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トヨタ、第3四半期決算説明会。「原価低減は一般的に言われるコストカットとは違う」と友山副社長
営業利益は9.5%増の1兆9379億円、純利益は29.3%減の1兆4233億円
2019年2月7日 00:00
- 2019年2月6日 開催
トヨタ自動車は2月6日、2019年3月期 第3四半期(2018年4月1日~12月31日)の決算内容を発表した。
2019年3月期 第3四半期の売上高は前年同期比6785億円(3.1%)増の22兆4755億円、営業利益は前年同期比1677億円(9.5%)増の1兆9379億円、当期純利益は前年同期比5898億円(29.3%)減の1兆4233億円となった。当期純利益には未実現持ち分証券評価損益の3100億円減が含まれている。また、連結販売台数は2万3000台増の670万1000台としている。
2019年3月期の通期見通しは、連結販売台数を期首見通しから5万台増の895万台に上方修正。売上高の29兆5000億円、営業利益の2兆4000億円を前期見通しで据え置き、当期純利益は4300億円減の1兆8700億円に下方修正している。
質疑応答
白柳執行役員による決算内容の説明に続いてトヨタ自動車 副社長友山茂樹氏によるプレゼンテーションが行なわれた後、記者との質疑応答が行なわれた。
今回の発表内容についての評価を問われ、白柳執行役員は「数字としては1677億円の増益で、為替やスワップの影響を除くと2100億円と収益構造の改善という数字にすることができました。年初から高めのチャレンジ目標を置いて、TPSと原価低減の浸透を図りつつ、稼ぐ力を高めていきたいということで全社一丸となって頑張ってまいりました。とくに意識してきたのは、予算やコストを一律でカットするということではなく、相場観やベンチマーク、あるいはお客さまが望む原価といったところをしっかり見極め、共有をした上でその原価に向かって作り込んでいく、そこに向かって全員で知恵を絞っていくという姿勢やプロセス、なによりそういったことができる原価低減のプロ人材を育成することに重きを置いて活動してきました」。
「そういった全社的な活動に加え、販売店の皆さま、仕入れ先の皆さま、なによりご愛顧いただきましたたくさんのお客さまのおかげで、もう1歩で今年度の目標が達成できるところまでたどり着いたというのが、この第3四半期の評価だと思っております。昨年は自然災害や事故が本当にたくさんありまして、私どもの稼働も不安定になる局面がたくさんありましたが、そんな局面でも販売面や生産面で本当に柔軟なご対応をいただきまして、復旧にあたりましても個社ごとの利益ではなく、全体最適を考えて本当にご尽力いただきましたこと、あらためまして感謝申し上げたいと思ってございます」とコメントした。
また、これまでの好調から市況が落ち込むと予想されている米国、中国での販売について、白柳執行役員は「米国市場につきましては、昨年は1727万台の販売と比較的高い水準で維持されました。私どもの販売では、乗用車系は苦戦しましたが、『RAV4』『ハイランダー』『4ランナー』『タコマ』といったライトトラック系が過去最高を記録したことで、242万7000台の台数を販売できました。2019年につきましても、市場は金利の上昇などを踏まえて1660万台~1680万台かなという見通しではありますが、そういった中でも『RAV4』や『カローラ』といった主力車種の新型車を投入することで、237万台を売っていきたいと考えております」。
「中国市場につきましては、昨年は2808万台ということで、3%程度ながら久々の減速ということですが、私どもの販売は『カムリ』『カローラ』『レビン』『RAV4』といった主力車種に加え、レクサス車についても大変好調でございまして、台数としては147万5000台と過去最高の台数を販売できた1年でした。今年につきましては、市場はほぼ横ばいで2810万台程度と考えておりますが、そういった中でも『アバロン』や『カローラ』『レビン』などの新型車、TNGAで商品力を強化したクルマを投入することで、160万台という高い目標を掲げてチャレンジしているところです。この計画に対して、1月の販売状況を見ますともう1000台程度上まわっている状況で、今のところは順調な滑り出しかなと評価しております。ただ、ご指摘いただきましたように不安定な状況ですので、状況をよく注視してまいりたいと考えてございます」と回答している。
また、MaaS戦略の先行投資が回収されるタイミングなどについての質問に対して、友山副社長が「まず、コネクティッドの収益の見方というところで、1つは自動車事業としての収益。これはクルマに搭載されたコネクティッド端末や付随するオンラインサービスなどを、クルマの単価やお客さまの会費から回収することで収益になります。現在は、レクサスでいうと3年分はクルマに付帯されているんですが、4年目の継続率は69%と非常によい数字を誇っています。また、フリート向けのコネクティッド車両端末を販売したり、それに付随するサービスを販売するという収益もございます。2番目の収益は、先ほども言いました『モビリティサービス プラットフォーム』の利用料を、いわゆる配車サービスの事業者や保険会社、その他B2Bの形でいただくというもの。それから統計処理したビッグデータを提携会社に販売するといった収益でございます」。
「それから、私どもが最も重視しているのは、コネクティッドによる業務改善効果。私のプレゼンにもありましたように、いわゆる不具合措置のリードタイムが縮まること、また範囲を特定することによって大きな費用低減の効果が出る。もしくは、OTAのソフトウェア更新によって、これも大きな費用低減の効果が見えてくる。またはサービスの入庫率が上がることによって部品の増販、代替時の継続によってクルマの増販につながる。こういった収益と業務改善の効果を足したものから投資額を引いたものを投資効果額として把握しています。これを計画と実績でチャレンジしておりまして、コネクティッド戦略をスタートして2年が経ちましたが、とくに業務改善効果は大きく、手応えを感じている次第です」。
「コネクティッドの投資というのは、それだけの収益もさることながら、本業である自動車と自動車事業を進化させていくために必要な投資でありまして、投資と投資効果のバランスを常に注視しながら進めているところです。具体的な投資額や投資計画については申し上げることができません」と回答した。
原価改善の取り組みの進捗状況についての質問に対して、友山副社長は「社長の豊田が昨年の年初に『TPSと原価低減』ということを大きく掲げたんですが、この原価低減というのは一般的に言われるコストカットとは違うということをちょっと申し上げたい。基本的には、原価のまわりにはたくさんの無駄が付いていて、その無駄を削除することで原価を下げる。いわゆる原価低減は原価改善であるということです。その原価低減を正しく行なうために、原価を低減するためにやらなければいけないことと、やってはいけないことがあります。例えば、コストが下がってもリードタイムが著しく長くなるようなことはやらない。もしくは、量や種類の変動に弱くなることも基本的にはやらない。それから、改善もしていないのに『早くやれ』とか『急いでやれ』なんて言うことも基本的にやってはいけない。行程を改善する上で、コストが下がっても現場で異常が分からなくなるようなことはやらない。そういったいくつかの考え方があります」。
「その経営哲学と改善の進め方を示すものがTPSである、と考えていただいて結構だろうと思います。いわゆるTPSと原価低減というのは、TPSを正しく理解して、製造だけではなくすべての業務プロセスに展開して、正しい原価低減を行なうといったことを昨年、豊田は掲げたわけでございます」とコメントしている。