めた車両総重量は7490kgとなっている。
導入の両社がメリットとして挙げたものは、環境対策のほかに騒音対策。セブン-イレブン、ヤマト運輸ともに住宅地の中を走行する運用であり、セブン-イレブンは早朝・深夜の配送、ヤマト運輸は住宅の前の走行で騒音問題となりやすい場所での活用に期待を寄せている。
現在のところ、量産といっても2017年度は日本国内向けに50台という小規模なもの。2018年度の生産等の計画は明らかにされていないほか、今後、仕様が変更される可能性もある。
eCANTERの価格については明らかにされていないが、今回の2社の導入はリース契約で行なわれ、整備費用などを含んだリース料はディーゼル車よりは高いという。それでも最初のユーザーということで、さまざまなフィードバックを得るということもあり、戦略的な価格で提供したとしている。
セブン-イレブンの導入セレモニーは配送センターで開催
10月19日は、午前中に東京都日野市でセブン-イレブンの店舗配送を行なっているエスアイシステム 日野センターで導入セレモニーが行なわれた。セブン-イレブンでは、店舗に商品を供給する配送を担当するトラックに導入する。
三菱ふそうトラック・バス 代表取締役会長の松永和夫氏は、「長年培ってきたものづくりの伝統とダイムラーの先進技術、この2つを併せ持ったかたちで、世界で初めて電気トラック、eCANTERを商業生産することができた。大変感激をしている。京都議定書から20年、記念すべき年にトラックの電動化に成功したこと。大変私は誇らしく思っている」と感想を語り、セブン-イレブンには「日本を代表している、時代を先取りしてトップを走ってるすばらしい企業。私どもの最初のお客さまになって、大変誇らしく思っている」と述べた。
セブン-イレブン・ジャパン 代表取締役社長の古屋一樹氏は、同社の環境対策に触れ、「全店LED化が終了。毎年2000店レベルで出店しているが、可能な店は太陽光パネルを設置している。オリジナル商品は1700~1800アイテムあるが、7割くらいは環境配慮型商品で、来年か再来年にはオリジナル商品全商品を環境配慮型にしようと取り組んでいる。全国で5900台の配送車があり、現在は15%が環境配慮型車両だが、今日を機に一気に加速させていきたいと考えている。近くて便利、もっとよいお店を作りつつ、環境については全社を挙げて真剣に取り組んでいくことをみなさまに約束する」と宣言した。
セブン-イレブンでの実際の運行は、充電設備の整備やトラックの登録が行なわれたあとの12月18日からを予定。セブン-イレブンについてはトラック1台で10店舗ほど配送するが、都市部であればセブン-イレブンのドミナント戦略により店舗間の距離が短く、現在のeCANTERの仕様で十分対応できるとしている。ただ、完全にディーゼル車と置き換えるのではなく、eCANTERに適した走行ルートを担当させるなど、eCANTERに最適化した運用をする予定という。
ヤマト運輸は戸別配送や大口配送用など複数タイプで使い勝手を検証
ヤマト運輸は、同日午後に同社の総合物流ターミナル「羽田クロノゲート」にて引き渡し式を行なった。ヤマト運輸では、冷蔵したまま配達する宅配品にも対応する冷蔵・冷凍設備を持ったタイプや、全く冷蔵設備を持たないドライバン仕様、後部のパワーゲートの有無などさまざまな仕様を導入する。
ヤマト運輸の常務執行役員の阿波誠一氏はeCANTERを素晴らしいクルマと評価する一方、「セールスドライバーが使うことが主流。振動がないクルマ。EVトラック自体は研究してきたが、集配に取り入れるのは初めて。本当に使い勝手がよいのか見極めていきたい」と、今回は試験的導入であることや、しっかりと評価していくことを強調した。
また、今後の電気トラックの導入については「山間部では走行距離が200~300kmもあるので、そこに合ったものを選んでいく」とし、当面、配送現場をすべて電気トラックに置き換えることにはならないとした。
三菱ふそうトラック・バス 代表取締役会長の松永和夫氏は電動トラックについて「今年はついに商業化できたわけですが、はじめの一歩だと思っている。ユーザーのみなさんに乗っていただいた上でのご意見、ご指摘を踏まえながら、電動トラックの高みを目指していたきい」とした。
ヤマト運輸での実際の運用は11月から関東地域で行なう。導入台数は東京23区に15台、横浜の湾岸エリアに5台、埼玉県に2台、千葉県に3台を割り振り、そのうちヤマト運輸で言う「クール設備」があるクルマは7台。企業などに大口納品が多いところはドライバンでよいが、戸別の宅配ではクール設備も必要となる。
また、ヤマト運輸の集配所には冷蔵設備などの関係で200Vの電源が整備されており、夜間の普通充電で対応する予定。急速充電の必要がないので、集配所に導入するための大きなコストは発生しない見込みという。