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Amazon、AWSはMaaS構築の最適なプラットフォームと紹介

ティアフォーが自動運転の、トヨタ自動車がモビリティサービスの基盤として活用

2020年8月19日 開催

トヨタ自動車がモビリティサービスを構築する基盤としてAWSを利用

 米国Amazonの子会社で日本においてクラウドサービスを提供するアマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下サービスのAmazon Web Servicesと併せてAWS)は8月19日に記者説明会を開催し、MaaS(Mobility as a Service)を実現するプラットフォーム(基盤)として同社が展開するクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」を活用するメリットなどを説明した。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 技術統括本部長 執行役員 岡嵜禎氏は「個社から複数社、単一の目的から複数の目的へという特徴を持つMaaSを実現するには業界のさまざまなプレイヤーが有機的に融合していく必要がある。現在そうしたさまざまなプレイヤーがAWSを活用しており、MaaSを実現するプラットフォームとして最適だ」と述べ、自動車メーカー、地図サービスを提供する企業、鉄道など運輸サービスを提供する企業、観光業などの複数企業が参加するMaaSを実現する基盤としてAWSは利便性が高いとしてアピールした。

 その事例として自動運転の基礎ソフトウェアを提供するティアフォー、自動車メーカーのトヨタ自動車が紹介されたほか、鉄道事業者の小田急電鉄とソフトウェア開発会社 ヴァル研究所が共同で開発した一般消費者向けのMaaSアプリ「EMoT」(エモット)が紹介された。なお、記事中の画像で特に注釈のないものはAWS提供によるものとなる。

すでにMaaSに最適なサービスを営む事業者が利用しているAWSがMaaS構築に最適

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 技術統括本部長 執行役員 岡嵜禎氏

 岡嵜氏はMaaSの定義について「単一でなく複数の公共交通機関を組み合わせながら検索や決済を一括で行なう仕組み。単なる交通サービスだけでなく他のサービスとの連携により利用者の利便性向上を目指すもの」と定義。IT技術の発展などによりMaaSという考え方が出てきて、多くの企業がそれに関わっている現状などを説明した。

AWSの特徴
MaaSの定義
登場の背景
複数社、複数の目的に
MaaSを取り巻くプレイヤー

 現在の公共交通機関とMaaSでは何が違うのかというと、例えば料金の支払い方法がその端的な例になる。例えば新幹線の切符はすでにオンラインでも購入できるし、タクシーもUberのようなライドシェアやタクシー配車サービスなどを利用してオンラインで呼び、支払いすることができる。しかし現状では、それぞれ別々のアプリになっており、支払いもそれぞれのサービスにクレジットカードなどを登録しておく必要がある。

 しかし、MaaSではこれが1つのサービスとして一体化して提供されることになる。一般消費者はスマートフォンのMaaSアプリを利用して経路を検索する。例えば東京の自宅から新大阪駅に向かうときに、タクシーで東京駅に行き、東京駅で新幹線に乗るとすると、検索した経路からユーザーがルートを決定すると、MaaSアプリがタクシー配車のサービスと連携してタクシーの配車を完了し、新幹線の席を予約し、同時にスマホの決済機能を利用して決済までを完了する。あとはスマホ1つを持って行けば、タクシーでは画面をドライバーに見せるだけ、新幹線ではQRコードの切符をゲートにかざすだけで乗れるなど、乗車もすべてスマホで済ますことができる。こうした未来を実現するのがMaaSという考え方になる。

 AWSの岡嵜氏は「個社から複数社、単一の目的から複数の目的へという特徴を持つMaaSを実現するには、業界のさまざまなプレイヤーが有機的に融合していく必要がある。現在AWSをそうしたさまざまなプレイヤーが活用しており、MaaSを実現するプラットフォームとして最適だ」と述べ、MaaSの実現を目指す企業がすでにAWSを利用してサービスを展開しているからこそ、それらを融合するにはAWSが最適なプラットフォームだと述べた。

AWSとMaaS
すでに多くの会社がAWS上でMaaSのサービスを提供
AWSが提供するコア技術
すでに提供しているAWS Connected Mobility Solutions(CMS)の機能拡張を年末までに提供

 AWSのようなクラウドサービス事業者は、パブリッククラウドと呼ばれるサービスを企業などに提供している。従来であれば、企業が何らかのサービスを提供する場合、オンプレミス(自社内などにITインフラを設置すること)でサーバーを立ててサービスを提供していた。しかし、その仕組みだとサービスを立ち上げるまでに時間がかかるし、初期導入コストも膨大になる。それに対してAWSのようなパブリッククラウドでは、そうしたサーバーはサービスとして提供されるため少ない初期コストから始めることができ、将来より大規模なサービスに発展しても、サーバーを増やしたり減らしたりが自由自在。また、そのサーバーの物理的な管理はAWS側で行なうので管理コストも最低限で済むなど、初期導入コスト、ランニングコスト、柔軟性などの点でメリットがあると言える。現在IT業界ではオンプレミスからこうしたクラウドへの移行がトレンドになっており、すでにさまざまな会社がAWSを利用してサービスを提供しているのだ。

AWSのソリューションを説明するセミナーをオンラインで9月8日から実施する、MaaS関連のセッションもある

ティアフォーやトヨタ自動車がMaaS向けのサービス基盤としてAWSを利用

ティアフォーも自動運転の基盤としてAWSを採用

 AWSの岡嵜氏はそうしたAWSを利用したMaaSの事例として4つの事例を紹介した。それがティアフォー、トヨタ自動車、ゼンリンデータコム、そして小田急電鉄とヴァル研究所が共同で開発したMaaSアプリ「EMoT」に関する事例だ。

 ティアフォーは自動運転のソフトウェアを提供するベンチャー企業として知られており、オープンソースで開発された自動運転ソフトウェア「Autoware」などを活用して、広く自動車側の自動運転ソフトウェア、そしてそれを協調して動作するクラウド側のソフトウェアサービスなどを提供している。AWSの岡嵜氏によれば、ティアフォーは、自動運転車に搭載する制御ソフトウェアにAmazonが提供するAWS IoT Coreを採用しており、オンプレミスのサーバーなどが必要のない自動運転車のシステムを提供しているという。

 トヨタの事例は、先日発表されたばかりの事例(関連記事:トヨタ、ビッグデータの活用を目的にAWS(アマゾン ウェブ サービス)と業務提携)で、トヨタがAWSをモビリティサービス・プラットフォームとして活用するという事例だ。トヨタは自動車などから上がってくるデータをAWS上に蓄積し、それをビッグデータとして活用する基盤としてAWSを利用していくとのことだ。

 ゼンリンデータコムは地図データをサービスとして提供する企業で、常に地図を最新の更新するための作業が必須になっている。そこで、車載カメラやドライブレコーダーなどから取得した動画・静止画などから道路交通標識や看板を自動で認識して地図情報を自動更新するシステムなどを組んでいる。これらは従来はオンプレミスのサーバー上に構築されていた仮想マシン(1800台)で構成されていたが、現在ではそれをVMware Cloud on AWSと呼ばれるサービス上に移行して構築している。

ゼンリンデータコムの事例

 小田急とヴァル研究所が共同で開発したMaaSアプリ「EMoT」は、スマホ向けアプリ。経路検索などでは鉄道やバスなどだけでなく、タクシー配車サービスやカーシェアなども含めて複数の事業者のサービスから検索できるようになっているのが特徴だ。また、箱根の観光地を巡る周遊チケットのデジタル化など、移動だけでなく観光のサービスに関しても1つのアプリで提供できるようになっている。このEMoTはMaaS JapanというMaaSプラットフォームがベースになっており、それらがAWS上で構築されているという。今後はチケット譲渡機能やリアルタイムの運行除法、さらには感染症対策として小田急線の混雑情報を表示したりなどの機能拡張を行なう計画だという。

小田急のMaaSアプリ「EMoT」(出典:MaaSアプリEMoTのご紹介、小田急/ヴァル研究所)