ニュース
ホンダF1撤退発表を受け、SUPER GTでは開発凍結がマニュファクの議題に SUPER GT 坂東代表
2020年10月4日 14:47
- 2020年10月4日 開催
10月3日~4日の2日間にわたって富士スピードウェイで「2020 AUTOBACS SUPER GT Round5 たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE」(以下、第5戦富士)が開催されている。10月3日には予選が行なわれ、GT500は8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)、GT300は6号車 ADVICS muta MC86(阪口良平/小高一斗組、BS)がポールポジションを獲得し、奇しくも第2戦富士と同じ顔ぶれになった。
10月4日13時30分から決勝レースが行なわれているが、それに先立ちSUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏による定例記者会見が行なわれた。
坂東代表は「2021年は開発を凍結して現行の車両で戦うことをマニファクチャラーと話し合っており、シーズンオフのテストに関してもGTAの管理下で行なう」と述べ、ホンダがF1から撤退を発表するなどモータースポーツにもコロナ発の経済危機が押し寄せる状況の中で、対応を3社と話あっていることを明らかにした。
シリーズ関係者のPCR検査は全員陰性になった。今後は検温/問診票などでの自己管理を継続
──それでは冒頭に坂東代表より一言
坂東代表:お客さまを迎え入れる体制作りをやってきて、お客さまにご来場いただいての第5戦を迎えることができた。これまで4戦無観客で行なってきて、第4戦ツインリンクもてぎ戦の終わりでのPCR検査を、SUPER GTの関係者が1295名、その後に受けた130名、メディア関係者が80名とその後PCR検査を自分で受けたメディアの関係者が11名の合計91名実施。全員陰性だった。
ただ、今回から入ってきていただくスポンサーやレースクィーンの中で1名だけ陽性が出たが、これまで4戦を戦ってきたメンバーは全員陰性だったということで、関係者全員の協力のもとでやれてこれたと考えている。今後も自己管理しながら後半戦をしっかりやっていきたい。
今回お客さまを迎え入れたが、まだ少ない数のお客さまではあるが、メディアのみなさまにもファンのみなさまにも日本のモータースポーツやSUPER GTの認知度を上げていけるようにご尽力をお願いしたい。
──冒頭の代表コメントにもあったが、PCR検査に関して1295名+130名、今後定期的に行なっていく計画はあるのか? F1などでは毎戦ごとに行なうという体制になっているが、SUPER GTではどんな形になるか?
坂東代表:PCR検査は、日本の自動車関連企業が日本のモータースポーツを支える取り組みの一環として協力してもらって実現した。日本ではPCR検査は保険が効かず、4万円程度かかるので毎回という訳にはいかない。
FIAからは、「インターナショナルレースでは96時間以内にPCRを受けてから」という通知が9月1日にJAFを通じてあった。しかし、SUPER GTでは過去4戦において独自のガイドラインを作り、独自のロードマップに従ってやってきた結果、関係者は全員陰性だったということを踏まえて、自己管理の体制で一丸となってやっていくとFIAに陳情している状況。
その中で金銭的なものもあるし、各国によって状況が違うということをFIAにも伝えてある。今日もJAFの村田氏、メディカル委員会のみなさまも来ていただいて、協力して体制を作っていこうと離している。
今後も約1500名が自己管理を徹底しながらレースをやろうというつもりで、その部分を嘆願している。今のところはPCR検査を再度やるという予定はない。
──富士のレースを開催するにあたり、政府が新型コロナの防止策を徐々に緩和していることにしたがって、今回から観客に入っていただいている。政府の基準もキャパシティの50%になっているが、モータースポーツではそれに従って、例えば富士スピードウェイでは何万というお客さまを入れることができる。GTAとして今後をどう考えるか?
坂東代表:モータースポーツは屋外で行なっているので三密にはなりずらい。オーガナイザーと連携を取りながら、富士の場合は今年3回目のレースになり、無観客からお客さまを入れるようになった。
この状況をモビリティランドにも伝えて、段階的だがお客さまの導線など引っ張り方を伝えている。富士ではパドックの1階はチームや関係者、2階はスポンサーなどのお客さまとなっており、トンネルを通ってお客さまがパドック側に来ることができないようにとやっている。その中でイベントなどの行事はまだ行なえていない。導線の引っ張り方はオーガナイザーにお願いして、どうやって魅力のあるイベントを作っていけるのか、それをしっかり考えていきたい。
コロナ対策をやりながらお客さまにも自己管理をやっていただきながら、お客さまに入っていただく。例えば富士ではグランドスタンドは2万席あるが、それを全部使っているわけではない。
今回のところがギリギリ、面積比率でそういうところに配慮しながらやっていく。パドックやイベント行事などにも行動制限が入ってしまっており、お客さまに入っていただく場所にも制限をかけている状態。その中でもお客さまが楽しめる楽しみ方は何なのかを考えていかないといけない。
政府の緩和方針ももちろんあるが、モータースポーツにはモータースポーツを作り上げるための方法があると思う。例えば野球やサッカーなどではPCR検査をどんどんやっている。我々も1500人を一度やった訳だが、それを毎戦できる可能性はまだ低いので、その状況の中で自己管理、防衛体制の策をしっかりやっていくということだ。
もちろんお客さまの人数を増やしたいということはあるが、それだけ追いかける訳にはいかない。あくまでガイドラインを作り、独自のロードマップを設けてきて取り組んできて、今回のお客さまに入っていただくということを実現した。今後も関係各所と協力して連携を取りながら、お客さまに来ていただける環境を作っていきたい。
──GT300のウェイトハンデは、今年からポイントの3倍になっているが、第4戦が終わった段階でマックスとなる100kgを超えている車両がすでに3台出ている。その一方GT500では重量が重すぎると影響が大きすぎるとして、51kg以上ではウェイトと燃料リストリクターの組み合わせになっている。そうしたGT300のウェイトハンデの今後の考え方と3倍にした理由は?
坂東代表:GT300の方で言えば、マニファクチャラーが作ったクルマ(筆者注:FIA GT3のこと)は丈夫であるということだ。値段も高いけど、丈夫だ。JAF-GTの方ははモノ作りを重視した規格だが、軽量をコンセプトに作られているということはある。
FIA-GT3に関しては100kgということでかなりハードにはなるけどもまだ大丈夫だと考えている。ただ、JAF-GT勢に関しては軽量というコンセプトに重量を積んでいくことになるので、将来的には(レギュレーションを見直して車重を)1200~1250あたりをベースに考えて、それに合わせてエンジンも強化しないといけないかもしれない。
f
GT500の燃リス(燃料リストリクター)に関しては今回の予選の結果を見ると、バランスは取れていると思う。これでシリーズを通して面白みのあるレースを最終戦まで持って行けると思う。燃リスに関しては幅に関しては違うのだがITRでも使っている。ただ、これをGT300に入れるとなるとメンテナンスなどのコストが大きくなってしまい、全部に入れるというのは正直難しい。今の1ポイント×3kgという設定で100kg以上を積めばいいじゃないかという議論もあると思うが、そうするとブレーキやタイヤに過酷になっていくのでそれ以上は難しい。例えばツインリンクもてぎのレースなどでは250kmを300kmにしたのでより厳しくなっている。きちっとした制動、安全に乗っ取った規則を作っていかないといけないと思っている。
3メーカーと話し合って2021年に関しては現行車両で開発は凍結の方向
──一昨日にはSUPER GTにも参戦しているホンダが、2021年をもってF1から撤退すると発表した。そのことがSUPER GTに影響を与える可能性はあるか?
坂東代表:ホンダの八郷氏(筆者注:本田技研工業株式会社 代表取締役社長 八郷隆弘氏)の記者会見を見た。会社としてのホンダがF1をやり、そこの社長がF1を終わらせると発表するのは、八郷氏としては断腸の思いで決められたのだろうと感じた。仮に自分が八郷氏の立場だったと考えれば、自分が決めたこととはいえ、それを終わらせるというのは悔しいのだろうなと感じた。
企業としては、モータースポーツは営業戦略の中の1つのコンテンツであるので、八郷氏がおっしゃられたことには意味があると思う。その意味で日本のモータースポーツ界への影響としては、コロナという状況の中で、今後モータースポーツが変わるときが来ると思う。
化石燃料から、EV、水素への移行もあるかもしれないし、自動車の販売に関しても変わってくる。そうした中でSUPER GTに関しては2023年までは今のレギュレーションで行ないたいということを、昨日マニファクチャラーと会議を開いて確認してある。
特に来季に関しては、開発の凍結も1つの考え方であると議題に上っている。11月28日に最終戦が終わってから、来年3月の岡山での公式テストが始まるまで、シーズン外に行なわれるプライベートテストやタイヤメーカーのテストをGTAでコントロールするという話をしている。
こういう厳しい状況の中で迎えることとなるので、きちっと中長期のビジョンに結び付くようにしないといけない。その上で来年を迎えて、23年まで今の規則というのは、以前からそういう話をしていた。
──ということは、例年タイヤメーカーやメーカー独自に行なっていた12月のセパンテストは今年はいかない、ということか?
坂東代表:年末はやらないし、行かせない。今年に関してはセパンテストは全員行かせない。2月のテストに関しては話し合いをしており、国内での車両テストが6月~7月になるのならセパンのテストに行った人はそこはテストできない、そういう方向性で考えている。もちろん12月にセパンでテストしないというのは、新型コロナの状況も影響している。
──今回有観客のレースを行なうにあたり、自動車工業会、自動車メーカー、部品メーカーから支援などはあったか?
坂東代表:協力してもらったというのは主に資金面だ。自動車関連企業とはPCR検査とかそういうことにご協力いただいている。一企業名を出すなということもあるが、JAFを含めて自動車関連企業が日本のモータースポーツを支えるという意味で、ご支援をいろいろな角度から行なっている。そうした自動車関連企業が日本のモータースポーツを支えるということ考え方を持って頂いているのは大変有り難いことだ。
──PCR検査に関しては、残り3戦でも行なうか? それとも行なわないのか?
坂東代表:今の時点では行なう計画はない。今後の残り3戦に関しては問診と検温という前半の4戦と同じ自己管理を行なって頂くことになる。報道関係者に関しても、PCR検査を受けないとパドックに入れないという規制を今回はかけたが、それは今回限りとなる。
F4に関しても今回はPCR検査をしていないので、関係者はパドックに入れないという形になっている。その仕組みは今後も続けて行くことになる。GTのパドックの関係者がF4でも監督を兼ねている場合などもあるため、そうした関係者などがF4に行くことは許可しているが、その逆は不可だ。今回はお弁当の受け取りに関してもサーキット内のレストラン(筆者注:オリヅルのこと、パドック内にある)に取りに来てもらうが、それも時間を決めて行なってもらっている。そうした規制は今後のレースでも続けて行くが、(スペースに限りがある)ツインリンクもてぎでどういう運用にするかは今調整中だ。来年どうするかも今年の経験を踏まえて今後話合っていきたい。
──今シーズンに関してはスポーツランドSUGO、岡山国際、オートポリスという遠隔地のサーキットに関しては開催しないというカレンダーになっているが、来年これらのサーキットに関してはどうなりそうか?
坂東代表:カレンダーに関しては6月にJAFに提出したとおりで8戦をスケジュールととして組んでいる。電車などの公共交通機関を使わないでやれるサーキットでやるということで、今年はそれらのサーキットではレースをしていない。
しかし、すでに飛行機も満席になるようになっているし、電車に関しても三密にならないようになってきている。それらを考え合わせると、来年はいけるのではないかと考えている。ただ、タイとマレーシアに関しては日本人を受け入れてくれるのか、それは向こうの国の方針次第だし、仮に入国出来たとしても2週間の滞在をどうするのか、向こうとこれから話あっていかないといけない。ただ、すでにお話ししたとおり基本は8戦だ。
──お客さまを迎えることになったが、まだイベントは行なえていない。ステージやピットウォークなどのイベントの復活に向けてロードマップなどはあるか?
坂東代表:率直に言って、ピットウォークやスタンド裏のトークショーだったり、レースクィーンのステージだったりなどに関しては、今すぐ緩和というのは難しい。例えば今回のレースでは全部の観客を合わせれば1万人ぐらいになっており、お客様にも自己管理をお願いしている状態で、どこの段階でそれを緩和してこうしますというのは言えない状況だ。
自分個人としては、ここまでやったのだから、もっと緩和してもいいじゃないかと思わないこともないが、例えばここで行なわれる最終戦(第8戦富士)では11月で寒いからどうしてもみんな押しくらまんじゅうみたいになってしまうかもしれない。次は3月のレースだから、それまでだから大丈夫でしょとか無責任なことはいえない。1つ1つ緩和できることを少しずつやっていきたい。
──最後に代表から一言。
坂東代表:今年みなさまのご協力があってここまでやってこれた。今回お客さまを迎え入れることができたので、1つ1つやっていきたい。その中で、報道関係者のみなさまや、SNSなどでの取り組みで、日本のモータースポーツの魅力、SUPER GTの魅力を世界に素晴らしいコンテンツだとアピールしていきたい。お昼からは室屋氏も飛んでくれるし、元には戻らないかもしれないけど、新しいものを提案していきたい。今日もいいレースになると期待している。