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トヨタ、ディディエ・ルロワ副社長とジェームス・レンツ専務役員がグローバルでの販売取り組みなどを解説
今後3年間に北米で31の新型モデルを導入
2018年11月7日 05:00
- 2018年11月6日 開催
トヨタ自動車は11月6日、2019年3月期 第2四半期(2018年4月1日~9月30日)の決算内容を説明する決算発表会を開催。トヨタでは2018年に入ってから、決算発表に合わせて具体的な自社の取り組みをより深く知ってもらえるよう、各ジャンルの担当役員がプレゼンテーションを行なっており、今回はトヨタ自動車 取締役・副社長 ディディエ・ルロワ氏が「競争力強化・持続的成長に向けた販売の取り組み」、トヨタ自動車 専務役員 ジェームス・レンツ氏が「北米における販売活動と収益改善の取り組み」について解説を行なった。
「町いちばん」「現地現物」の2点が「販売のトヨタウェイ」
2016年4月からトヨタのCCO(Chief Competitive Officer)を務めているルロワ氏は、トヨタが掲げているビジョンを達成するため、「着実な足下固め」「新たな価値の創造の強化」「持続的成長の追究」という3点の活動を進めていると語り、自身の役割は、事業を行なっているすべての分野でトヨタを最も競争力のある組織にすることだとコメント。
持続的成長を果たしていくために、これまで培ってきた強みを生かしていくことが必要であると同時に、新たな考え方で即断して起業家のように行動する必要もあると説明。ユーザーの趣向や技術革新はかつてない速さで進み、自動車産業を変えようとしているとルロワ氏は語り、100年に1度という変革期にあたってすべての市場で収益と台数を確保し、新技術を普及させていく力強さが重要になるとの考えを示した。
この実現に向けて最も大切な要素として、ルロワ氏は「1人でも多くのお客さまにトヨタ車を選んでもらうこと」と語り、そのためには「現地現物による即断即決の活動、対策の実施」「専門部署による人材育成」「ブランド力の強化」「トヨタ車を長く愛顧してもらう」という4点を指摘。とくに現地現物を「トヨタの最も大切な指針」と位置付けた。
また、人材育成の面では、「私たちは世界中でクルマを販売していますが、“世界”というひと続きの市場が存在しているわけではなく、各国、各地域でそれぞれにニーズが異なっており、販売店では各市場の特徴を深く理解して、お客さまの声を社内に届けなければなりません」と語り、専門部署を設置して国や地域ごとに培った経験やノウハウを共有する取り組みを進めているという。
ブランド力の強化については、2017年に初となる世界規模のマーケティングキャンペーン「Start Your Impossible」をはじめ、さらに“環境車”の推進、モータースポーツとGAZOOブランドでより多くの人にクルマを好きになってもらうよう取り組んでるとアピールした。
最後の「トヨタ車を長く愛顧してもらう」という面については、ユーザーに「ライフタイムカスタマー」になってもらうことを目標に設定。値引きの抑制や製品の改良、ブランド力の強化などを推し進めて車両の残存価値を高め、結果的にユーザーのライフタイムコストを下げていきたいとルロワ氏は解説。「お客さまが支払ったコストを上まわる価値の提供こそがお客さまの満足につながる」とした。
さらにルロワ氏は市場別の取り組みなどを解説して、トヨタが目指している基本理念「トヨタウェイ」にならい、販売においては「町いちばん」「現地現物」の2点が「販売のトヨタウェイ」になると紹介。「町いちばん」は各国、各地域の市場がそれぞれ異なることを前提に、現地で聞き、学び、行動して、市場で1番のブランドを目指すことだと語り、「現地現物」は現場に足を運んで本当の情報を手に入れることだと説明。正しい判断や戦略は、現場や最前線だけで手に入る正しい情報に基づいてのみ実現可能で、それはオフィスで資料を読むだけで手に入るものではないと強調。このようにして「販売のトヨタウェイ」を世界レベルで共有し、販売を「ベター、ベター、ベターの精神」で1歩ずつ改善していくことで「お客さまの心の中のナンバーワンメーカーになれると信じている」と総括した。
今後3年間に北米市場で31の新型モデルを導入予定
続いて登壇したレンツ氏は、トヨタモーターノースアメリカ 取締役社長兼COOも務める人物で、トヨタの北米事業について解説を行なった。
レンツ氏は、北米市場は堅調な経済状況に裏付けられた消費者マインドや安定したガソリン価格などが自動車販売で追い風になっていると紹介しつつ、特金の貿易政策や温室効果ガスの排出規制の強化、金利上昇などに加え、新車販売のインセンティブが課題になっていると解説。全体を見ると、北米市場は280万台に設定された販売目標を実現可能であるとした。
トヨタの活動としては、「ONE TOYOTA」のキーワードにより、製造、販売、金融の部門を「1つの屋根の下にまとめる」ことで多くのベネフィット(利益、恩恵)を創出。それぞれのチームが効率化され、能力を高めることが可能であり、それ以上に各スタッフの思いがまとまって1つのチームとして取り組めることだとレンツ氏は紹介。その効果の例として、収益改善活動によって北米での収益性が急速に高まっていることを挙げた。
さらにレンツ氏は、北米事業では「コアではない事業」の見直しを進め、無駄をなくす取り組みを行なっていると説明。製品では利益の高いセグメントやモデルに注力して、戦略的な価値のないクルマは打ち切ることを実施するという。また、北米の研究開発チームは新しい「TNGA(Toyota New Global Architecture)プラットフォーム」についても検討を進めているという。
具体例としてレンツ氏は「カムリ」を挙げ、開発は「アヴァロン」「ES」などと続けて順番に行なっており、それぞれの開発以降は非常にスムーズに進められたとアピール。これを今後はフレーム付きのモデルにも展開し、「タンドラ」「タコマ」「セコイア」の改善にも活用していくと説明。これらによって収益性の回復、維持が可能になるとした。
販売活動の強化では、「製品サイクル」「オンライン販売」「製品ミックス」「生産・供給の最適化」の4点を紹介。「製品サイクル」では今後の3年間に北米市場で31の新型モデルを導入予定。これは過去3年間で販売した24モデルと比較して大幅増となり、ラインアップを強化して、新たに若年ユーザーを引きつけることが可能になり、さらに新しいモデルの発売でインセンティブも抑制できるとする。
「オンライン販売」では新たな販売手法の導入でユーザーに対するタッチポイントを増やし、在庫管理の最適化などにも効果的だとした。「製品ミックス」ではSUVなどを含むライトトラックと乗用車の比率を最適化。乗用車からライトトラックへの移行を円滑化して、これまで北米で強固な基盤となっていたカムリや「カローラ」「プリウス」を維持しつつ、ライトトラックでもユーザー数を増やしていくことを目指すという。「生産・供給の最適化」では、北米やメキシコにある工場でもTNGAの生産移行に向けて投資を行なっているほか、マツダとの合弁事業をスタートさせるため、現在は市場ニーズなどを見据えつつ調整段階になっているとした。
将来に向けた活動では、コネクティッド機能を使った「Hui」というカーシェアサービスの展開を進めており、ホノルルにある25のステーションで70台の車両を使い、ステーション間移動のシェアリングサービスを行なっており、7月のサービス開始以来、1600以上のサービス予約を受け付けているという。このほかにも水素で走行する「FC(燃料電池)大型商用トラック」による実証実験、ハイブリッドカーやPHV(プラグインハイブリッドカー)などを中核とした電動化などを推進していることなどを紹介した。