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STI、米国向けチューンドモデル「S209」をSTIギャラリーに展示。STIのチャレンジとエラーの企画展

次期型「レヴォーグ STI Sport」について開発中とSTI 平岡社長

2020年7月4日 再開

2019年に発売された米国向けチューンドモデル「S209」。限定209台ですぐに完売となった

 STI(スバルテクニカインターナショナル)のショールームとなる「STIギャラリー」(東京都三鷹市大沢)。ここ数か月展示公開を休止していたが、7月4日から一般公開を再開した。再開にあたって、新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインに対応した運営を行なっており、当面は土曜日と日曜日の10時~17時のみの営業。入館時には手指消毒、入口と出口は専用のものとなるなど、新たな取り組みを実施していた。

 再開初日となる7月4日、「STIギャラリー」を訪ねてみた。

米国向けチューンドモデル「S209」を展示する企画展示「TRY&ERROR 創造の軌跡」展

再開初日のため、スバルテクニカインターナショナル株式会社 代表取締役社長 平岡泰雄氏もSTIギャラリーを訪ねていた

 STIギャラリーの再開初日ということもあり、STI代表取締役社長 平岡泰雄氏に話を聞くことができた。

 再開時の企画展として選ばれたのが「TRY&ERROR 創造の軌跡」。これは本来4月1日から行なう予定だったのもので、STIの挑戦と失敗の歴史、チャレンジとエラーを紹介していく。WRC(世界ラリー選手権)やニュルブルクリンク 24時間耐久レースでのチャンピオン獲得など過去の輝かしい展示を行なうとともに、現在を代表するSTI車である米国向けチューンドモデル「S209」を展示。S209は、米国仕様WRX STI専用の水平対向4気筒 DOHC 2.5リッターのEJ25エンジンをベースに歴代STIモデル最高となる341HP(PS換算で約345PS)の出力を発生。ニュルブルクリンク24時間レース参戦車で実証されたストラットタワーバーやドロースティフナーといった各種のSTI専用パーツで車体の反応を高めている。

 スバルでEJ20エンジンなど各種エンジンを開発、スバルの技術畑を歩み、現在はSTI社長として新たなコンプリートカー開発に取り組む平岡氏に聞いたところ、このS209はSTIとして初めての北米専用車として開発され、性能を高めるとともに環境性能規制、安全規制などの各種規制をクリアしていくチャレンジを行なったとのこと。とくにお気に入りの部分が、リアに装着しているSTI製フレキシブルドロースティフナー(リヤシートバック)であるという。

「フレキシブルドロースティフナーなどはボディのガタ取りに使っていくのですが、リアのフレキシブルドロースティフナーはコーナリングがとてもよくなる。装着車と非装着車で乗り比べなどを行なったが、こんなに差が出るものとは思わなかった」とのこと。WRX STIのボディはボディ剛性がしっかりしていることで知られているが、フレキシブルドロースティフナーで入力に対する反応がさらによくなるという。また、フレキシブルドロースティフナーで左右の後輪への力の伝わり具合を接続することで、例えば左コーナリング時に外側後輪(リアライト)だけでなく、内側後輪(リアレフト)にも力を伝達。内側のタイヤのグリップもこれまでより活用できるとのことだ。

シンプルながら迫力のある外観となっているS209
北米仕様のため、運転席は左
EJ25エンジンをベースにチューンドアップ
リアシート側から見たフレキシブルドロースティフナー。平岡社長も絶賛
こちらはラゲッジルーム側から見たところ。ドロースティフナーを保護するためのガードバーが取り付けられている
開発に成功したもの
こちらはエラー品
アイデアスケッチ
ドロースティフナーの展示の横には辰己さんの言葉もあった

 通常の展示会と異なるのは、S209の開発過程において発生したエラー部品が展示されていること。開発でどれだけの挑戦を行なったのか、「TRY&ERROR 創造の軌跡」というテーマのもとに展示されている。部品だけでなく開発過程のアイデアスケッチも展示されており、STIがどのような思いでクルマを開発しているのか感じられる展示になっていた。

未来のSTIは、SUBARU VIZIV PERFORMANCE STI CONCEPTと新型レヴォーグ STI Sport

SUBARU VIZIV PERFORMANCE STI CONCEPT

 未来の展示に関しては、2018年の東京オートサロンで展示された「SUBARU VIZIV PERFORMANCE STI CONCEPT」を用意。スバル共通のデザインフィロソフィー“DYNAMIC×SOLID”に基づいたスポーツセダンで、STIのパフォーマンスにかける意思が込められている。

 こちらは未来のクルマだが、2020年の東京オートサロンでSTIは次期型「レヴォーグプロトタイプ」をベースにした「レヴォーグプロトタイプSTI Sport」を展示。このレヴォーグは年内の正式発表・発売が予想されており、STIの次期型「レヴォーグ STI Sport」の発売についても注目が集まっている。

STIが開発してきた各種コンプリートカーのエンブレム

 平岡社長にこの点を聞いたところ、開発は進めているものの今回の感染症の影響などもあり、詳しい発売時期は言えないとのこと。ただ、現在スバルの開発部隊にSTIのスタッフも2人加わっており、開発時点からコンプリートカーに向いた開発を行なっているとのこと。コンプリートカー製作時に、一から作るより量産車の段階である程度用意しておけば、性能も上げやすくなり、価格も抑えやすくなり、いいクルマ作りにつながる。STIコンプリートカーの登場は市販車登場から時間がかかってしまうものだが、そうしたタイムギャップについても短縮が期待できるところだろう。

 STIといえば、6月29日月曜日に「ニュル24時間耐久レース参戦見送り決定」は衝撃的なニュースだった。ほかの日本メーカーは、月曜日以前に参戦見送りを発表していたが、スバルの発表は遅くなっており、「なんとか参戦に向けてギリギリの調整を続けているのだろうな」と思っていた。その点を平岡社長に聞くと、「お客さまやスタッフの健康問題を考慮しました。主催者の方にも配慮していただき、我々もなんとかと粘ってみたのですが、クルマを送り出すタイミングであるとか、一緒にやっているタイヤメーカーさまであるとか、我々が参加することによって多くの人が移動します。そのため、そんなに(決断を)お待たせするわけにはいかない。残念ながら今回(参戦キャンセルの)決断し、発表しました」。

 今回は残念ながらキャンセルとなったが、2021年のニュルブルクリンク24時間レースには「もちろん参戦します」(平岡社長)とのこと。2020年モデルについても、「2020年モデルは、多くの協力いただいた方にもお披露目できていない。できればどこかでお披露目したいし、このマシンが適合するレース(VLNとか)に参戦したい。具体的にどこと決まっているわけではありませんが」と語り、2020年車の実力を発揮できない現状に悔しさをにじませた。

 モータースポーツに関しては、SUPER GTのGT300クラスに参戦する61号車 BRZもあり、こちらも順調という。先日行なわれたテストにおいてよいタイムを刻めたが、このタイムについては相手の状況が完全に分からないので、判断の難しいところだという。2020年型BRZの実力ついては、7月18日~19日に富士スピードウェイで開幕するSUPER GT第1戦富士で明らかになるだろう。

 今回の企画展「TRY&ERROR 創造の軌跡」は、日本ではほとんど見ることのできない「S209」の展示や、SUBARU VIZIV PERFORMANCE STI CONCEPTというコンセプトカーの展示があるほか、新型レヴォーグ STI Sportについてはパンフレットをもらうことができた。

次期型「レヴォーグ STI Sport」については、プロトタイプのパンフレットで