ニュース

【SGT×DTM交流戦】クラッシュ多発、ドラマティックなレースを制したのは「64号車 Modulo Epson NSX-GT」のナレイン・カーティケヤン選手

DTM勢のBMW、アウディが2位、3位に

優勝したナレイン・カーティケヤン選手(64号車 Modulo Epson NSX-GT)

 11月22日~24日の3日間にわたり「SUPER GT×DTM 特別交流戦」(以下、特別交流戦)が、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されている。この交流戦は日本のSUPER GTと、ドイツのシリーズであるDTMが長い時間をかけてレギュレーションを統合してきた成果として初めて両シリーズが日本で戦う歴史的なイベントとなる。ドイツからはアウディが4台、BMWが3台の合計7台が来日し、SUPER GTからエントリーしている15台のGT500マシンと同じフィールドでレースが行なわれた。

 11月24日はレース2の予選、決勝が行なわれ、64号車 Modulo Epson NSX-GTを駆ったナレイン・カーティケヤン選手。今シーズンからSUPER GTに「デビュー」した大ベテランのカーティケヤン選手は、シリーズ章典外のレースとはいえSUPER GTのレース初優勝。同チームの優勝も、2017年の鈴鹿1000kmレース以来となる。

 土曜日のレースではやや劣勢だったDTM勢も、レース2ではセッティングを富士スピードウェイの路面に合わせてきて大きくパフォーマンスを向上させ、SUPER GTとガチンコのバトルが展開されるレベルに引き上げられていた。最終的にマルコ・ウィットマン選手(11号車 BMW M4 DTM)が2位、ロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)が3位となり、DTM勢とSUPER GTがガチンコバトルが展開された。

 レースは3度のセーフティカーが出るという大波乱のレースで、最後のセーフティカーが出るときにはホンダ同士、トヨタ同士というシーズン中であればあり得ないような同メーカー間での接触が発生するなど荒れたレースになり、誰もが想像できないくらいエキサイティングなレースになった。

予選直後に引退発表した中嶋大祐選手がポールポジション

 レース2の開催日となる日曜日の天気は朝まで雨が降り続いているものだった。午前中の予選では雨は上がっているものの、コースは濡れており、各車ともウェットタイヤで予選に臨むことになった。予選でトップタイムをマークしたのは中嶋大祐選手(16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT)。16号車は金曜日のテストで大クラッシュし、急遽車を仕立て直して参戦することになったため、トップタイムをマークしたものの5グリッド降格が決まっており、6番手スタートになった。なお、中嶋大祐選手は、このレースを最後にレース活動からの引退を予選後に発表した。

 2番手タイムをマークしたのはロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)で、中嶋選手のペナルティでポールポジションを獲得することになった。3位はナレイン・カーティケヤン選手(64号車 Modulo Epson NSX-GT)で、前出の通り中嶋選手はペナルティとなるため、2位に繰り上がりフロントローからスタートすることになった。

 以下、予選4位で3番グリッドからスタートすることになったのは山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)で、予選5位で4番グリッドからスタートすることになったのはレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sports RS 5 DTM)、予選6位で5番グリッドからスタートすることになったのは塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)となり、6位までのうち4台をホンダNSX-GTが占めるなどしており、ホンダ勢の優勢が見て取れる結果となった。なお、BMW勢の最上は7位のマルコ・ウィットマン選手(11号車 BMW M4 DTM)、トヨタ勢の最上位は9位の平川亮選手(37号車 KeePer TOM'S LC500)、日産勢の最上は17位の松田次生選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)となった。

アウディ ブノワ・トレルイエ選手が最初のセーフティーカーでタイヤ交換。ギャンブルにでる

密集隊形でのスタート

 今回の交流戦では、スタートはローリングスタートとなっているが、通常のSUPER GTの1台隊列のローリングスタートとは異なり、インディカー方式と呼ばれる2台隊列の密集状態でのローリングスタートが採用されており、セーフティカー明けのローリングスタートも含めて非常にエキサイティングなシーンが何度か見られた。

 ポールポジションからスタートしたロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)が2位からスタートしたナレイン・カーティケヤン選手(64号車 Modulo Epson NSX-GT)を抑えたままトップを維持して1コーナーに入っていったが、早くも2周目のストレートではカーティケヤン選手がスリップから抜け出すと、1コーナーのアウトサイドからデュバル選手を豪快にオーバーテイクして首位に上がった。それには3位からスタートした山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)も続き、さらには4位を走っていた中嶋大祐選手(16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT)、塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)も続きホンダNSX-GT勢が1-2-3-4というフォーメーションを構築した。ホンダは来年からのクラス1規定では、NSX-GTをミッドシップからFRにエンジンの搭載方法を変更することを既に決めており、ミッドシップのNSX-GTでのレースはこれが最後となっており、そのレースで非常に力強いレースを展開していた。

 7周目にロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)の左リアタイヤがバースト。これでデュバル選手はスローダウンしてピットに入ることになり、トップ争いからは脱落することになるかと思われた。ところが、そのデュバル選手のカウルの破片がコースに転がったため、安全を期してセーフティカーが9周目に導入されることになった。この時のセーフティカータイミングで、ちょうどよくピットに入ったのが、アレッサンドロ・ザナルディ選手(4号車 BMW M4 DTM)とブノワ・トレルイエ選手(21号車 Audi Sports Japan RS5 DTM)で、特にトレルイエ選手はセーフティカーの隊列の後ろから入ったため、大きな遅れにならず、ルーティンのピットストップをこなすことが可能になった。

 最終的にレースは30周を超える周回になると考えられているので、この周回で入ることで、最後までタイヤを持たせることができるのか?、それがレース展開に大きな影響を与えることになるとこの時点では考えられた。

アウディのレネ・ラスト選手の左リアタイヤがバースト、再びセーフティカー

 11周目にセーフティカーがピットに入りレースが再開されると、このセーフティカーではピットに入らなかったトップ勢は、ブノワ・トレルイエ選手(21号車 Audi Sports Japan RS5 DTM)やアレッサンドロ・ザナルディ選手(4号車 BMW M4 DTM)、ロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)など既に一度ルーティンのピットストップ(今回のレースではDTM方式で最低でも一度タイヤ交換のピットストップが義務づけられている)を終えて義務を紹介しているドライバーとの差を広げられるかどうかが注目されることになる。

 実際レースが再スタートすると、タイヤを交換したトレルイエ選手は、新しいタイヤを生かして見る見る順位を上げていく。トップを走っていたナレイン・カーティケヤン選手(64号車 Modulo Epson NSX-GT)がピットストップを終えると、それまでトップを走っていたカーティケイヤン選手に実に40秒近い差をつけており、このまま何もなければトレルイエ選手の優勝は堅いという状況が出現していた。

 だがそうはならなかった。トレルイエ選手のリードのまま終わるかと思われた19周目、トレルイエ選手のチームメイトであるレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sports RS 5 DTM)の左リアタイヤがバーストする。これにより2回目のセーフティカーが導入される。トレルイエ選手はステイアウトを選択し、そのまま走り続ける選択をする。この時点で4位にいた山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)は逆にピットインを選択し、新しいタイヤにして勝負をかけたのかと思われたが、実はこの時山本選手のタイヤはパンクしており、実は緊急ピットインだった。このため、山本選手、ラスト選手は周回遅れになるが、セーフティカー期間中にはバックマーカーはリードラップに戻ることができるという規定が採用されているため、再びリードラップの最後に戻ることができた。

ホンダ勢、トヨタ勢が同士討ち。トップにたった64号車 Modulo Epson NSX-GTのカーティケヤン選手が優勝

 25周目にレースはリスタートした。今日3回目の1コーナーこそ、特に何もなくブノワ・トレルイエ選手(21号車 Audi Sports Japan RS5 DTM)がトップを維持していたが、続くコカコーラコーナーでは、塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)と野尻智紀選手(8号車 ARTX NSX-GT)が禁断の同じメーカー同士での激しい接触をしてしまう。塚越選手、野尻選手ともにコースサイドに車を停めることになった。

 だが、同一メーカー同士の同士討ちはこれで終わらなかった。続くダンロップコーナーではレクサス勢のほとんどの車両を巻き込むマルチクラッシュが発生、これにより中嶋一貴選手(36号車 au TOM'S LC500)、石浦宏明選手(38号車 ZENT CERUMO LC500)がその周でリタイア、さらに平川亮選手(37号車 KeePer TOM'S LC500)、大嶋和也選手(6号車 WAKO'S 4CR LC500)は走り続けたが大きく遅れることになってしまった。

 その結果もう一度セーフティカーが導入されることにあり、今日3度目のセーフティカーとなった。その直前に、タイヤが最後まで持たないとみたのか、トレルイエ選手、アレッサンドロ・ザナルディ選手(4号車 BMW M4 DTM)などはタイヤを交換し、大きく順位を下げることになった。その後セーフティカー状態のまま残り1周までいったことを考えると、タイヤ交換せず走り続ければ優勝が見えていただけに悔やまれる判断となってしまった。

 結局レースは残り1周でセーフティカーがピットに入りレースが再開されることになった。順位は1位がナレイン・カーティケヤン選手(64号車 Modulo Epson NSX-GT)、2位が2回目のセーフティカー明けの大混乱で順位を上げたマルコ・ウィットマン選手(11号車 BMW M4 DTM)、3位がセーフティカー導入直前に小林可夢偉選手(00号車 BMW M4 DTM)との激しいバトルを繰り広げてやや強引に順位を上げたロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)。この最後のローリングスタートはインディカー方式ではなく、通常のSUPER GTでの1列隊列方式で、これによりカーティケイヤン選手が有利になった。実際、リスタートでカーティケイヤン選手は確実に後ろを押さえ、結局そのままトップでゴールした見事優勝した。

ナレイン・カーティケヤン選手は、確実なドライビングで後続を抑え優勝

 その後方ではウィットマン選手とデュバル選手の熱い戦いが繰り広げられ、最終コーナーではウィットマン選手とデュバル選手が当たらんばかりにアウトにいき、デュバル選手はコース外を走る。それでも速い旋回速度で回ることができたデュバル選手がウィットマン選手をオーバーテイクしてゴールした。しかし、これはコース外を走ってメリットを得たとして、レースディレクターから1秒のタイム加算が通知され、最終的にウィットマン選手が2位、デュバル選手が3位という結果になった。

 4位は一度は周回遅れとなった状態から追い上げた山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)、5位は小林可夢偉選手、6位はこのレースが最後のレースとなる中嶋大祐選手(16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT)となった。レクサス勢のトップは8位の平川亮選手、日産勢のトップは11位の松田次生選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)となった。

パルクフェルメに到着。ガッツポーズのナレイン・カーティケヤン選手
チームメイトの牧野選手やスタッフと喜び合う
表彰台のナレイン・カーティケヤン選手と、中嶋悟監督
DTMを運営するITRのチェアマン ゲルハルト・ベルガー氏(右)から、中嶋悟監督(中央)にトロフィーが授与された
2位はBMWのマルコ・ウィットマン選手、3位はアウディのロイク・デュバル選手
BMWの応援団
アウディの応援団
表彰台を見つめる、アウディ、SUPER GT、ホンダのスタッフ
SUPER GT×DTM 特別交流戦 レース2結果
順位カーナンバーマシンドライバー周回数タイム
164Modulo Epson NSX-GTナレイン・カーティケヤン3157分38秒362
211BMW M4 DTMマルコ・ウィットマン3157分39秒927
328BMC Airfilter Audi RS 5 DTMロイク・デュバル3157分40秒187
41RAYBRIG NSX-GT山本尚貴3157分41秒774
500BMW M4 DTM小林可夢偉3157分42秒105
616MOTUL MUGEN NSX-GT中嶋大祐3157分42秒718
799Akrapovic Audi RS 5 DTMマイク・ロッケンフェラー3157分42秒898
837KeePer TOM'S LC500平川亮3157分43秒043
933Audi Sports RS 5 DTMレネ・ラスト3157分43秒986
1021Audi Sports Japan RS5 DTMブノワ・トレルイエ3157分45秒588
1123MOTUL AUTECH GT-R松田次生3157分45秒904
1224リアライズコーポレーション ADVAN GT-R高星明誠3157分45秒997
134BMW M4 DTMアレッサンドロ・ザナルディ3157分46秒042
1439DENSO KOBELCO SARD LC500ヘイキ・コバライネン3157分47秒312
156WAKO'S 4CR LC500大嶋和也3157分47秒673
1619WedsSport ADVAN LC500国本雄資3158分27秒672
1712カルソニック IMPUL GT-Rジェームス・ロシター2647分01秒590
183CRAFTSPORTS MOTUL GT-R平手晃平2647分18秒722
1936au TOM'S LC500中嶋一貴2647分28秒165
2038ZENT CERUMO LC500石浦宏明2647分32秒076
2117KEIHIN NSX-GT塚越広大2545分09秒968
228ARTA NSX-GT野尻智紀2545分10秒856