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トヨタ ディディエ・ルロワ副社長、世界で展開する競争力強化の取り組みについてプレゼンテーション

自動運転などの実証都市「Woven City」について、詳細な情報を近々発表

2020年2月6日 開催

トヨタ自動車株式会社 取締役・副社長 ディディエ・ルロワ氏

 トヨタ自動車は2月6日、2020年3月期 第3四半期(2019年4月1日~12月31日)の決算内容を発表。同日に東京都文京区の東京本社で決算内容について解説する説明会を行ない、合わせてトヨタ自動車 取締役・副社長 ディディエ・ルロワ氏が「お客様に向き合った競争力強化の取組み」と題するプレゼンテーションを実施した。

 なお、トヨタの2020年3月期 第3四半期決算については関連記事「トヨタ、2020年3月期 第3四半期決算。9か月累計として過去最高の売上高22兆8301億円、税引前利益2兆5157億円」を参照していただきたい。

 ルロワ氏はまず、2019年にトヨタがグローバルで971万台のクルマを販売したことを紹介。2018年、2019年の世界販売が落ち込んでいる厳しい市場環境となっているが、トヨタはグローバルでバランスの取れた事業を展開する戦略により、落ち込んだ市場を他の市場の販売増でカバー。安定して成長を続けていることを紹介した。

 市場別の取り組みでは、中国市場では2019年の全体需要が8%落ち込む一方、トヨタは2019年6月発売の新型「レビン」、同8月発売の新型「カローラ」が好調に推移したことで販売台数を9%高めたことを紹介。新型車で採用したTNGA(Toyota New Global Architecture)プラットフォームにより走行性能を大幅に高めていることに加え、販売店のスタッフの1人ひとりがクルマの魅力を来場者にしっかりと伝え、積極的に試乗してもらって魅力を体感してもらえるよう努めたことをポイントとして挙げ、さらに中古車価格が低下しないよう、安易な値下げも控えているという。

 また、2018年に李克強首相が来日して以来、中国政府はトヨタの環境技術に関心を寄せており、パートナーシップを重視しつつ、トヨタの技術によって中国の発展に貢献していきたいと述べた。

 欧州市場ではさらなる環境規制の強化が予測されており、ハイブリッド技術によってこれに対応。ユーザーニーズを先読みした取り組みだったが、ここまでには根気が必要な取り組みが行なわれてきたという。以前から欧州市場ではディーゼルエンジンが主流となっており、欧州のユーザーにとって未知の技術であるハイブリッドを周知するため、まず販売店のスタッフに「燃費」「静粛性」「耐久性」「ランニングコスト」といったハイブリッドが持つ優位点を説明。来場者にしっかりと説明ができるよう、販売店スタッフがハイブリッドについてゼロから学んだ結果、ユーザーにもハイブリッドの優位性が徐々に浸透していき、ユーザーがハイブリッドについて紹介してくれるようになっていった。

 以前あった「ハイブリッド車は壊れた時に修理しにくい」「充電する必要がある」といった誤解も、ユーザーと真摯に向き合うことで解消されていき、ユーザーの意見を聞きながら1歩ずつ進んできたとルロワ氏は説明。地道な取り組みを重ねたことでハイブリッド車への移行が進み、現在、欧州で販売されるトヨタ車とレクサス車の半分以上がハイブリッドモデルになっており、合わせて欧州市場での販売台数を押し上げているという。

グローバルでバランスよく事業展開を進める戦略により、トヨタは堅調に販売を伸ばしている
TNGA(Toyota New Global Architecture)を採用した新型車の投入、試乗による魅力のアピール、値下げ抑制によるリセールバリューの確保などにより、中国市場で販売台数を拡大
欧州のユーザーに真摯に向き合い、粘り強くハイブリッドの魅力を説明して販売比率を高めている

 北米市場では人気SUVである「RAV4」を例に紹介。ハイブリッド仕様を設定した当初の2016年には、ハイブリッドは販売比率の13%程度となっていた。この理由を知るため詳細な調査を実施したところ、ユーザーが「ハイブリッドはパワーの面で劣る」というイメージを持っていることが判明した。そこで2019年3月に発売された新型RAV4のハイブリッドモデルでは、燃費のよさに加えて高い走行性能を強調。パワフルなイメージを持ってもらえるようになり、販売比率でも25%まで向上しているという。

 トヨタではグローバルでハイブリッドを普及させることにより、持続可能な社会づくりに貢献したいと考えており、今後もユーザーの声に耳を傾け、ユーザーニーズを満たす電動車を提供していきたいとルロワ氏は語った。

 日本市場については販売店ネットワークの再編に取り組んでいることを説明。ユーザーがクルマに求める内容が変化すれば、販売の在り方も自ずと変わっていく必要があると述べ、そのための大きな変革として、国内にあるすべての販売店で全トヨタ車を取り扱うようにする取り組みを実施。これは当初、2025年をめどに導入を進めてきたが、合わせてトヨタで行なっている「この町いちばん活動」をさらに強化していくために、より早い段階でさまざまな製品やサービスを取り扱う必要があるとの考えから、予定を2年前倒しにして5月から「全車種併売化」を一気に行なうことを決定したという。

 ルロワ氏は販売店の代表などに合って「何でも話してほしい」と求め、全車種併売化などの取り組みに対する不安などを本音で語ってもらったという。ここでは「人気車種の供給が追いつかなくなるのではないか」といった不安が多くの代表者から出たが、トヨタでは生産体制の調整を行ない、すでに着々と準備を進めていると回答したという。ほかにも計画や前例にとらわれることなく将来の成長に向けた種をまき、これからもユーザーから選ばれるトヨタであり続けられるよう、自分たちも改革を続けていくと語った。

環境性能だけでなく、RAV4のハイブリッドモデルがSUVらしい力強さを持っているとアピール
日本市場での「全車種併売化」を2年前倒して5月からスタート

 このほかに販売面では、それぞれの地域で販売に関わるトヨタのスタッフが、自分の持ち場で「1台でも多くのクルマを売ろう」「1円でもコストを下げよう」と努力していると強調。これまでにルロワ氏は、多くの地域に足を運んで数多くのステークホルダーと対話しており、とくに販売の現場で会ったスタッフに、自身が常に身につけて持ち歩いている「リーダーシップに関する10の要素」を書き記したカードの言葉から「ファイティングスピリットを持ち続けよう」「情熱的であれ」という2点を伝えているという。自動車業界は「100年に一度」と言われる大きな変革期に直面しており、あらゆる手段と努力を尽くし、ユーザーが期待するモビリティやサービスを提供し続けなければ生き残ってはいけないとした。

 最後に、1月の「CES 2020」で豊田章男社長から発表された自動運転などの実証都市「Woven City」を紹介。この都市は未来に向けたスタート地点となる“リビングラボラトリー”であり、プロジェクトについてさらに詳細な情報を近々発表すると述べた。

ルロワ氏が常に身につけて持ち歩いているという「リーダーシップに関する10の要素」を書き記したカード。販売の現場で会ったスタッフに、この中の「ファイティングスピリットを持ち続けよう」「情熱的であれ」という2点を伝えているという
「ゼロから街を作り上げる」というまったく新しいプロジェクト「Woven City」について近々発表するという

質疑応答

トヨタ自動車株式会社 執行役員 白柳正義氏

 説明会の後半に行なわれた質疑応答では、今回の決算発表についてどのように評価するか質問され、トヨタ自動車 執行役員 白柳正義氏は「今回の収益では、第3四半期としても(営業利益が)1208億円の増益、通期見通しも325億円の増益ということで、世界中で非常に多くの皆さまに私どもの製品をご愛顧いただき、また、仕入れ先や販売店の皆さまのご尽力のおかげだと大変感謝しております」。

「一方で社内を見ますと、これまで競争力の強化ということで、TNGAや北米の収益構造改革、全社一丸となって取り組んだTPS(トヨタ生産方式)と原価低減。これらを一生懸命推進しており、一部で成果も見えはじめていますが、まだまだ道半ばだと思っております。これからモビリティカンパニーへの変革、CASEへの対応などに向け、意識面や仕事のやり方で無駄のないように、やるべきことはまだたくさんあると思います。これは私どもだけではできません。販売店の皆さま、仕入れ先の皆さま、パートナーの皆さまと一緒に未来を切り拓く努力を、われわれ自身で汗をかいて続けていきたいと思っております」と回答。

 一方、世界的に注目を集めている新型肺炎については、中国での生産稼働は現地の従業員や仕入れ先スタッフなどの安全・安心を第一に考えて判断するとコメント。現時点では2月9日まで稼働を停止しており、それ以降については中国政府の方針も加味し、部品の調達や物流などの状況を見ながら精査を続けているとした。また、中国から輸出されるパーツについては当面は生産が続けられるめどがついているが、長期化した場合の調達や代替について、在庫状況と合わせて精査していると述べた。

 なお、同日上方修正を発表した2020年3月期の通期見通しでは、この新型肺炎の影響は加味していないとしている。

英国の“ハイブリッドカーを含むガソリン車、ディーゼル車の2035年販売禁止”について説明するルロワ氏

 また、先日英国政府から発表された、2035年からハイブリッドカーを含めてガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止するという新たな方針について質問され、これについてルロワ氏が回答。

 ルロワ氏は「実は、われわれも皆さんと同じく今週はじめのタイミングで知りました。これまでわれわれは、世界レベルで地球環境に対応できる技術としてハイブリッドを推し進めてきました。ハイブリッドはわれわれにとって非常に重要な技術です。それは世界レベルでのCO2排出削減に貢献できると考えているからです。ハイブリッドカーは信頼性が高く、手ごろな値段で提供でき、非常に実用的です。これによってCO2排出削減に大きく貢献できるのです。また、トヨタでは1つだけの技術ではなく、これからのローエミッション、ゼロエミッションのクルマを目指していく上で、さまざまな技術をミックスしていくことになると思っています。ハイブリッドやプラグインハイブリッド、燃料電池、バッテリーEV(電気自動車)などです。いろいろな技術の間で補完するところがあるのです。ただ、世界レベルで迅速にCO2排出量を削減するために、1つの方向に向かって他のものはすべて禁止するということではなく、段階を踏むことが必要だと思います」。

「英国政府とわれわれは話し合いをして、そこで『今週はじめの発表は決定事項ではない』と言われました。あれは英国政府の望みとのことで、これを皮切りにして自動車メーカーやすべてのステークホルダーと協議を始め、これから6か月の期間かけて実際にどうするかを決めていく意向だと聞きました」。

「これについてコメントする前に、『彼らが何を求めているのか』ということを知る必要があります。2035年までに(ハイブリッドカーなどを)すべて禁止する、販売できないということになれば、世界中の自動車メーカーだけでなく、英国のお客さまにとっても大きな問題になります。これはEUの離脱とは関係なく、英国がEUに残っていても決断されたと思いますが、他の国が2040年を目標として進めていることを5年前倒しするというのは非常に大きなチャレンジで、そのチャレンジを自動車メーカーとしてどのようにサポートできるかについて検討中ということです」と明らかにした。

会場となったトヨタ自動車 東京本社では、ロビースペースで最新モデルを展示
2月10日発売の「ヤリス HYBRID G」(ブラック×アイスピンクメタリック)
ヤリスはブラック×アバンギャルドブロンズメタリックの車両も展示。本当は「GR ヤリス」を用意したかったが、2月14日~16日開催の「大阪オートメッセ 2020」での展示に向けた準備が始まっており、涙を呑んで断念したとのこと
「コペン GR SPORT」(マタドールレッドパール)
「C-HR S-T “GR SPORT”」(ブラック×ホワイトパールクリスタルシャイン)
同日に1月の車名別販売台数で1位になったと発表された「ライズ Z」(ブラックマイカメタリック×ターコイズブルーマイカメタリック)