ニュース

ウエスタンデジタル、業界初の3D TLC NAND e.MMC組み込みフラッシュドライブ「iNAND AT EM132」発表

車載用として「最新の2D MLC NANDの信頼性を超える」

2019年5月30日 発表

e.MMC 車載用組み込みフラッシュドライブ「iNAND AT EM132」

 ウエスタンデジタルコーポレーションは5月30日、自動車業界では初となる64層3D NAND TLCフラッシュ技術を搭載したe.MMC、車載用組み込みフラッシュドライブ「iNAND AT EM132」を発表。発表会では同社オートモーティブマーケティング ディレクターのラッセル・ルーベン氏が登壇し、製品の紹介と、同社の車載ビジネス戦略に関する説明を行なった。

ウエスタンデジタルコーポレーション オートモーティブマーケティング ディレクターのラッセル・ルーベン氏

 今回発表されたのは、同社製3D NANDテクノロジーを搭載する車載用e.MMC5.1組み込みフラッシュドライブ。容量は32GB~256GBで、自動車業界として初めて3D NANDを採用。e.MMCとしてより長い期間の製品供給を可能にするとともに、進化するアプリケーションニーズや拡大する容量要件に対応する。動作温度については、-40℃~85℃(グレード3)に対応するものと、-40℃~105℃(グレード2)に対応するものをラインアップ。提供開始は2019年6月を予定している。

会場に展示された「iNAND AT EM132」。その小ささが分かるだろう

 ルーベン氏は、これからの自動車業界について、「クルマの台数は増えないが、1台あたりのコンテンツが拡大する」と予測する。たとえばインフォテイメントやオーディオといったIVIは、最新のものでは256GBといった製品も登場し、将来実現するであろう自動運転システムについては1TBを超すという予測も紹介した。

車載ストレージの歴史
コネクティビティと自動運転の大きく2つでクルマに要求されるデータ量は増加する
車載ストレージの展望

 自動運転はもう少し先かもしれないが、例えばカーナビの地図の3D化やHD化、アプリケーション、ドライブレコーダー、車載カメラやデジタルのインパネ、テレマティクスなどストレージの利用されるシーンは多様化していくほか、アジアではまだそこまでではないが、欧州では大容量に対するニーズも高いと語る。

車載NAND要件は高度化する

 そうした中で、たとえばカーナビであればデータの読み込みの性能が求められ、ドライブレコーダーであれば書き込みの性能が求められ、デジタルインパネは温度に対する耐性が求められ、テレマティクスならデータ保持に対する信頼性が求められる。そうしたさまざまな要件に対して応えられる製品として今回の製品を開発したと説明した。

カーナビやドラレコなど、使用されるものによって求められる要件や課題は異なる

3D TLC NANDは最新の2D MLC NANDの信頼性を越える

 ルーベン氏によれば「3Dになることは車載にとってとてもいい」と言う。たとえば信頼性という面においても、同社の3D TLC NANDは最新の2D MLC NANDの信頼性を超えるとのこと。というのも、3Dになることでセルの大きさを大きくでき、1つのセルに持つ電子の数を増やすことができる。電子の数が増えれば、例え1つ、2つと電子が飛んでしまっても影響が起こりにくい。さらにセルとセルの隣接干渉も緩和する。こうしたことによってデータ保持期間も長くでき、車載で気になる部分の多くで改善が期待できると述べた。

3D TLC NANDは最新の2D MLC NANDの信頼性を超えるという

 さらに信頼性を上げる技術として、エラーが起こったときに修正するECC(エラーコレクションコード)、エラーが多くなったときにはもう一度書き込む自動リフレッシュ、同じところに繰り返し書き込むのではなく、記録する場所を分散することで耐久性を上げるウェアレベリングなどを紹介。

 また、車載向け機能として、ヘルスステータスモニタリングも紹介。これは、使用環境の温度といった状態や、想定される残り寿命といったデータを読み出すことができる。これは開発時にはもちろん、実際に販売された後でも、例えば寿命が近くなったときには、メンテナンスの必要性をドライバーに伝えて、故障する前にメンテナンスをすることも可能になる。

iNAND AT EM132の概要

 ルーベン氏は「e.MMCのニーズは特に日本においてまだまだある」と述べ、車載用として初の3D NAND e.MMCの登場で供給できる期間が延びるとした。また「信頼性もある。弊社が設計して製造している。品質の高いものを提供できるし、またいろいろな車載向けの機能を入れている。温度管理はデバイスが高温でも壊れないように設計した」と自信をのぞかせた。

同社の車載ストレージのポートフォリオ。転送速度を求められる自動運転システムなどにはUFSが求められるが、依然e.MMCの需要も高いという

 車載するにはマストとなる承認についても、IATF-16949認証を取得。JADEC47準拠は当然として、AEC-Q100準拠、ISO26262のNANDフラッシュ安全機構ガイドライン遵守、PPAP L3文書に適合することを解説。「車載のお客さまは弊社に監査に来るがとてもよい評価をいただいている」と述べ、たとえばドイツのティアワンサプライヤーからは「監査結果による最高のサプライヤー」と評価されたことを紹介した。

車載で要求される承認、準拠にも対応

 最後に、エコシステム連携としてもSoCベンダーと互換性試験を行なっていることを紹介した。「最初に互換性試験を行なうことでティアワンなどがシステムを作るときにトラブルシューティングなく開発できる」とそのメリットを紹介した。また、同社がルネサス R-Carコンソーシアムフォーラムに入っていて、ルネサスエレクトロニクス車の評価ボードで共同デモを実施していることなどを紹介した。特に日本市場においてルネサスは重要であり、大切にしていくと語った。

エコシステム連携も紹介した