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【F1日本GP 2019】トロロッソ・ホンダでFP1に出走する山本尚貴選手。「思い出作りではなく、巡ってきた機会を生かすために走る」
エクソンモービルの新燃料を投入と田辺テクニカルディレクター
2019年10月10日 23:44
- 2019年10月11日~13日 開催
10月11日~13日の3日間にわたり、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で「2019 FIA F1世界選手権 シリーズ第17戦 日本グランプリレース」が開催される。
10月11日の10時から11時30分に行なわれる予定のFP1(Free Practice 1、練習走行1回目)には、ホンダの契約ドライバーである山本尚貴選手が、トロロッソ・ホンダのドライバーとして参加する。
練習走行の時間帯とはいえ、2014年の最終戦のレースに参戦した小林可夢偉選手以来、日本人ドライバーが公式セッションを走ることになるため、大きな注目が集まっている。
開幕前日となった10月10日の鈴鹿サーキットでは、そうしたトロロッソ・ホンダのドライバーである山本尚貴選手と、ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏による会見が行なわれた。本記事ではそうした2人の会見をお届けする。
FP1に出るのは思いで作りではない、めったに巡ってこないチャンスを生かすためにファンの期待を背負って走る
──今の気分は?
山本選手:気分ですか? いくら時間があっても、頭があっても足りないぐらい、楽しんではいるのですが、鈴鹿の経験は沢山あるとはいえ、F1の実走での経験はまったくないので、できる限りの準備をしようと今がんばっている最中です。本当に時間が過ぎるのがあっという間という感じですね。
──正式に決まってからここに来るまでの作業は、チームとはどういう作業をしてきたのですか?
山本選手:チームとの作業はもう現場に入ってからなので、昨日(10月9日)の午後にサーキットに入ってからチームとミーティングしてという感じですけど、それまでは普通にしていました。
──チームとはどういう話をしていたのか?
山本選手:自分が乗るFP1のプログラムについてです。僕の最大の利点はホンダのエンジニアさんと日本語で細かく会話ができるということですが、F1の経験はないので、僕が学ばないと行けない作業というのはゼロからのスタートではあるのですが、日本語でコミュニケーションができるため、細かいところまでの作業が詰められるので、明日90分だけですが、何かこうホンダのためにも、チームのためにも有益のデータを残すことができればいいなと思っています。
──今日はスーパーフォーミュラの時以上に笑顔が見られたと思うのですが?
山本選手:そうですね、スーパーフォーミュラはスーパーフォーミュラでチャンピオンシップかかってますので、置かれている環境やプレッシャーも違います。当然このチャンスは自分の人生を大きく左右する舞台にはなるんですけど、やっぱりチャンピオンシップがかかっているのではないという意味ではそこまでナーバスになるとか緊張することもない。むしろ、このFP1のために、沢山の方が来てくれると思いますし、今日もすでに木曜日の段階でこんなにも多くのファンの方が来てくれて、なおかつ山本選手、山本選手と声をかけてもらえたので、すごくうれしいですし、そういった方々の声援に応えるためにも自然と笑顔になっていたのかなと思います。
こんなチャンスはめったにないと思うし、こんな気分でサーキットにこれることもめったにないと思うので、思いっきり楽しみたいなと思って過ごしてはいますけども。ただ、明日朝起きたら、そうも言ってられないかな、とは思っています。
──今日はチームとどういう仕事をしたのでしょうか?
山本選手:FP1に向けてのプログラムの確認とF1マシンに乗ったことはないのですけど、なるべく乗る前に準備をするためにどういう形でPUをマネージメントしたほうがいいかとか、車体側のこれまでの課題点とか、去年の鈴鹿と比較して今回の鈴鹿がどうなるのかというのを事前にいろいろ話を聞いていました。当然FP2からピエール(ガスリー選手)が乗るので、ピエールとFP1、FP2全体を見てプログラムの確認を話しました。
──コースウォークしていましたが、いつもと違う見え方とかありましたか?
山本選手:きれいですね。看板も全部リニューアルされているし、縁石と縁石の外のランオフエリアも綺麗にされているし、人工芝も綺麗に緑にペイントされているなど新しいサーキットみたいに見えて、常にこういう感じで走れたらいいなと思いました(笑)。そういった所もすべて新鮮に映りました。
あとは国内で走ってるからトラックウォークをしなくてよいわけではないですが、これだけ大きく1年の中で変わることもないですし、今、ほかに重きを置いた方がよいことも沢山あるので、トラックウォークしている選手は実はそんなに多くはいないんです。
特に僕は鈴鹿はよく知っているので、このコーナーは右かとか、これだけバンクがついているとかの確認の作業はする必要がない。それよりも改めて自分と一緒に仕事をするチーフエンジニア、パフォーマンスエンジニア、PUエンジニアとみんなで一緒の時間を過ごして1周5~6kmをその時間をずっとクルマについて語りながら、歩けたというのは一番ゆっくり時間を過ごせたと感覚的には思っています。
パドックで過ごすとざわざわしている感じがあって、唯一誰にもじゃまされないレースのことに集中できる瞬間がトラックウォークだったなと。
──ピエールとは何か話をしましたか?どんなような話をしたのでしょうか?
山本選手:話はしましたが、具体的にクルマの話をしたりまではしていないです。彼もFP2からレースに向けての話をしないといけないし考えないといけないので、僕のために時間を割くということは彼も思わないでしょう。僕も彼にそんなにストレスをかけたくないという想いが正直あるので。これからミーティングありますので、そういうところでピエールと話をすることになると思います。
──ピエールと再びチームメイトになった訳ですが?
山本選手:正直やりやすいですよ。彼がどんな人か分かってますし、彼も僕のことを分かっているし、初めましてといってこう会話を重ねるのではなく、あらかじめもう知ってる仲なので、非常にやりやすいですね。
──カーナンバーはどうして選ばれたんですか?
山本選手:あれはFIAからチームにそれぞれ渡されている中でトロロッソに割り当てられているものを使っています。
──ピエールは2年前と変わったところはありましたか?
山本選手:良くも悪くもあまり変わっていないというのが正直なところです。ピエールは、ピエールなので(笑)。幼稚園生から小学生とかなら変わるかもしれませんが、もう大人になったらそれなりのパーソナリティが構築されていると思いますし。相変わらずよいドライバーだと思います。
──縁がありますね?
山本選手:そうですね、まさか2年前にここでF1マシンをシェアする状況になるとは僕だけでなく誰も思っていなかったと思うので。でも考えてみれば、なんか(その頃から)いろいろ始まっていたのかなと。
彼のドライビングスタイルも分かっているから、自分が今、自分用にFP1をセットアップすることはもちろん大事なんですけども、今のところラン数が限られていて、限られたラン数の中で自分好みにセットアップするというよりは、今チームが持っているセットアップでまずF1を知ることが大事だし、そこからセットアップをガチャガチャ変えるということよりも、ピエールが乗るために、彼はどちらかというと、こうアンダーステア気味の車を好むので、まぁそういうのも分かっているから、今のクルマの状況ならピエールがうまく走れそうだとか、分からないですが、そういうのは方向性としては持っていけるかもしれないですよね、まったく知らないドライバーよりは。
──GTとかSFとか戦いながら、ドイツやベルギーへ行ったりと、忙しくしていましたが、体調とかコンディションの方は大丈夫でしょうか?
山本選手:いつも準備はしているつもりなので大丈夫です。
──楽しみにしている半面、クルマを壊せないというプレッシャーも大きいのではないでしょうか?
山本選手:レーシングドライバーとしては壊してもいい状況といのはどこにもないと考えています。これが明日、ピエールが乗ろうが乗るまいが、チームが大切に作ってきたクルマなので、壊すわけにはいかないと。だけどレーシングドライバーは常にリスクを背負いながらギリギリを攻めていかないといけないし、攻めた先にクルマを壊すようなことがあってもそれをしっかりと見届けてくれるチームがいれば、責められることはないと思います。
ただ自分が置かれている状況を考えれば、当然クルマを壊すわけにはいかないし、だけど皆さんに求められていることもよく分かっているし、僕も思い出作りでF1を運転することだけだったら普通に運転はできるんですが、そのため(思い出を作るため)にここに来ている訳ではないし、90分という限られた時間で、90分といいながら90分走れる訳ではなくて、90分の枠の中で、実質3ラン、インストレーション合わせてプランが4ランで、タイヤのセット数も決まっている中で、チームが作ってきたプログラムにリクエストしてちょっとでも自分がクルマを習熟できるような枠を作ってくれているので、その中で自分がどうできるか(が大事になってくる)。
時間があって練習できれば速く慣れる人は沢山いると思うのですが、そうも言ってられないし、この限られた時間の中で習熟度が高くて自分のモノにできるかということが、また1つドライバーとして求められていると思っているので、それが明日できるかできないかというのが自分の実力だと思います。
とはいえ、せっかくこうしてチャンスをいただいたし、こんな機会はなかなかもらえるものではないし、乗りたいと言ってもライセンスポイントの問題もあるし、それを認めてくれるチームとバックアップがなければならないので、皆さんに感謝しつつ、やっとくることができたので、思い切って楽しみたいなと思っています。
──明日先頭でコースインするプランはありますか?
山本選手:それは今初めて言われて、そうした方がいいのかな?と……(笑)。ただ、頑張って一番最初に出たくてもピットボックスが先頭の方ではないので(笑)。本当に沢山の方が明日来てくださると思うので、その方達の為にも本当にいい走りをしたいなと思いますし、土曜日が台風でスケジュールも含めて皆さんの来場する足が心配ではあるのですが、日曜日は今のところ予報が晴れになっているので、いい日本GPになるように、金曜日まずは温められるようにいい走りをしたいです。
──明日一番大切だと思うことはなんですか?
山本選手:何が一番大切か……一言では表わせない、思いはいろいろあるのですが、レーシングドライバーは結果がすべてなので、今言うと後で言い訳になってしまうので……走りで期待に応えたいなと思っています。
パワーアップを引き出すエクソンモービルの新燃料に、ホンダの先端技術研究所が開発協力
引き続き、ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏による会見が行なわれた。この中で田辺氏は今回の日本GPに使用するスペック4と呼ばれるホンダのパワーユニットは、ベルギーGPに投入されたスペック4と同じ仕様だが、レッドブルの燃料サプライヤーであるエクソンモービルが提供している燃料が、本田技術研究所の先端技術研究所も開発に協力した新しい燃料になっていることを明らかにし、それによるパワーアップが期待できるとした。
──それでは最初に田辺さんから一言お願いします。
田辺氏:2019年のレースを戦って来て、ホンダとしてのホームレースに帰って来ました。今年、トロロッソに加え、レッドブルにも供給して、4台で戦ってきた。優勝も経験することもできました。まだまだメルセデス、フェラーリには差をつけられていて、特に直近の4戦ではフェラーリがパフォーマンスを上げてきています。そんな中でのホームレースでよい結果を出せるように全力で戦いたい。
PUに関してはベルギーに投入したスペック4で基本的には同じモノを利用します。その中で1つ新しい要素として入ってくるのが燃料。レッドブルとホンダは、エクソンモービルと仕事をしているけど、本田技術研究所の先端技術研究所からの助力を得て、我々のエンジンの燃焼にあったものを投入する。
以前は鈴鹿に向けて鈴鹿スペシャルを投入するという話もありましたが、今はレギュレーション上それは難しい。そこで、新しい燃料を投入ということになった。チームメンバー一丸となって精一杯戦うという意味で、その意味では鈴鹿スペシャルになっています。ホンダにとっての鈴鹿スペシャルの意味をチームのみんなに理解していただき、エンジニア、メカニック強い思いで今週末を戦っていきたいです。
また、現在台風が近づいてきている状況で、避けようがない状況になっています。セッションが短くなってしまうことも想定されていますが、決勝は台風一過で行なえる見通しで、その前のセッションが短くなる分、密にセッティングを行ない備えていきたいです。
また、今回は明日のFP1で山本尚貴選手が走行します。日本の選手が日本でのグランプリで走ってくれることをうれしく思っています。
──本田技術研究所も協力した燃料について教えてほしい。
田辺氏:本田技術研究所の中に、二輪と四輪の将来の技術を研究している先進技術研究所という部署があり、いろいろなエキスパートがそこにいます。オールホンダでF1に取り組むという取り組みの中で、先進技術研究所の燃料を研究しているエキスパートに、エクソンモービルさんとの共同開発の中に入ってもらい、燃料とオイルの開発を昨年から行なっていました。
ホンダにはモビリティも、ジェットも、クルマもあるという中で、先進技術研究所は将来どんな技術が必要かを研究しています。新しい燃料は素材も違い、レギュレーションで定められた範囲内で配合などを工夫しています。
これまでのMGU-Hやターボにジェットエンジンの開発技術を入れたというお話しをさせていただきましたが、それと同じような取り組みが燃料でも行なわれたとご理解いただければ。
──それは具体的にパワーアップしたのでしょうか?
田辺氏:詳細な数字は申し上げることはできませんが、パワーアップが認められたということで投入を決めました。
──ロシアでクビアト選手にでたトラブルの原因はワンオフか恒久的なものか判明したのか?
田辺氏:今のところワンオフの問題であるという結論になっている。なぜワンオフが起きたのかということに関してはまだ分かっていない。今年の初めから使ってきたのに、今回の1つにだけ出たということは懸念として残っているが、全部に波及するような状況ではないです。
──ということは再発の可能性は払拭できない?
田辺氏:それはそうです。ただ、シーズン始めから4台走らせてきて一度もでていないトラブル、スペック4由来ではないです。
──土曜日に台風が来ると、FP3が中止になる可能性があるがその影響は?
田辺氏:それを見越した上で明日走るしかないです。なくなってしまうのは痛いですが、それはみな同じ条件なので。
──山本尚貴選手がFP1で走りますが、彼からのフィードバックはどれくらい有益ですか?
田辺氏:非常にありがたいのは日本語で直接コミュニケーションが取れることです。日本語って細かい表現ができる言語で、「ちょっとその辺りがそんな感じ」とか表現ができます。ぜひ山本選手には沢山フィードバックしてほしいです。
──山本選手にアドバイスは?
田辺氏:それはないです(笑)。今日の段階で最終ブリーフィングして、明日どういう走りだしをするのかなどのミーティングをしています。覚えることで、頭一杯になっちゃったと言ってましたよ(笑)。(テスト走行なく)いきなり本番のフリープラクティスは決して楽ではないですが、きちんと準備を進めているので大丈夫だと思います。
──鈴鹿に対してスペシャルという表現をされていたが、現実的な目標は見えているのか?
田辺氏:いつも同じことの繰り返しで申し訳ありませんが、目標は「いけるところまでいく」です。4台完走して4台ポイントを取る。そしてスタッフとして走らせている人間がミスなく、パワーユニットを最適に使ってドライバーに気持ちよく走ってもらいたいです。