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ミシュラン、ドライバー不足対策などを紹介する「MICHELIN MEETING MIE 2019」レポート
ドライバーの本音を引き出す「運送事業者向け診断パッケージ」解説
2019年6月24日 05:00
- 2019年6月21日 開催
日本ミシュランタイヤは6月21日、同社のトラック・バス用タイヤユーザーを対象としたセミナー「MICHELIN MEETING MIE 2019」を、三重県 菰野町にある運送会社 裕進運輸 本社で開催した。
ミシュランでは日ごろからの感謝に加え、自社のトラック・バス用タイヤのユーザーとなる運送会社などを支援し、事業を続けてもらうことで継続的なタイヤ利用を獲得することなどを目的として定期的にユーザーイベントやセミナーを開催。今回はその姿勢を明確化するため、これまで実施してきたタイヤなどの製品展示を行なわず、ミシュランが同じく運送会社の支援を目的に展開している「運送事業者向け診断パッケージ」の紹介などを織り交ぜた内容で実施された。
セミナーではまず、運送業界が抱えている問題点の振り返りやミシュランが提供しているソリューションについて、地区担当セールスである日本ミシュランタイヤ B2Bタイヤ事業部の角田定治氏が紹介。
角田氏は、今後日本では人口が減少していき、2030年に総人口が1000万人減少して生産年齢人口が右肩下がりしていくとの内閣府取りまとめの資料を示し、働き手が増えていかないことを説明。運送業界では2018年1月~11月に「人手不足」を理由とした倒産が前年同期比で23.1%増加しており、従来から見られている「後継者難」「求人難」といった理由に加え、「従業員退職」「人件費高騰」といった現代型の問題が目立つようになってきたと解説した。
この対策として、長期的にはドライバー人口の増加が必要になるものの、当面は現在働いてくれているドライバーに定着してもらうため、ミシュランでは運送事業者向け診断パッケージを運送会社に提供。雇用主である会社に対して直接は言いにくいドライバーの率直な意見を匿名のアンケート形式で吸い上げ、集計を行なって業界平均との比較などをレポート化。現状で会社の強みになっている部分、改善していかなければいけない部分などを明らかにしていくという。また、ミシュランの診断パッケージではアンケートの収集と平均比較に絞り込んでおり、一般的な企業コンサルティングなどと比較して価格を抑制。規模の小さい運送会社でも導入しやすくしているという。
社屋建て替えで社員の帰属意識が大きく向上
角田氏のプレゼンテーションに続き、ミシュランの診断パッケージを実際に利用したユーザーとして、裕進運輸の代表取締役社長である渡部裕之氏が登壇。ここからは渡部社長と日本ミシュランタイヤ B2Bタイヤ事業部 マーケティングディレクター 田中禎浩氏の2人によるトークセッション形式となり、診断パッケージを使った実例が語られた。
渡部社長は診断結果について、まずベテランと若手で仕事に対して求めるもので重視するポイントが異なっている点に驚いたという。若手ドライバーも当然ながら収入やワークライフバランスなどについて重視しているが、それに加えて「達成感」という回答が含まれており、これは予想しておらず不思議に感じたとコメントした。
また、田中氏は他社のアンケート回答と比較して、裕進運輸では自由にコメントを記入できる項目にさまざまな意見が書き込まれていたことが特徴的だったと紹介。これについて渡部社長は、以前に社員とトラックドライバーの社会的地位を高めるためにどうしたらいいか話し合ったこともあり、その時は結論が出ないまま終わったものの、定期的にそのような会話をしていると明かした。
このほか、診断パッケージを利用するようになった後、裕進運輸で独自に社員全員から「10年後に目指したい会社の姿」の意見を寄せ書きのような形で書いてもらい、そこで出た「事務所にカフェがほしい」「トレーニングマシンを置いてほしい」「男女別のトイレを設置してほしい」といった要望を実現するため、社屋の建て替えを実施。
これについて渡部社長は「別に経営で余裕ができたからではなく、建て替え資金は借り入れをしている」と語っているが、田中氏はこの社屋建て替えの前後で、アンケート項目の「会社の一員であることに誇りを感じている」という回答が、52%から77%に大きく向上し、社員の帰属意識が大きく高まったことを紹介した。
トラックを用意すれば、ドライバーと仕事は後からついてくる
トークセッションの後には、自身がトラック5台から興した会社をトラック約190台、全国7か所に営業所を構える規模まで発展させたベストライン 代表取締役社長の辰己千里氏が経営戦略について解説。
辰己社長はビジネスを拡大していくため、運送業界で一般化している常識にとらわれることなく、社員の待遇改善やトラックの増車、経営のIT化などにコストを集中して投入。トラックを大型車両にシフトし、結果的に利益を生まない「やらない仕事」を定めるなど方針を明確化。コストをかけずに大きな効果を見込めるSNSの活用など、コスト管理を徹底してわずかな期間でビジネスを急成長させた具体的な取り組みについて紹介した。
また、運送業界の課題となっている人材確保について、辰己社長は「まとまった台数のトラックを確保することが重要で、後はSNSやホームページなどでしっかりとアピールすればドライバーも仕事もトラックに合わせてついてくる」と説明。これに加え、業務を拡大して社員が増えると問題のある人材が含まれてくるが、事故などを起こさないための体制作りを行ないつつ、恐れずにどんどん採用することが重要だと語った。
セミナーの締めくくりでは田中氏が再度登壇し、「われわれミシュランタイヤのコアビジネスはタイヤです。物流に関しては専門ではありません。ただ、こういった形で物流会社さまと繋がりを持っています。われわれとしても物流業界の皆さまと業界が元気で、より発展していただけることが非常に重要になっていきます。ですので、こうした機会をこれからもご提供させていただきたいと思っています。そして、タイヤメーカーの本分であるタイヤを通して、生産性向上やコスト削減、安全性の確保といった面のソリューションも提供していきます」。
「本日紹介させていただいた診断パッケージによる社員満足度の調査ですが、実はわれわれ自身も社員満足度調査をしています。それは社員満足度が高い会社は、その先にある顧客満足度も高いということがデータ上でも証明されています。なので、顧客満足度を高めて選ばれる会社になるために、リンクしている社員満足度も上げる。そういった部分でも、社員の皆さんがどういったことを考えているのかを知る手段として、われわれの診断パッケージをご検討いただければと思います」とコメントし、ミシュランの診断パッケージが人材確保に加えて顧客満足度アップも期待できるとアピールした。