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パナソニック、5Gの通信性能を“クルマまるごと”測定できる国内最大級の大型電波暗室公開
2分間で200周波数ポイントを同時測定
2019年9月19日 18:49
- 2019年9月19日 公開
パナソニックは9月19日、神奈川県横浜市の同社敷地内にある5G(第5世代移動通信方式)の通信性能の測定をターゲットとした大型電波暗室を報道関係者向けに公開した。
パナソニック SN エバリュエーションテクノロジーが管理するこの電波暗室は、コネクテッドカーや自動運転の車両などの通信に今後は5Gが利用されるようになるとの予想から、車両をまるごと設置して通信性能を測定できる設備として用意されたもの。電波暗室としては国内最大級になるという。
建屋内に21×29×9m(幅×奥行き×高さ)のスペースを備え、壁面と天井に四角錐状の電波吸収体を設置。フロアにはターンテーブルも設置され、水平方向にも移動可能な8mのタワーに設置された計測器で測定を実施。測定半径は最大7mで、200周波数ポイントを同時に測定可能。ターンテーブルに設置した車両を回転させつつ計測器を設置したタワーを上下・前後に移動させることで、2分間に7万2000ポイントの半球面無線性能評価を行なえる。
車両用電波測定システム概要
電波暗室寸法:21×29×9m(幅×奥行き×高さ)
タワー高さ:8m
測定半径:0~7m
周波数:700MHz~9GHz、28GHz帯(これ以外の周波数対応も可能)
同時測定:200周波数ポイント
偏波:垂直偏波、水平偏波
測定角度(水平角):0~359度、1度ステップ
測定角度(仰角):0~90度、1度ステップ
当日は電波暗室の施設が紹介されたほか、約2分で行なわれる半球面無線性能評価のデモンストレーションも行なわれた。
電波暗室の公開に先立って行なわれた説明会では、パナソニック オートモーティブ社 開発本部 プラットフォーム開発センター 所長 和田浩美氏から設備概要などが解説された。
和田氏は高速通信、低遅延、多数同時接続などの特長を持ち、さまざまなサービスでの利用が見込まれる5Gは、2020年ごろの製品化に続き、2022年をめどに車載化が始まるだろうとの見方を示し、これに向けて製品開発を本格化する段階になっていると解説。
一方、車載機器のアンテナは車体の金属によって影響されやすいことに加え、5Gでは割り当てられた28GHzなどの高周波帯は電波減衰の影響を受けやすく、またこれまではエンターテイメントなどを中心に活用されてきた通信が、5G時代には自動運転やADAS(先進運転支援システム)などにも活用され、これまで以上に通信の安定性が重要視されることになる。
また、5Gでは複数のアンテナを利用する「MIMO(multiple-input and multiple-output)」や「ビームフォーミング」などを使って大容量通信を実現することから、車載した5Gアンテナが車体による電波の反射やほかの車載機器が放出する電磁波のノイズなどからも影響を受けやすい。こうした問題の解消にも積極的に取り組むため、新たに公開された電波暗室では「MIMOアンテナの通信性能評価」、「ビームフォーミングアンテナの通信性能評価」にも対応。さまざまな性能評価を効率よく行なうことが可能となり、将来的には自動車メーカーの新車開発時に、車両デザインの初期段階から電波暗室を使って共同評価を実施。デザインと通信性能を両立する新型車開発に貢献するとしている。