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F1 イタリアGPで見かけた、チャンピオン獲得40周年マシン「フェラーリ 312T4」
2019年9月7日 00:54
9月6日~8日(現地時間)の3日間にわたり、F1 イタリアGPがモンツァ・サーキットで開催されている。イタリア有数の都市として知られるミラノからほど近いモンツァ国立公園内にあり、F1における多くの歴史を刻んできたサーキットになる。
2019年のF1は全21戦が開催され、F1 イタリアGPは中盤戦終了となる第14戦。ヨーロッパラウンドの最後を飾るグランプリとなり、以降シンガポールGP、ロシアGP、そして10月11日~13日開催の日本GP(鈴鹿サーキット)へとつながっていく1戦だ。
アストンマーティン・レッドブル・レーシング、レッドブル・トロロッソ・ホンダの2チームにエンジンを供給するホンダは、2019年シーズンはすでにレッドブルのマックス・フェルスタッペン選手が2勝を挙げるなど、強力なパワーユニットであることを証明しており、ここイタリアGPでもその活躍が期待されている。
とはいえ、コンストラクターズポイントでトップのメルセデス、前戦となるベルギーGPで優勝したフェラーリも速く、激しい戦いが続いている。高速サーキットとして知られるモンツァでの戦いとなり、各パワーユニットの性能をどれだけ引き出せるかも勝負のポイントになってくるだろう。フェラーリの地元でもあり、トロロッソの地元であるので、そうした地元対決も楽しみなポイントだ。
初日となる6日は、FP1、FP2が実施され、FP1・FP2ともフェラーリの16号車 シャルル・ルクレール選手がトップタイムとなり、フリー走行とはいえフェラーリのこのレースにかける気持ちが強く出るものとなっていた。
開幕前日の準備日にパドックを歩いていて目立っていたのは、40年前の1979年イタリアGPでジョディ・シェクター選手がチャンピオンを獲得した11号車 フェラーリ 312T4が展示されていたこと。ロータス 78から始まったボディによるグラウンドエフェクトを採り入れた、いわゆるウィングカーコンセプトを採用したマシンで、ウィングカーに不利と言われる幅の広い水平対向12気筒を搭載しながらチャンピオンを獲得したマシンだ。タミヤから1/12 ビッグスケールシリーズで模型化されていたので、その独特の形状を覚えている人もいるだろう。
自分自身、この312T4の実車を見るのは初めて。あまりに珍しいので(イタリアでは珍しくないのかもしれないが)しげしげ見ていると、スタッフがおもむろにカウルをはずし始めた。アッパーカウルが外れて現われたのが、ウィングカー独特のモノコックシャシー構成。ドライバーが座るコクピットの幅をなるべく最小にしつつ、下向きの揚力、つまりダウンフォースを発生させる面積を最大化しようという意図が見て取れる。そして同時に分かるのが、リアにある水平対向12気筒エンジンの巨大さ。ライバルの多くはV型8気筒のフォードDFVエンジンを搭載しており、エンジン下部の幅の狭さがグラウンドエフェクトに有利とされており、その不利なエンジンの圧倒的な存在感には感動する。3リッター、12気筒という独自の312系列を発展させ、ドライバー・コンストラクターと2つのチャンピオンを獲得したフェラーリの文化を感じられるものだった。
F1好きな方にはよく知られているように、この前年となる1978年はウィングカーの完成形と言われるロータス 79が圧勝。1979年もロータス1強かと思われたが、アグレッシブなロータス 80は成績が出ず、ロータス 79のエッセンスを取り入れたリジェ JS11が開幕ダッシュ。それをフェラーリ 312T4が追いかけ、後半は新興チームのウィリアムズ FW07が台頭するなど、1979年は印象深いシーズンだった。
F1がレーシングの世界である以上、そのときどきの勝負が一番大切なのは間違いないのだが、実際にサーキットを訪れるとF1が育んだ歴史を強く感じられる。この週末は、日本でもオートポリスでSUPER GT、千葉県でレッドブル・エアレースとビッグレースが開催されるが、メルセデスやフェラーリと戦いを繰り広げるレッドブル/トロロッソ/ホンダの戦いにも注目していただきたい。