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京セラ、光学迷彩技術採用のコンセプトカー「Moeye(モアイ)」公開

自動運転を見据えて独自技術を搭載

2020年9月29日 発表

京セラ製コンセプトカーの第2弾「Moeye(モアイ)」を発表

 京セラは9月29日、独自デバイスを数多く搭載したコンセプトカー「Moeye(モアイ)」の開発を発表。説明会を開催した。

 Moeyeは京セラ製として第2弾となるコンセプトカー。自動運転化やMaaS(Mobility as a Service)の普及が進む中で、車室内空間の重要性に着目し、驚きと快適をもたらす未来のコクピットを完全オリジナルデザインの車両で開発された。

 象徴的な機能として、東京大学 先端科学技術研究センター 稲見昌彦教授と協働し、独自の光学迷彩技術を用いてコクピットの一部を透明化してドライバーの視野を拡大。さらに人間の視覚・触覚・聴覚・嗅覚を楽しませる京セラ独自のデバイスを数多く搭載し、クルマとして重要な安全性とエンターテインメント性の両方を兼ね備えた、京セラが考える未来のクルマの世界観を世に問うコンセプトカーとなっている。

 なお、具体的な諸元は未定としながらも、EV(電気自動車)の自動運転車両をコンセプトとして製作されているとのこと。

Moeye
ダッシュボードに3D映像や光学迷彩技術を用いた前方映像を映し出すことができる
空中ディスプレイ
LED照明
「京都オパール」宝飾
京セラのコンセプトカー「Moeye(モアイ)」プロモーションムービー
京セラ「Moeye(モアイ)」コックピットのデモンストレーション
説明会には京セラ株式会社 執行役員上席 研究開発本部長 稲垣正祥氏(左)、東京大学 先端科学技術研究センター 稲見昌彦教授(中央)、株式会社Fortmarei 代表取締役社長 石丸竜平氏(右)のほか、京セラ株式会社 研究開発本部 車載事業推進室 モビリティ推進課責任者 中島康氏、京セラ株式会社 研究開発本部 車載事業推進室 モビリティ推進課 新谷勇志氏が登壇

 同日に開催された説明会では、京セラ 執行役員上席 研究開発本部長 稲垣正祥氏が開発コンセプトを紹介。CASEは「電車やタクシーに乗っていることと同じ」という思いで、単に移動するだけの“箱”とした存在ではなく、「心の奥底にしまい込んでいた冒険の記憶を呼び起こすもの」としてMoeyeの開発を行なったことを語った。

稲垣氏のプレゼンスライド

 続けて、京セラ 研究開発本部 車載事業推進室 モビリティ推進課の新谷勇志氏が「空間を体で感じ、クルマそのものの境界をなくしたい」と話し、採用された技術について説明した。

 特徴的な内装は、光学迷彩技術を用いたコクピットの透明化や、裸眼立体視を用いたUI(ユーザーインターフェース)の空中ディスプレイ、インパネとセンターコンソールに搭載された触覚伝達技術のHAPTIVITY(ハプティビティ)、自然光に近い光を作り出すLED照明 CERAPHIC(セラフィック)、京セラによって作り出された人工宝石の「京都オパール」装飾、ピエゾ素子を用いた振動スピーカー、5種類の香りを噴射させるアロマ芳香器など、五感の中で味覚以外のものを体感できるものとした。

 コクピットの透明化では、シンプルなダッシュボードの位置に光学迷彩技術を採用1.2mのディスプレイを配置。車両のフロント部に搭載した8つのカメラにより、搭乗者の視点から見た車外の映像を作成して透明に見えるかのように映し出すという。そのほかにも、ダッシュボードはクリアでリアルな3D映像を表示することもできるという。

 京セラの独自技術を用いた空中ディスプレイは、ダッシュボード上部の空間に高性能な液晶ディスプレイからの投影映像を結像させ、オリジナルキャラクター“モビすけ”のクリアでリアルに浮かび上がる裸眼立体視が可能。モビすけはクルマの操作説明やおもてなしなどの機能を備えているという。

 LED照明のセラフィックはルーフとドアライトに採用。スペクトルのカスタマイズが可能なため、通常のLED照明では難しかった繊細な色彩表現が可能で、木漏れ日や夕暮れなどの自然光をイメージしたライティングで快適な空間を演出する。

 また、インパネとセンターコンソールにはパネルを指でタッチすると微細な振動を発生させ、クリックしたことを伝えるHAPTIVITYを搭載。UIの操作と連動させてボタン押下の触感を実現することで、映像を見るだけでなく、リアルな触感で操作を可能とした。

 聴覚においては、ピエゾ素子を用いた振動スピーカーを搭載し、車室内に迫力のあるサウンドを提供。耳で楽しめる快適空間を演出するという。さらにヘッドレストにも振動スピーカーを搭載し、ドライバーの耳元にクリアなサウンドを提供することもできるとのこと。

新谷氏のプレゼンスライド

 内外装のデザインコンセプトは“Timeless”として、京都のデザインスタジオであるFortmareiが完全オリジナルなものとしてデザイン。Fortmarei 代表取締役社長 石丸竜平氏が詳細を説明した。

 Moeyeのデザインテーマは「時間」で、これまでの伝統から京セラの描く自動車の未来まで、自動車の歴史を駆け抜けるような体験を提供できるようデザインされている。

 具体的には、離れた場所から見るとクラシックな印象を与え、クルマに近付いていくにつれて外装のカメラを用いたドアミラーやヘッドライトの幾何学的なデザインといった未来を感じるディテールが見えてくる。そして、ドアを開けると最先端技術を取り入れた内装が現われることで、伝統から未来を感じられるようにしたという。

 石丸氏は、京セラのコンセプトカー第1弾モデルのデザインも手掛けており、Moeyeは「京セラの未来、自動車の未来を切り開いていくクルマになればと思ってデザインした」と話していた。

石丸氏のプレゼンスライド

 また、東京大学 先端科学技術研究センター 稲見昌彦教授がMoeyeに採用された光学迷彩技術について説明。最後に京セラ 研究開発本部 車載事業推進室 モビリティ推進課責任者 中島康氏が「自動運転化やMaaSの開発が進んでおり、今後は移動に対して新しい価値が求められると考え、移動空間に着目した」と今後の展望を見据えてMoeyeを開発したと語った。

稲見氏のプレゼンスライド