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東海大学、新型「Tokai challenger」を公開した「2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」参戦発表会
新型「Tokai challenger」がキャンパス内をデモ走行
2019年9月4日 00:00
- 2019年9月3日 開催
東海大学は9月3日、東海大学 チャレンジセンター・ライトパワープロジェクト・ソーラーカーチームが10月13日~20日(現地時間)にオーストラリアで開催されるソーラーカーレース「2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」への参戦発表を行ない、神奈川県平塚市の東海大学 湘南キャンパスにおいて発表会を開催した。
2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジはオーストラリアの北部にあるダーウィンから南部のアデレードまで、約3000kmを約5日間をかけて走破するレース。すでにブリヂストンのテストコースで走行テストを行なっている新型「Tokai challenger」で戦い、2011年以来の優勝奪還を目指す参戦体制を整えたという。
2019年型のTokai challengerは、ボディスタイルで2017年以来の単胴型を踏襲。2017年の参戦時に実現できなかったことや課題だった点を中心にアップデートしたものとなる。ボディは東レの炭素繊維トレカを使い、東レ・カーボンマジックがボディを製作した。ボディサイズは4970×1200×1000mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは1700mm、トレッドは610mm。車両重量は推定140kg。太陽光のみの巡航速度は90km/hで、最高速はレース設定で120km/h、理論値で150km/h。
太陽電池はシリコンタイプで、前回までとはサプライヤーが異なるSunpower MAXEON GEN III SOLAR CELLS。セル変換効率は24.1%、出力は962W、太陽電池面積は3.996m 2 となる。太陽電池の出力は変換効率98.5%の昇圧型MPPTを使い、モーターはミツバのブラシレスDCダイレクトドライブモーターを採用。ベアリングにはジェイテクトのセラミックボールベアリングを使っている。
タイヤはブリヂストンの「ECOPIA with ologic」でサイズは95/80R16。前後左右に4本使用する。前回参戦時よりアップデートされており、構造やゴムを変更し、内圧を少し下げながら転がり性能を上げている。
サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがダブルトレーリングアームでKYBモーターサイクルサスペンションのスプリングとショックアブソーバーを使っている。ブレーキは油圧ディスクブレーキと回生ブレーキを併用している。
今後の参戦へのスケジュールは、今週末に秋田県大潟村のソーラーカー用サーキットに場所を移し、本番を想定したレース運用、タイヤ交換、コントロールポイントの誘導練習を実施する。プリヂストンのコースでの走行テストは行なっているが、秋田のコースは良好に整備されたテストコースとは違って実際のオーストラリアの路面に近い状況となっていることも直前の調整に適しているという。
2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジは10月13日~20日の日程だが、10月12日は動的車検ともにサーキットでのタイムアタックを行なって走行順位を決める予選がある。ソーラーカーの現地への移動は9月下旬から行ない、10月3日からは現地で整備などを行なうが、ぎりぎりまで国内でパーツのアップデートを実施する。
チャレンジセンターの花形プロジェクト
発表会では東海大学 副学長の梶井龍太郎氏がまずあいさつに立ち「ソーラーカーチームがいい成績を挙げて、大学の力を世界に発信していただければ」と希望を述べた。また、ソーラーカーチームは全学の学生に開放したチャンレンジセンターのライトパワープロジェクトとして行なっていると説明。チャレンジセンターが手掛ける40のプロジェクトのうち、花形のプロジェクトになっているという。
梶井氏は、ソーラーカーのプロジェクトが始まったころ、ソーラーカーを輸送中のトラックが火事になったエビソードを紹介。大学側からやめたほうがいいとまで言われたプロジェクトだが、トラブルを乗り越えて世界大会で2度の優勝をするなど実績を上げていることを評価した。
続いてあいさつに立ったプリヂストン ブランド戦略・コミュニケーション本部長の大山和俊氏は「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に協賛する理由を「モビリティの領域でのイノベーションの1つである、より少ない資源でより長い距離を移動すること」だと説明。一方でレースにおけるタイヤの使用条件は「非常に過酷」と説明。「3000kmの走行、目の粗い路面、高い路面温度、大型トラックとの並走による風の影響などがあり、その中で低燃費性能と耐久性が求められる」とし、プリヂストンの低燃費技術とレースのノウハウからそれを実現したことを説明した。
カーボンのボディで協力した東レ・カーボンマジック 代表取締役社長の奥明栄氏は「毎回、8月が近づくにつれ、ハラハラドキドキの時期がやってくる」と話し、それでも間に合ってしまう点については「アイデアが出るたびに日程が押してくる。ですが、ピタリのこの時期に完成させるというマネジメント能力はさすが」と評価した。今回、東レから供給される材料は最新の「M40X」という炭素繊維。ソーラーカーに採用した効果によって、他の製品にも展開を進めたいとした。
車両を公開、27名で戦う
続いて新型Tokai challengerのアンベールが行なわれた。公開された状態は、ソーラーパネルにもカバーがかけられていない本番レースの状態。パネルにはどんな場合でも光を多く吸収するために表面に非常に細かいテクスチャーが施されている。ゴミなどの詰まりを防止するため、走行テストなどでは透明のカバーがかけられているが、今回はカバーを外した状態で展示された。
公開された車両を前に、2019年度からチームの総監督となった工学部 電気電子工学科 助教の佐川耕平氏は車両に使われてる技術やサプライヤーを紹介するとともに、採用する単胴型のボディは2019年に採用が増えていることを紹介した。
佐川氏は過去に2度優勝したことに触れ、「少し、低迷をしています。今年こそは、このソーラーカーで世界のトップを狙いたい」と抱負を語り、ソーラーカーや炭素繊維が特別な技術ではなくなり、社会に普及するための活動をしたいと希望を述べた。
また、ソーラーカーチーム学生代表の工学部 動力機械工学科4年の武藤創(あらた)氏は車両について説明。シミュレーションではなく、実性能の向上がテーマだったとして、車体内部の空気の流れを改善したことを強調したほか、自身が担当した停車区間で太陽電池パネルを太陽のほうに向けるアッパーボディの傾け機構は、タイム的なロスをなくして発電にもメリットがあるとした。
また、太陽電池パネルの配置にも言及。コースの関係から車体の後ろ側のパネルの発電が大きくなるため、ドライバーの位置を220mm前方にし、キャノピーの幅を削るなどして後方に貼る電池を増やして効果があったことなども説明した。
そのほか、マイクロソフト ホロレンズを使ってVR開発へ適用。後方支援として27名の遠征メンバーのほかに、国内に残って気象状況から発電状況を気象衛星からのデータから予測して、エネルギーマネジメントをすることなども説明された。