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トヨタ、決算説明会で河合副社長による「トヨタのモノづくり」プレゼン実施

2018年2月6日 開催

 トヨタ自動車は2月6日、2018年3月期 第3四半期の決算内容に関する決算説明会を東京本社で開催。2017年10月~12月の第3四半期と、2017年4月~12月の累計9カ月における決算内容について解説を行なった。

 2018年3月期 第3四半期の売上高は7兆6057億円(前年同期比7.4%増)、営業利益6736億円(同53.6%増)、営業利益率8.9%、当期純利益9418億円(同93.6%増)で増収・増益となった。連結販売台数は228万9000台(同0.4%増)となっている。このほか決算内容の数値については関連記事(トヨタ、通期見通し純利益2兆4000億円に)を参照していただきたい。

決算内容について解説したトヨタ自動車株式会社 専務役員 白柳正義氏

 決算説明会ではトヨタ自動車 専務役員の白柳正義氏が決算内容について解説。9000台増の228万9000台となった第3四半期の連結販売台数は、主に日本や中南米での販売増が要因となっていると説明。営業利益の増減要因では為替が円安方向に推移したこと、原価改善の努力、営業面の努力などが増益要因となり、諸経費の増加などの減益要因と合わせても前年同期比で2350億円増の営業利益となっている。

グローバルでの販売台数は、第3四半期の3カ月で228万9000台、2017年4月~12月の累計9カ月で667万8000台となった
第3四半期は各項目で前年同期からプラスとなっている
営業利益の増減要因では為替が円安になったことが中心だが、それ以外でも50億円の増加となっている

 所在地別の第3四半期における内容では、日本市場では「ルーミー」「タンク」「C-HR」「カムリ」などの販売が好調で、販売台数は前年同期から1万8000台増となる55万2000台を販売。営業利益は同2599億円増となる4711億円となっている。北米市場では販売台数が同1万台減の73万5000台となったほか、営業利益は同743億円減の270億円。これは金利が上昇したこと、リースにおける設定残価を適正水準に見直したことに伴う販売報奨金の増加、カムリの新型モデル切り替えに伴う生産台数の一時的な減少などを原因としている。

 欧州ではC-HRや「ヤリス」が販売を牽引して、前年同期から4000台増となる23万7000台を販売。営業利益も原価改善努力などによって同24億円増となる234億円となった。アジアではインドネシアで融資の与信基準が厳格化されたことで販売が減少した影響から、同2万4000台減の40万4000台の販売となったが、営業利益では販売諸費用の減少、原価改善の努力などによって同37億円増の1220億円となっている。

 このほか、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東などのその他地域では中南米とオセアニアが好調で、販売台数は前年同期から2万1000台増の36万1000台。営業利益は営業面の努力が主な要因となり、同90億円増の341億円となっている。

日本市場では販売増と為替変動の影響などで営業利益、営業利益率が大きく向上
北米では販売台数が減少し、販売面でのコスト増などによって減益となった
欧州ではC-HRやヤリスが好評となり、原価改善などと合わせて営業利益を高めた
アジアではインドネシアで販売が減少したものの、営業利益は1220億円に増加した
その他地域では中南米とオセアニアで販売が好調

 また、通期見通しでは連結販売台数をこれまでと同じ895万台に据え置きとしたが、売上高、営業利益、当期純利益などを前回見通しからそれぞれ上方修正。2000億円増の2兆2000億円とした営業利益については、為替やスワップなどの影響を除外しても、1300億円の増益としており、原価改善、営業面の努力、諸経費の減少といった収益改善に向けた活動でめどが立った部分を通期見通しに盛り込んで修正を行なったと白柳氏は説明した。また、前期となる2017年3月期との比較では、為替やスワップなどの影響を除外した場合には依然として550億円の減益であり、残る2カ月でさらなる収益改善に取り組んでいくと白柳氏は述べた。

 最後に白柳氏は、「今年は期首から申し上げているとおり、競争力を徹底的に磨き上げていく年としており、さまざまな取り組みを進めてまいりました。直近では電動化、自動運転、MaaS(Mobility as a Service)での他社との協業や新技術の開発を通じ、未来のモビリティ社会の実現に向けた取り組みをいっそう加速させております。また、“もっといいクルマづくり”の取り組みにつきましても、TNGAを通じて仕入れ先様と一体となったさらなる商品力強化、原価低減を強力に進めております。さらに、すべての競争力の基盤となる『ものづくり』『イノベーション』の取り組みに注力しております」とコメントして説明を締めくくった。

2018年3月期の通期見通しをそれぞれ上方修正。営業利益は2000億円増としているが、2017年3月期と比較して為替やスワップなどの影響を除外しても増益になることを目指して取り組んでいくと白柳氏はコメント
競争力を強化するため行なっている各取り組み

高い技能を持った人と同等の仕事が再現できるのが自動化のポイント

 このほか今回の決算説明会では、「会社のことをしっかりしてもらおう」という意図から、副社長の河合満氏による競争力強化に向けたトヨタの取り組みを説明するプレゼンテーションが行なわれた。

トヨタ自動車株式会社 副社長 河合満氏

「トヨタの競争力を支えるモノづくり」と題したプレゼンテーションでは、最初に「これまでに生産現場では『品質優先』『原価低減』『生産性向上』を使命として、常に『いいものをより安く量産する』ということに取り組んでおり、これらを具現化する『人づくり』こそがトヨタの競争力だと言えます。今後もどんな大きな変化や課題があっても、こうした『人づくり』に取り組み続けることが必要だと思っております」と河合氏はコメント。自身がトヨタに入社したころは会社としての規模も現在のような大きさではなく、「なにか危機があれば会社が潰れてしまうという危機感を真剣に感じていた」と語り、10年に1度といった割合で危機に直面してきたとこれまでをふり返った。

 そして現在では、電動化やコネクテッド技術、自動運転といった著しい技術の進歩が進んでおり、100年に1度の大変革の時代を迎えていると説明。これまでトヨタは「トヨタウェイ」「トヨタ生産方式」といったやり方をグローバルで進めてきたことにより危機を乗り越え、それを力に変えることで成長を続けてきたと河合氏は語り、直面している大変革の時代を乗り越えて会社が成長し続けていくためには、課題や変化に対して挑戦してやりきる「強いものづくり集団」を育て続けていくことがなによりも重要になると説明した。

現在では世界的な自動車メーカーとなっているトヨタだが、河合氏が入社した当時は2つの工場を持つだけで、危機に直面するたび倒産する危機を感じていたという。そのなかでも「トヨタウェイ」「トヨタ生産方式」などによって危機を乗り越え、実力を積み重ねてきたと解説
河合氏は変化に挑戦することの大切さを語り、例として「アクスルの切削加工を行なっていた現場が、ハイブリッドカーのトランスアクスルのモーター生産に切り替えていったこと」「車体のフレームを作っていた現場で、現在はFCV(燃料電池車)の燃料電池スタックを生産していること」などを紹介

 そうした「強いものづくり集団」を育成する源泉になるのは、トヨタが「人偏の付いた自動化」という考え方であると河合氏は解説。現在はさまざまな現場で自動化が進んでいるが、その自動化は「匠の手作業」「反骨精神」「知恵」「工夫」といった人間の熱意が進化させたものであり、今後も人間は高い技術を持ち続け、機械よりも高いレベルの仕事を続けなければならないと説明。自動化のポイントは、高い技能を持った人がティーチングすることで、機械によってその人と同等の仕事が再現できるようになるところであると河合氏はコメントしている。

 また、「匠の技能」を持つ技術者を育成するためには、技能の原点である手作業によるラインの造り込みが大切であると河合氏は語り、手作業によってものづくりの原理・原則を学び、現場で応用することによって改善を積み上げ、それによって「匠の技能」が生み出されていくとした。そうやって人間の付加価値がなくなるレベルまで改善を続けた後、その作業を自動化していくことが「トヨタにおける自動化」であると紹介。これによって機械が簡単に作業をするようになり、目指すべき「シンプル・スリム。フレキシブルなライン」に続いていくと河合氏は解説。

 最後に河合氏は「私自身、会社の成長を通じて自分の成長を感じたり、ものづくりが楽しいと思えることは、私たちの先輩たちが努力を積み重ね、厳しくも愛情を持ってものづくりの醍醐味を教えていただいたからだと心から感謝しております。その恩返しをするとともに、50年先の若者にも私と同じような体験をさせてあげるために、会社が持続的に成長することは不可欠です。そのために課題や変化に挑戦してやりきるものづくり集団をスピード感を持って育て続けることを徹底的に取り組んでいきます」とコメントした。

トヨタが目指す「あるべき自動化の姿」
高い技能を持った人がロボットにティーチングする重要性を紹介する一例。教える人の技能に応じてロボットが書く筆文字にも大きな差が出ている
実際の生産業務でも、「匠の技能」をロボットに教えることで生産性が改善されている
人間が高い技能を持つことで「あるべき自動化の姿」が実現される
初代「カローラ」がFCVの「MIRAI」に進化したように、これからもものづくり集団を育て続けていくと河合氏はコメント