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ウエスタンデジタル、3D TLC NANDとして世界初の車載用UFS組み込みフラッシュドライブ記者発表会
書き込み速度は最大550MB/s、読み取り速度は最大800MB/s
2018年10月18日 20:51
- 2018年10月18日 開催
ウエスタンデジタルコーポレーションは10月18日、3D TLC NANDとして世界初となる車載用UFS組み込みフラッシュドライブ「iNAND AT EU312 EFD」を発表した。すでに一部取引先に対してアーリーサンプルの提供が始まっており、大量生産による出荷開始は2018年第4四半期中ごろを予定している。
iNAND AT EU312 EFDは、インターフェイスにUFS(Universal Flash Storage)2.1を採用し、1月に発表されたUFS 3.0も一部に先行対応する車載用の組み込みフラッシュドライブ。現在の車載用組み込みフラッシュドライブで主流となっているe.MMCと比較して「最大2.5倍の性能を発揮する」としており、書き込み速度は最大550MB/s、読み取り速度は最大800MB/s、読み取りIOPSは最大45Kとなる。
AEC(Automotive Electronics Council)で定めるIC(集積回路)の信頼性規格「AEC-Q100」で、使用温度範囲の-40℃~85℃をクリアする「グレード3」、-40℃~105℃をクリアする「グレード2」にそれぞれ準拠する製品をラインアップ。16GB~256GBの5種類の容量が設定され、幅広い用途に対応できるようにしている。
「大容量化」と「高速化」に加えて「高品質化」が求められる
同日に都内で開催された記者発表会では、ウエスタンデジタルコーポレーション 組み込みソリューション シニア・ディレクター オデッド・サギー氏から、新製品についての解説が行なわれた。
サギー氏はこれまでにクルマで使われてきたストレージ製品についての歴史と今後について語り、当初はカーナビの地図情報を格納するため車載用のHDDが使われはじめたが、2020年に市販化される車両では、カーナビに加えて「ディスプレイ」「接続性」「運転」「車両インタラクション」「車両制御」など多岐に渡る分野でストレージが必要とされるようになると説明。クルマに搭載されるようになった数多くのセンサーの情報を使ってADAS(先進運転支援システム)が利用されるようになり、これが将来的に自動運転に発展することになると、車両で扱われる情報量は膨大なものになってストレージでさらに大きな容量が求められるようになるという。
また、車車間通信や路車間通信といったV2X技術がさらに活用されるようになり、マルチエッジコンピューティングなども使われるようになるとストレージに対する要求は大容量化だけでなく、データの読み書きの速度など使われる用途に応じて多様化していくと説明。今後に、車載ストレージで求められるようになる要素の動向として、「大容量化」と「高速化」といった基本スペックに加え、自動運転などに使われるようになった場合はこれまでカーナビで使われていた時よりも高い信頼性が求められ、DPPM(不良率)ゼロを目指す「高品質化」がキーになっていくという。
自動運転などではコネクテッド技術なども活用されるようになるが、必ずしも安定して通信ができるとは限らず、将来的にも人里から離れた山地やトンネル内など通信環境が確保しにくい場所でも自動運転を利用するために、3Dマップなどをローカルとなる車載ストレージに保存しておくことが重要で、収めたデータを保存する耐久性についてもこれまで以上に高めることが必要になるとした。
こうした状況に対応するために発表された新製品のiNAND AT EU312 EFDでは、車載用として世界初となる3D TLC NANDのUFSを採用。セルを積層して容量を高めることが可能な3D NANDは密度を高めることで大容量化を図る2D NANDよりも設計にゆとりがあり、セルの隣接干渉を低減できるほか、セルごとに扱える電子の数も増やすことが可能となっており、信頼性は既存の2D NAND製品よりもいくつかの項目で上まわるものとなっている。これにより、要求要件が厳しくなるオートモーティブ製品に適したものになっているとサギー氏は解説。
また、インターフェイスとして採用するUFS 2.1はさまざまな新しい要件に対応可能となっており、とくにスピードは、現在も多くの車載機器で使われているe.MMCのバージョン4.41の104MB/sから2倍以上となる1440MB/sを実現するなど、これまでの製品から大きく性能向上していることを説明した。
新製品の搭載モデルは、2020年~2021年ごろに出まわるとの予測
このほか、記者発表会ではウエスタンデジタルジャパン プレジデント 小池淳義氏も登壇し、ウエスタンデジタルの歴史や主要ブランドの解説、日本国内での活動、自社が持つさまざまな強みなどについて紹介を行なった。
この中で小池氏は、1999年から続けている東芝との協業により、2017年はNANDビット供給シェアで合計37%を占めており、9月に第6工場が竣工した四日市工場では、製造部門に加えて「メモリ開発センター」を用意。四日市市に対する2002年以降の累積投資額が140億ドルになっているとアピールした。
また、技術開発については「われわれの技術は、絶えず“ムーアの法則”の先を行くものとなっており、コストはもの凄い勢いで下がっております。この20年間でコストを5万分の1を下げることにも成功しております」と語り、微細加工が難しくなる状況を3D化によって打破し、ムーアの法則を継承してこれからもコストダウンを進めていくとコメントした。
2017年に登場した3D NANDは、それまで信頼性をある程度犠牲にしながら微細化を進めてきた2D NANDとは異なり、3D NANDは信頼性をキープしながらの微細化が可能で、現在は生産の8割に達するほどになっていると説明。同日に発表した新製品のiNAND AT EU312 EFDは64層の3D NANDであることも明らかにしている。
記者発表会終盤に実施された質疑応答では、この新製品を採用した車両がいつごろ市場に出てくると考えているかという質問に対し、サギー氏が「一般的な話となりますが、チップセットメーカーでもどんどんUFS対応を進めており、自動車メーカーでもe.MMCからUFSを開発で選ぶ会社が出てきております。こうした背景から察するに、新しいソリューションを搭載したモデルが、2020年~2021年ごろに出まわるのではないかと考えています」と回答している。