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三菱ふそう、本社機能を持つ新社屋「プロダクト・センター」公開
ダイムラーAGからトラック部門やデザイン部門代表が会見
2019年3月19日 13:58
- 2019年3月18日 公開
三菱ふそうトラック・バスは3月18日、神奈川県川崎市中原区にある川崎工場第一敷地内の新社屋「プロダクト・センター」を報道陣に公開した。デザインセンターを含み、商品の導入スピードを早めることが狙いとなっており、社員同士のコミュニケーションの円滑化や、労働環境の改善も合わせて行なう。
製品に関する情報を扱うプロダクト・センター
プロダクト・センターは床面積1万792m 2 の5階建て。5階には商品企画や計画およびCEOのオフィスを含む本社があり、4階と3階は開発部門で、コネクティビティや自動運転、先進安全技術および電動化に関する技術を開発している。2階と1階はデザインセンターとなっている。
建物はユーザーの声を製品設計のプロセスに反映できる構造になっているとし、5階には製品に関する市場からの情報が集まってライフサイクルマネジメントや商品計画を行ない、階下の研究開発部門へと情報を流していくというワークフローをとる。
説明を行なった三菱ふそうトラック・バス 生産本部 施設管理技術部 部長のシューマッハ・トーステン氏によれば、プロダクト・センターという名称を与えた理由は製品に関して必要な情報を扱うからだという。建物デザインについても「温故知新」のキーワードのもと、過去の三菱ふそうの建物写真を参考した。
プロダクト・センターには「K2」と呼ばれる第二敷地や新川崎駅近くにあった本社オフィスの機能をすべて1か所に集めている。1つの場所になることで、コミュニケーションが活発になるとしている。
プロダクト・センターへの集結は、川崎工場全体をリニューアルする「Campus+(キャンパス プラス)」プロジェクトの一貫。これまでにも既存オフィスのリニューアルなどを実施しており、すでに完成したプロダクションビル(新設)、社員食堂のリニューアル、スポーツ設備(新設)、シャワールーム、ロッカールームなど多岐に渡る。
外光が内部に注がれ、階段で移動するオフィス
建物内はコミュニケーションを重視した設計となっており、例えば階の移動にはエレベーターもあるが、階段の利用を推奨。広いスペースをとり、外が見えるような階段を設置した。夜間にはイルミネーションも点灯するという。
建物は全体的にガラス張りとなっていて外光が差し込むようになっているが、最上階となる5階はアトリウムに自然光を取り入れるようになっていて、そのまま吹き抜けから4階、3階まで光が差し込むようになっている。光が差し込むため、電気消費量を抑えることにもつながっている。
建物内には820席ほどのデスクを用意。以前のK2、新川崎駅近くのオフィスよりも1人あたりのスペースが2倍程度に拡大し、これまでは窮屈気味だったことに比べ、環境はかなり改善されたという。
プロダクト・センターにはコミュニケーションできるデスクなどもあり、非公式なミーティングが行なえるほか、部屋を予約しなくてもすぐに集まって話し合いができるようになっている。
会議室はガラス張りになっていて透明性が高まっている。壁はボードのように直接書き込むことが可能。会議室前はちょっとしたカフェテリアにもなっていて、お茶を飲んだり昼食をとったりすることもできる。
デザインセンターは1階と2階が通しになっており、大型トラックやバスの原寸モデルを展示して、実車を動かすこともできる大きな空間が用意されている。オフィス部分は2階にあり、ここで各国のふそうブランドのトラックのほか、ダイムラー・インディア・コマーシャル・ビークルズのインド市場向け「バーラト・ベンツ」ブランドの一部デザインも行なっている。
1階にはスクリーンがあり、原寸大のオリジナルサイズでスクリーンを使って設計できるほか、顧客を招いたイベントの実施、プレゼンテーションを行なうこともできる。また、この空間には長さ5m近いサイズのクレイモデルを削り出す機械も設置した。
ダイムラーAGのトラック部門代表がプロダクト・センターについて語る
プロダクト・センターの完成に際して、ダイムラーAGから取締役 ダイムラー・トラック兼バス部門代表のマーティン・ダウム氏、取締役兼デザイン代表、ダイムラー乗用車部門デザイン代表のコードン・ワグナー氏などが来日し、プロダクト・センター1階にて会見を行なった。
マーティン・ダウム氏は、グループにおける三菱ふそうの役割を評価。ダイムラーのトラックで初めて量産したEV(電気自動車)のトラック「eCanter」がすでに量産されて走っていることなどを挙げた。
ダイムラーの傘下にあることで、連係を取り、開発されたものはグループの中で活用して、日本、ドイツ、アメリカに関わらずダイムラーのアイデアとして使えるとした。例えば三菱ふそうが受けた恩恵は、大型トラックの「スーパーグレート」や大型観光バスに導入された「サイドガードアシスト」で、ヨーロッパで標準装備している機能を日本市場に適用するのは容易だったとした。同じような技術を2回、3回と別々に開発をする必要がないことをメリットとしている。
また、本社については「すばらしい本社」と評価。「実際の作業まで、全員が一堂に介して近いところで仕事をしています。品質、商品の導入スピードも上がります」と期待を寄せ、今後はディーラーネットワークにも投資して、「長期的にこのマーケットにいる。四半期、短期的な成功は考えていない。長期的な成功を考えている」として、長期に渡って日本での積極的な展開を続けることを示した。
次に、ダイムラー・トラック・アジア代表で三菱ふそうトラック・バス 代表取締役社長のハートムット・シック氏は新社屋で「オープンなコンセプトのもの、近くに座ることによりコミュニケーションが楽になる。大胆な労働環境のアップグレードで、魅力的な会社になる」と期待を寄せると共に、国内拠点を改善する「ミライ」プロジェクトの開始について言及した。
ミライのコンセプトは改装(Refurbish)、再建(Rebuild)、移転(Relocate)の「3R」。シック氏は「都市化が進み、需要の影響があり、カスタマーマップを見ていく必要がある。きちんとお客さまの要望に合わせたサービスをしないといけない」とし、2026年まで7年間かけて全販売拠点の設備と施設の改良を実施するとした。2019年内には全国で7店舗の改装を完了させる。
そして、これまで一元化されていなかった顧客やサービスの情報を一元化するディーラーマネジメントシステム「フォース」を導入。営業担当者の仕事をサポートし、情報管理の他にペーパーワークも減らせるという。さらに、EVトラック eCanterの普及に合わせ、国内販売拠点でも急速充電設備の設置をはじめとする対策を進めていくという。
シック氏はこれらの投資を行なう目的について「お客さまに事業で成功していただきたい。究極的な目標です」と述べ、「三菱ふそうとして、日本をリードしていきたいと思います」とまとめた。
ダイムラーグループでデザイン代表を務めるコードン・ワグナー氏は、乗用車だけでなく商用車についてもまとめている。「乗用車だけでなく、トラックグループでもデザインを強化していく」として、新しいプロダクト・センターの役割に期待を寄せた。
ワグナー氏は自身の仕事を「プランドのバリューを1位にして、将来の高級車を作っていくこと」と説明。メルセデス・ベンツのブランド価値を上げてきた実績に触れ、「将来の高級車を作っていく。過去10年、典型的な高級車ブランドからモダンな高級車ブランドにした」と説明した。
三菱ふそうについては「ふそうは本当のジャパニーズブランドで、日本のアイデンティティを展開できる」と評価した。