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トヨタ、友山茂樹副社長がMaaS戦略について語る。「eパレット」「MaaS シエナ」「MaaS EV」をラインアップ

2019年2月6日 開催

トヨタ自動車株式会社 副社長 友山茂樹氏

 トヨタ自動車は2月6日、同日に発表した2019年3月期 第2四半期の決算内容について解説する決算説明会を東京都文京区にある東京本社で開催。この中で、トヨタが進めている競争力強化に向けた取り組みについて、トヨタ自動車 副社長 友山茂樹氏がプレゼンテーションを実施した。

 トヨタでは2018年から決算説明会の場を使い、取り組みを進めている競争力強化の活動内容について各領域を担当する副社長がプレゼンテーションを行なっており、今回はトヨタのコネクティッド、TOYOTA GAZOO Racing、TPS(トヨタ生産方式)、新規事業などの領域を統括する友山副社長が「トヨタのコネクティッド&MaaS戦略」と題して解説を実施した。

友山副社長が「トヨタのコネクティッド&MaaS戦略」と題するプレゼンテーションを実施
河合副社長の「製造」、吉田副社長の「開発」、ルロワ副社長の「販売/北米事業」に続き、トヨタの競争力強化に向けた取り組みが解説された

 この中で友山副社長は、トヨタでは2016年末に「すべての車両のコネクティッド化」「MSPF(モビリティサービス プラットフォーム)の構築とそれを基盤とするビッグデータの活用」「新たなモビリティサービスの創出」を“3本の矢”とするコネクティッド戦略を発表したと語り、このコネクティッド戦略では「守り」「改善」「攻め」という“3つの顔”があると説明。

「守り」の顔ではユーザーと長期的な信頼関係を確立して既存のバリューチェーンを維持、拡大していく。「改善」の顔では従来から続けてきた仕事のやり方を変革し、品質やリードタイム、生産性を飛躍的に改善する。「攻め」の顔ではクルマの新たな価値、新たなモビリティ事業を創出することだと友山副社長は紹介し、それぞれの詳細についても説明。この中で友山副社長は、現時点ではカーナビのソフトウェア更新に限られているOTA(Over-the-Air)の技術を、2020年からはECUの制御ソフト更新にも展開していくと語り、これによってクルマのソフトウェアが常に最新の状態に維持でき、入庫して部品交換するこれまでの手法と比べて大幅にコスト低減することが可能だとした。

トヨタがコネクティッド戦略で中心に据える“3本の矢”
「MSPF(モビリティサービス プラットフォーム)」のアウトライン
コネクティッド戦略は「守り」「改善」「攻め」の“3つの顔”がある
「守り」では「走行アドバイス」や「ヘルスチェックレポート」などを提供して顧客満足度を高め、トヨタ車やレクサス車への代替を維持していく
「改善」では車両データから不具合を早期発見して対策する「EDER」と通信で車載ソフトをアップデートする「OTA」を展開
「攻め」ではクラウド型AIアシスタント「エージェント」や、MaaSなどで新しい事業を創出していく

MaaS戦略について

 MaaS戦略でも「外部事業者協業モデル」「トヨタ事業主体モデル」「販売店事業主体モデル」という3つのアプローチがあると友山副社長は説明。どのモデルを利用するかは地域によって異なるが、車両の提供に加え、メンテナンスや保険、リースといった「バリューチェーンビジネス」をいかにしてトヨタが確保するかが重要になるとの認識を示した。

MaaS戦略における3つのアプローチ。どの面でもトヨタが関わってバリューチェーンを確保することが重要になる

 この1例として、2017年8月から推進している東南アジアの配車サービス「Grab」との協業について紹介。トヨタが開発した「ライドシェア車両向けのトータルケアサービス」をシンガポールで利用されている1500台のGrab車両に提供しており、Grab車両専用に開発した集中サービスシステム「ICS(Intensive Care Stall)」が現地のトヨタ販売店に設置され、車両の稼働率向上、保守費用の低減が実現しているという。

 このほかにも、日本国内では前日の2月5日に発表された愛車サブスクリプションサービス「KINTO」を個人向けカーリースとして展開し、1月からスマートフィンでドアロックなどを行なえる「TOYOTA SHARE」もスタート。米国でもハワイでカーシェアサービス「Hui」を2018年7月から行なっており、今後は米国全域への展開を予定していると友山副社長は紹介。「いずれにしても、コネクティッドカーとMSPFがその基盤であることは言うまでもありません」とした。

MaaS戦略の1例として紹介された「Grab」との協業。サービスを提供し、Grab車両のトヨタ車比率を高めることも大きな目的
Grabとの協業以外でも、MaaS事業は日本、米国で複数進められている

 また、そんなMaaSで利用される車両は、現在では既存モデルを使っているが、将来的には利用特性に合わせた「MaaS向け多目的車」が必要になるとの考えを友山副社長は示し、トヨタでは現在、MaaS向けの車両として「e-Palette」「MaaS Sienna」「MaaS EV」の3種類で対応する計画であると語り、この3モデルの延長線上に「将来の自動運転モビリティサービスがある」とした。一方、レベル4の自動運転が、いつ、どれぐらい普及するかについては、技術やコスト面だけでなく、法整備や社会的コンセンサスの形成などの課題から予測することが非常に困難であるとの見方を示した。

 このため、トヨタではレベル4のベースとなるレベル2、レベル3といった自動運転の量産車に、「ADK(Autonomous Driving Kit)」と呼ばれる機器を装着することでレベル4のMaaS専用車にするというコンセプトで実用化を目指していくと友山副社長は語った。

 このADKは、自動運転の制御ソフトを第三者が開発することも視野に入れつつ、トヨタが開発している「ガーディアンシステム」を車両側に備えることで周辺状況を2重で監視。車両の総合的な安全性を高めるほか、ADKと車両のインターフェイスは標準化を行ない、ガーディアンシステムを含む制御ユニットを汎用化することで適応を広く拡大するとの方針で開発を進めていることも明らかにされた。

 さらにMaaS戦略の実現に向け、ソフトバンクグループや主要MaaSプレーヤーと提携。ソフトバンクグループと共同出資して新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」も設立しており、年内に複数の市町村でサービスを行なう予定としており、将来的にはe-Paletteを導入することも視野に入れていると友山副社長は語った。

利用特性に合わせて3種類のMaaS向けの車両をラインアップしていく
量産するレベル2、レベル3の自動運転車に「ADK(Autonomous Driving Kit)」と呼ばれる機器を装着し、レベル4のMaaS専用車にするコンセプト
MaaS戦略を実現するため、ソフトバンクグループなどと提携
トヨタが持つ技術や資産をモビリティサービスの普及に向けた強みとしていく

 最後に友山副社長は「電動化、知能化、情報化の技術革新でクルマは大きく進化しつつあり、自動運転モビリティ社会の実現も期待されています。ただし、AIを駆使して高度なソフトを開発することだけがその普及を促すことにつながるわけではありません。クルマはそれ自体も高度なハードウェアとソフトウェアのかたまりであり、今でも発展途上の工業製品であると同時に、人の命をお預かりする商品でございます。そのようなクルマに、AIを搭載して適正な品質とコストで量産し、タイムリーにメンテナンスして安全、利便な移動サービスとして社会に普及させるためには、これまで私どもが培ってきたTPSをはじめとするリアルのノウハウと技術。また、サービスネットワークをはじめとするリアルの資産。いわゆる『リアルの強み』をさらに研ぎ澄ませていくことが重要であると認識しています。コネクティッドからMaaSビジネスへ、トヨタのモビリティカンパニーへの路線はまだ始まったばかりですが、“誰もが自由で安心快適なモビリティ社会”の実現に向けて貢献してまいりたいと思います」とコメントし、プレゼンテーションを締めくくった。