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【IAA 2018】三菱ふそうなどダイムラー・トラック部門の電動化と自動化について首脳陣が語る

2018年9月19日(現地時間):プレスデー

2018年9月20日~27日(現地時間):一般公開

ダイムラー・トラック部門取締役 開発本部長 フランク・ラインティェス氏

 独ダイムラーは、ドイツ ハノーバーで開催された商用車ショー「IAA 2018」の開催期間中に、アジア地域の報道関係者を集めたラウンドテーブルを実施。三菱ふそうトラック・バスを含めたダイムラーグループのトラック・バス部門における、電動化や自動運転、コネクティビティへの取り組みと将来に向けたビジョンを示した。

3~5年後に電動化車両のグローバルプラットフォームが登場

 電動化への取り組みに関するラウンドテーブルでは、ダイムラー・トラック部門取締役 フランク・ラインティェス氏、ダイムラートラック&バス Eモビリティグループ部代表のゲーザー・ライメルト氏、三菱ふそうトラック・バス副社長兼開発本部長のアイドガン・チャクマズ氏が登壇。ラウンドテーブルでは、電動化車両の開発と実用化の重要性が高まっている現状を示すとともに、その導入や普及にあたっては、車両を取り巻く充電やルート計算、コンサルティングといった電動化車両を取り巻くエコシステムが重要になるとの考えが語られた。

 ラインティェス氏は「ダイムラー内にEモビリティグループを立ち上げ、ここが中心となって市場に新しいボリュームを生み出していく。電動化車両の開発にあたっては、バッテリーが主要なテクノロジーになっているが、あと3~5年後には共通のグローバルプラットフォームをトラック・バス用に完成させて、eパワートレーン化を進めていきたい」との見通しを示した。

ダイムラートラック&バスEMG部代表のゲーザー・ライメルト氏

 Eモビリティグループの代表であるライメルト氏は「都市部への車両規制など市場環境が変化しており、電動化されたモビリティを導入したい、テストしたいという企業が出ており、そういったニーズに応えるのがわれわれEモビリティ部門の課題です。また、Eモビリティは適正な価格でないと導入できないというのも重要です。IAAにもさまざまな企業がEテクノロジーを投入してきて、ますますEモビリティは現実のものになりつつあると感じています」との感想を話した。

 また、Eモビリティを進めていく上では、電動化車両や充電設備といった製品や保守管理、運用のマネージメントなどを含めた全体のエコシステムをにらんだコンサルティングなど、さまざまなサービスを一緒に提供して事業を進めていくことが重要といい、ライメルト氏は「さまざまなノウハウの蓄積があるダイムラーの中にいるのがわれわれの大きなアドバンテージ」と語った。

 ライメルト氏は「ダイムラーはEモビリティにおいて最も多くのポートフォリオを商用車部門で持っております。われわれの最も成功している取り組みがE-FUSOブランド。eキャンターは6つの都市に導入されており走行試験によりさまざまなデータを集めております。メルセデス・ベンツにおいてもこれからeアクトロス、eシターロといった製品が市場に投入されていきます。われわれの目標はカスタマーの利益になり、カスタマーの持続可能性を実現させることです」とその目標を話した。

Eモビリティグループの取り組みを示すスライド

2020年にeCanter 2.0に進化

2020年に登場するeCanter 2.0はバッテリーをフレーム中央部に集約。フレームの左右に補器類を配置できるスペースを用意することで架装の幅を拡げる

 三菱ふそうのチャクマズ氏はE-FUSOの取り組みについて紹介。IAA2016で発表されたeCanterについては、ドイツ、日本、オランダ、ポルトガル、UK、USAといった世界6か国に導入して、25万kmの走行実績があることともに、日本での導入事例が紹介された。

 チャクマズ氏は「都市部を走行するトラックにおいては、1日あたりの走行距離は50~80km、長距離を望む米国においても200kmにはなりません。この数字は大きな意味を持つ」とこれまでの成果を報告。2020年を目標に開発を進めているeCanter 2.0では、これまで車体フレームの左右に配置していたバッテリーを、フレームの中央部に集約するという。

三菱ふそうトラック・バス副社長兼開発本部長のアイドガン・チャクマズ氏

 eCanter 2.0について、チャクマズ氏は「これまでに他の用途にも使いたいので(バッテリーの搭載されている)左右の空間を空けてほしいという声があり、バッテリーの集約で顧客のニーズに幅広く対応できるほか、安全性の観点においてもサイドからの衝突などでバッテリーを保護できるなど、良好な結果をもたらす」との考えを示した。

E-FUSOの取り組みについて紹介するスライド

レベル3をスキップしてレベル4自動運転を目指すダイムラー

ダイムラー・トラック戦略部門代表のペーター・ボーン・シュミット氏

 自動運転とコネクティビティに関するラウンドテーブルには、ダイムラー・トラック戦略部門代表のペーター・ボーン・シュミット氏、ダイムラー・トラック部門戦略本部長 マーカス・クレーソン氏、三菱ふそうトラック・バス副社長兼開発本部長のアイドガン・チャクマズ氏が登壇した。

 自動運転については、レベル2自動運転機能をメルセデス・ベンツの新型「アクトロス」に搭載したことに続き、三菱ふそうの「スーパーグレート」に導入することが紹介されるとともに、将来的に「レベル4」自動運転を目指すとの方向性が示された。

 シュミット氏は「新型アクトロスの導入でレベル2の自動運転を実現させることができた。次のステップは、レベル4をターゲットとしています。レベル4を推進する上で大切なのは、法律上の枠組みや100%の信頼性が重要」と述べ、自動運転技術への取り組みはトラックやバスの稼働率を高め企業の利益率に関わるものと、その重要性を説いた。

自動運転の取り組みを示すスライド

 クレーソン氏からは「将来的にトラックという製品単体ではビジネスにならない」と、電動化車両や自動運転車を遠隔で見守る基盤となるコネクティビティへの取り組みの重要性を説いた。

ダイムラー・トラック部門戦略本部長 マーカス・クレーソン氏

2020年までにふそうの全モデルが「Truckonnect」に対応

 三菱ふそうのチャクマズ氏からは、2020年までにふそうの全モデルが「Truckonnect」に対応することが示され、それらが実現するコネクティビティサービスとして、「位置・軌跡状況把握」「安全運転情報」「燃費把握」「車両管理」「遠隔診断」といった5つの領域でユーザーにサービスを提供するという。

 チャクマズ氏は「すでにeキャンターにはコネクト機能が搭載されており、ふそうの観光バスやトラックまで拡大して、2020年までに10万台がつながることになる」との見通しを話した。

レベル2自動運転機能が新型スーパーグレートにも採用される
三菱ふそうのコネクティビティへの取り組み