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SUPER GT 坂東代表、8戦を全部やっても正直赤字。中長期を見据えたモータースポーツを作り上げていく

お客さまを入れてのレースは第5戦以降

2020年7月19日 開催

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT開幕戦「2020 AUTOBACS SUPER GT Round1 たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE」が7月18日~19日の2日間にわたり富士スピードウェイで無観客開催されている。SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下、GTA)は、同社 代表取締役 坂東正明氏による定例会見を予選と決勝の間の限られた時間の中で行なった。

 この中で坂東代表はSUPER GTが観客入場制限を緩和するのは第5戦が行なわれる10月以降になる見通しだと明らかにした。それを実現するために、現在無観客で行なっているレースで、関係者の問診、検査、検温、他チームとの交流を行なわないなどの感染症対策を確実に実行し、1つ1つ前に進めていくという「ステップバイステップ」の取り組みを強調した。また、坂東代表は現在は行なわれていないFIA F4などのサポートレースに関しても第5戦以降に行なう計画であることを明らかにした。

 また、今年の無観客などの形態のレースでの収支は「赤字」であることを明らかにし、それでもシリーズを開催していくのは日本のモータースポーツの発展にとってこうした1つ1つ前に進めてイベントを復興させていく取り組みが重要だからだという認識を明らかにした。

観客ありのイベントは第5戦以降に計画、1つ1つ実績を積み重ねていく

GTA 坂東代表

──それでは坂東代表から冒頭の発言をお願いしたい。

坂東氏:なんとか開幕を迎えることができた。東京では毎日200人が4日間連続で陽性になるなどの状況で、この先も不安は残るが、なんとか段取りを組みながら開幕を迎えることができた。関係者のみなさまのご協力に感謝したい。また、山口ドクターやスタッフをはじめとして1350名の関係者に、オーガナイザーやオフィシャルなどの350名という1700名の関係者だけが参加し、2週間にわたる問診、検診、検温等の取り組みをして今日の開幕を迎えた。このような状況であるが、開幕戦を迎えられたことを皆様の協力のお陰だと感謝している。

──政府の方針や、スポーツイベントも観客で導入する動きも進んでいる。SUPER GTの入場規制緩和について、最初の4戦は無観客という予定だと聞いているが、GTAとしてのロードマップについて教えてほしい。

坂東氏:今回のレースでは、先ほど述べた1700人の関係者が、2週間前から問診票や検温などを行なってもらっており、そうしたことを1つ1つ積み上げていって、最終的にゲートでの検温を行なってもらいここまで来ている。それが確実にできたら、次にサポートレースやスポンサー各位をコントロール下に入れた上で入場していただくことになる、お客さまに来ていただくにはどうしたらいいかを一歩一歩積み上げっていっているのが今の段階。その後、オーガナイザー、オーガナイザーのスポンサー各位もコントロール下に入れ、こちらも一歩一歩積み上げていく。1つができたので、次にプラスαで……そうしたやり方で少しずつ進んでいく。

 そのため富士でテストをやり、今回の開幕戦を迎えている。今回はワンデーだが、8月に行なうレースでは2デーにする(筆者注:予選を土曜日に行ない決勝は日曜日行なうという意味)。それらを鈴鹿サーキットやオフィシャルも違うツインリンクもてぎにも見てもらい、後半戦に向けてどうしていくか話し合っていく。

 前半4戦は無観客でさまざまコントロールしながら一歩一歩進め、10月からの後半戦でやっていけるかを確認していく。これらは1つ1つ繰り返して確認しながらやっていくということだ。お客さまを入れてのレースというのは第5戦以降で検討していく。

 この状況下では5000人のお客さまが一杯かもしれないし、もっと目一杯入れられるかもしれないが、それらも1つ1つ確認していきやっていくということだ。ただ、お客さまを入れる場合にはチケット販売という問題もあるので、1か月前には何らかの決定をしなければいけないので、それも考慮にいれながらやっていきたい。

──SUPER GTではFIA F4をサポートレースとして開催しているが、今シーズンのFIA F4はどうなるか?

坂東氏:サポートレースは今の段階としては5戦目から予定している、5戦目から3レースずつ12レースを行なう計画。F1のスーパーライセンスポイントを得るためには、5大会14レースが必要になるという既定があり、現在JAFを通じてFIAとこういう状況なので認めてほしいという交渉をしている。なお、14あるレースが12になるので、サプライヤーやスポンサーへのお願い、さらにはエントラントとのエントリーフィーの問題などについて話し合っている。

──DTMとのクラス1規定についてGTAは取り組んできたが、DTMでは2メーカーのうちの1つであるアウディがDTMから撤退を発表し、シリーズがどうなるのか不透明になっている。その受け止めは?

坂東氏:非常に難しい質問だ。昨年ここ(富士スピードウェイ)で行なうことができた交流戦は、1つのステップとして世界的にも大きなインパクトがあるイベントになった。関係者一同、1つ前に進んだと自負している。(DTMのプロモーターである)ITRも、新型コロナウイルスの騒ぎの中で大変なことになっており、アウディの撤退後どうするのかや今後の交流戦をどうするのかについての話はまだできていない。

 ただ、クラス1というのは技術規則であり、SUPER GT/GT500のレギュレーションは今後もこれに則りやっていく。本来はイベントとして一緒にやっていくことが理想だが、アウディの撤退という状況の中では正直イベントの形としては難しい。だが、技術規則としてはこのままやっていく。ITRとの関係も、今年の暮れにライセンス契約とかもあるが、それも継続しながら協力してやっていこうと思っている。

今年は全8戦やっても赤字となる見通し。日本のモータースポーツのため一歩一歩前進する

──今年のスケジュールでは富士で4戦あるが、みな300kmレースだと聞いているが、差別化をする計画はあるか?

坂東氏:新型コロナウイルスの関連で、公共機関を使っての移動ということを考えてロードマップを作り上げてきた。富士スピードウェイ、チーム、スタッフ、ここにお住まいの方、そして自家用車で来ることができるサーキットをメインにするということで富士4戦ということでやってきた。オートポリス、岡山国際、スポーツランドSUGOなどに対してはご協力いただき、このスケジュールを作ってきた。

 ただ、富士の4戦でそれぞれどんな距離のレースにするかはまだ発表していない……。誰がそんなことを言っているのかよく分からないが、これから相談して決めたいと考えている。また、富士で4戦あるので、この富士で誰が「マイスター」なのかを、GT500でもGT300でも決めていく、富士スピードウェイと相談してそういう形を作り上げていきたいと考えている。

──日本のモータースポーツ業界にとって、現在は非常に厳しい状況だと思う。そうした中で、モータースポーツ版のBCP(Business Continuity Plan、事業持続計画)のようなものが必要だと思うがそれについてGTAとしてはどう考えているか?

坂東氏:それも答えるのが難しい質問だ。モータースポーツの世界でイベントをどう続けていくのかみんなが考えていく必要がある。我々としてはほかのプロモーターがどう考えているかよりも、まずは1700人でのイベント、そして数千人を入れてのイベントを1つ1つ積み重ねていく。

 その中で、チーム、スポンサーの継続性、みんながどうやってこの苦しい状況を乗り越えていけるかを考えている。この8戦を全部やっても正直赤字だ。それでもチーム、タイヤメーカー、マニファクチャラーと協力して1つのモータースポーツの形を作っていくことを重視している。これを見本にしろなどというつもりはないが、少しでも我々がそれを乗り越えていくことが形として見せることができれば幸せなことではないだろうか。

──次のステップに向かうための基準は? 先ほど赤字という話が出たが大丈夫なのか?

坂東氏:実はお客さまを入れて行なっても、赤字は変わらない。今のビジネススタンスはそうした形では成り立っておらず、今の事業計画では8戦すべてやっても赤字になる。会社として赤字になるかはこれからの話だが、大丈夫ではないと思うならぜひ弊社に投資をお願いしたい(笑)。

 どこの時点でオッケーかという話ではないし、陽性者が出たから終わりということでもない。仮にチームに陽性者が出た場合でも、そのチームだけで終わりにできるかどうかが重要になる。濃厚接触者も含めて確認できれば、2週間そのチームを除けばレースはやることができる。そうした体制を作り上げるかどうかが大事だ。発生しても状況をきちんと確認できるなら先に進めることができる。

 その辺りは行政ともきちんと相談していきながら、何人ならお客さまを入れて大丈夫とか、決めていく必要がある。我々はPCR検査をできている訳ではないので、1つ1つ確実に進めていく、それが大事だ。

──代表より最後にメッセージを。

坂東氏:このような状況下のスタートだが、1つ1つ確実にやりながら、プラスの方向性を目指し、中長期を見据えたモータースポーツを作り上げていくことが大事だと考えている。メディアのみなさまにもご協力いただき、1つ1つ前に進められるイベントを作り、日本のファンの皆さまにも楽しんでいただけるメッセージをお伝えしていきたい。今後も一緒にそういう状況を作っていきたい。

 今日のワンデーレースは幸いなことに天気もよくなってきており、みんなで一緒に頑張って前に進めていきたい。