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三菱ふそう、レベル2高度運転支援を実現する2019年型「スーパーグレート」説明会。今秋に発売
レベル2高度運転支援で大型トラックの死亡事故要因の36%のケースで軽減に貢献
2019年7月25日 12:25
- 2019年7月24日 開催
三菱ふそうトラック・バスは7月24日、レベル2高度運転支援を実現する大型トラックとして2019年型「スーパーグレート」の技術勉強会を開催した。同車は2019年秋の発売を予定している。
2019年型スーパーグレートには、レベル2高度運転支援を実現する運転支援機能「ADA(アクティブ・ドライブ・アシスト)」を採用したほか、カメラとレーダーを組み合わせて歩行者や車両認識を行なう「ABA5(アクティブ・ブレーキ・アシスト 5)」「IHC(インテリジェント・ヘッドランプ・コントロール」「交通標識認識機能」といった新技術を採用して安全性能を向上させた。
勉強会には、三菱ふそうトラック・バス 開発本部 エンタイヤビークル開発統括部長 恩田実氏と、開発本部 メカトロニクス開発部マネージャー 木下正昭氏が登壇して、三菱ふそうトラック・バスとダイムラーグループ商用車部門における自動運転技術のロードマップや2019年型スーパーグレートの新技術の特徴が説明された。
レベル2高度運転支援技術で大型トラックが関係する死亡事故要因の36%のケースで軽減に貢献
勉強会に登壇した恩田氏は「トラック・バスにおける自動運転の未来」と題して、三菱ふそうトラック・バスとダイムラーグループにおける自動運転技術のロードマップや自動運転技術への取り組みなどを紹介した。
レベル0~レベル5で定義される自動運転技術のロードマップについて、三菱ふそうとダイムラーグループとしては、レベル2高度運転支援を実現させた後は、レベル4を目指すという。レベル3の自動運転に関しては、監視者となるドライバーが必要であることから、コストに対するメリットが少ないため開発をスキップ。輸送コストに見合う低コストなシステムで実現させるレベル4自動運転の開発を目指す。
恩田氏は「自動運転へのアプローチとして、レベル3自動運転に対するユーザーメリットは、コストや開発スケールに対してメリットを見出しにくいと考えています。今の大型トラックのTCO(Total Cost of Ownership)は、約40%がドライバーのコストにかかっています。また、日本ではドライバーの有効求人倍率が2.8倍と、今後さらにドライバーのTCOに占める割合が増え続けていくことが予想されます。レベル3自動運転ではドライバーへの運転操作の受け渡しが発生してしまいます。究極はドライバーレスと考えていて、三菱ふそうとダイムラーとしては、レベル2相当の後はレベル4を目指して行く方針で、グローバルな体制を整えて組織的に開発を進めていこうとしています」との考えを述べた。
新たに導入するレベル2高度運転支援を実現するADAの機能については、安全運転をサポートするための運転支援機能との位置付けとなる。恩田氏は日本国内の大型トラックが関係する死亡事故件数は、2012年~2016年に1071件発生していることを紹介。この中の事故分類で、全体の36%となる「工作物衝突など」「追突など」「すれ違いなど」といった要因については、レベル2の高度運転支援技術の導入で軽減可能である考えを示した。
恩田氏は「ADAの導入は自動運転技術をさらに進めていく側面もありますが、現時点ではドライバーの安全、周辺の交通安全、事故の低減、安全ということに対して重きをおいております。2012年~2016年に約1000件の大型トラックが関係する死亡事故が発生しておりますが、レベル2相当の運転支援技術を追加することによって、全体で約36%の事故要因の軽減に対して、貢献ができるのではないか」との考えを述べた。
2019年型スーパーグレートでは、ダイムラーグループの新型「アクトロス」と同じく、レベル2高度運転支援を実現させるために「グローバルセンサーセット」として世界共通のセンサーの組み合わせで、自動運転技術の開発が進められてきたという。
恩田氏は「システムが複雑になってくると、例えばレーンキープアシストなどは、車線の色や形が違うなど国によって交通環境が違っていて、きめ細かなキャリブレーションが必要となってきます。ヨーロッパ、北米、日本では交通環境が異なるので、三菱ふそうとしては右ハンドル環境の仕様で開発をリードしていく役割も担っています」と、採用するセンサーは共通としながらも、それぞれの市場に合わせて開発を進めてきたことを紹介。また、三菱ふそう独自の取り組みとして「アクティブ・アテンション・アシスト」など、日本の交通環境に合わせた安全対策に取り組んでいることも強調された。
レベル2高度運転支援を実現する「ADA(アクティブ・ドライブ・アシスト)」採用
2019年型スーパーグレートに採用される新技術、「ADA(アクティブ・ドライブ・アシスト)」「ABA5(アクティブ・ブレーキ・アシスト 5)」「IHC(インテリジェント・ヘッドランプ・コントロール」「交通標識認識機能」については、同社 開発本部 メカトロニクス開発部マネージャー 木下正昭氏が登壇して説明した。
トラックとして日本初のレベル2高度運転支援を実現するADA(アクティブ・ドライブ・アシスト)は、従来のオートクルーズ機能「全速度域対応プロキシミティー・コントロール・アシスト」に加えて、電動モーター付油圧式パワーステアリングを導入することで、アクセル・ブレーキ・ステアリングを制御する事が可能となり、レベル2高度運転支援に相当する運転支援機能を実現させた。
ADAでは「レーンキープ機能」「車線逸脱抑制機能」といった主に2つの機能を備えている。レーンキープ機能は、ADAで走行している時にカメラで車線を認識しステアリングを自動制御することで、車両を車線内に維持するようにドライバーをサポートする。また、車線逸脱抑制機能は従来からある車線逸脱警報(LDWS)を発展した機能で、60km/h以上で走行中にドライバーの意図しない車線逸脱に対して、ステアリング操作に介入して車両を車線内に戻すようにする。
ADAについて木下氏は「ADAは0km/hから作動するので、特に渋滞中のドライバーの疲労軽減につながる」とそのメリットを述べるとともに、「車線逸脱抑制機能は、従来は警報のみだったものをステアリング操作まで介入して、クルマを元の車線に戻すところまで行ないます。これはアダプディブクルーズコントロールを使用していないときにも動作します」と同機能を紹介した。
また、ADAではドライバーが常に運転に介入できる状態にあるかを監視しており、ハンドルに手を添えているかどうかでそれを検知する。30秒以上の手放しで警報を発し、60秒以上の手放しで警報とともにレーンキープ機能を停止するシステムとなる。
木下氏は「いずれの機能もドライバーによるステアリング操作を的確に認識して、ドライバーの操作を優先します」と、レベル2高度運転支援ということで安全運転の主体はドライバーであることを強調。また、このADAの開発について、木下氏は「一番苦労したのは車線の認識機能です。日本、ヨーロッパ、アメリカと独特のマーキングがありますので精度よく検知できるように仕上げました」と話した。
このほかにも、従来のレーダーに加えてフロントガラスに搭載したカメラとの組み合わせにより、被害 軽減ブレーキの機能を強化した「ABA5」、カメラが前方の光の状況を判断してハイビーム・ロービームを自動的に切り替える「IHC」、カメラで交通標識を認識してメーターのディスプレイ内に表示する「交通標識認識機能」が2019年型スーパーグレートに採用されたことが紹介された。
【訂正】三菱ふそうトラック・バスより、説明会における自動運転レベル定義(SAE)、自動運転技術に関する説明について、レベル1、レベル2に関する表現は「自動運転」ではなく「運転支援」とする訂正がありました。これにより記事初出時の表記から訂正させていただきます。