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ホンダ、新型「オデッセイ」の進化点を紹介 商品説明会レポート
「家族を幸せにする唯一無二のミニバン」「変わっていない部分も改めて伝えたい」
2020年11月5日 11:30
- 2020年11月6日 発売
- 349万5000円~458万円
本田技研工業は、上級ミニバン「オデッセイ」をマイナーチェンジして11月6日に発売する。価格は349万5000円~458万円。
今回のマイナーチェンジではエクステリアデザインを刷新するとともに、コンビメーターパネル内の高精細フルカラー液晶パネルを大型化するなどインテリアの質感を向上。また、日本初のジェスチャーコントロール・パワースライドドアや、ホンダ初の予約ロックの搭載による使い勝手の向上、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」に後方誤発進抑制機能を追加するなど、商品の魅力を高めた。
グレードなどの詳細は「ホンダ、『オデッセイ』マイナーチェンジ 価格は349万円5000円から」で、装備などの詳細は「写真で見る ホンダ『オデッセイ』(2020年マイナーチェンジモデル)」で、ジェスチャーコントロール・パワースライドドアについては「ホンダ『オデッセイ』に日本初採用された『ジェスチャーコントロール・パワースライドドア』とは?」で別途紹介している。本稿では、事前商品説明会で行なわれたプレゼンテーションについて紹介していく。
家族を幸せにする唯一無二のミニバン
まずは、市場投入に至った背景と市場環境について、本田技研工業 商品ブランド部 商品企画課の岸本賢治氏が説明。新しいオデッセイは「家族みんなが使いやすい」「室内は広く使い勝手がよい」というユーザーニーズを満たすために、ホンダ独自の超低床技術で室内空間と乗用性能の両立を実現。1994年に初代オデッセイが誕生してから、“時代に合った家族みんなが使いやすいクルマ”の理想を追い求め、独自のポジションを築いてきた。
現在はユーザーの価値観が「生き方そのものを豊かにしていきたい」という方向変わってきているといい、自分の幸せだけではなく家族や子供の幸せも考えるようになっているという。そのニーズに応えられるように、今回の新しいオデッセイが開発されたとした。
新しいオデッセイは、5代目オデッセイが築いた「超低床プラットフォームの乗用価値×ユーティリティ価値」をベースに、「フラグシップとしてのデザインや静粛性、乗り心地の上質進化」「ミニバンとしての使い勝手やおもてなし装備追加という本質進化」を加え、「家族を幸せにする唯一無二のミニバンへと進化した」と岸本氏は語った。
ユーザーの声に真摯に向き合って開発
技術領域については、本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター 開発責任者の長毅氏が説明。新しいオデッセイのグランドコンセプト「Next 7 Seater Premium Saloon」に込めた想いについて「広さに代表されるようなユーティリティ価値と、使いやすさや走る楽しさといった乗用価値をベストバランスさせたクルマにするというのが一番の根底にあります。それぞれの時代ごとにふさわしい商品価値を提供していこうと、“NEXT QUALITY”というキャッチフレーズを使い、チームの中で意思統一をして開発をしてきました」と紹介。
続けて「奥さまもクルマを運転する機会が多いはずなので、奥さまが怖がらずに車庫入れなどで運転しやすいサイズ感はどのぐらいなのだろうと調べた結果、これならば大丈夫というのが今のオデッセイのサイズになっています。ただし、当時に合った技術ですと室内空間が狭くなってしまうので、超低床プラットフォームを使ってフロアから下の部品を薄くすることに重点を置いて開発をすることで、運転しやすいサイズと広い室内を両立しました」と、オデッセイを開発するにあたって最も気を配ったことについて語った。
マイナーチェンジの方向性については、ドラスティックに方向性を変えることはできなかったため、正常進化の方向性でありつつも「進化幅をこれまでの域を超えて2段階も3段階も進化させるという方向性でやってきています」と紹介。エクステリアデザインを「オデッセイが新しくなったね、変わったね」とはっきりと分かってもらえるようにリフレッシュするとともに、今の時代に追いつくために電装系の装備を強化した。
また、「他社もやっていないような技術」というジェスチャーコントロール・パワースライドドアを日本初採用。使い勝手をよくするアイテムではなく「こんなこともできるんだ」という驚きや共感を得られるような装備になるように開発を行なってきたとした。
さらに、これまでデザインなどとの兼ね合いで搭載できなかったというパワーテールゲートを、ユーザーニーズに応えるために追加。家族みんなで使うための室内の使い勝手も強化するなど、「お客さまの声に真摯に向き合わないと的外れな商品になってしまうので、そこを外さないようにいろいろな方からの声を聞いて、最大限できることをやった」と、ユーザーの声に応えつつ既存のよさをより磨きあげたとした。
お兄さんの「エリシオン」に近付いたエクステリアデザイン
大幅に刷新したデザインについては、本田技術研究所 デザインセンター オートモービルデザイン開発室 デザイン エクステリア担当の森岡圭介氏が紹介。今回の開発にあたり、デザインのコンセプトに「STYLISH PREMIUM」を掲げ、フロントフェイスの厚みや強さで車格を表現するとともに、ワイドでシャープなメッキを細く品よくあしらうことで、クルマのよさを表現したという。リアまわりはクルマの厚みによってクルマの力強さを表現するとともに、セパレートになったリアコンビネーションランプとまっすぐ走っているメッキを使うことによって、上質さを表現した。
フロントまわりの灯体については、時代性と車格を考えてフルLED化。薄型化して余ったスペースにデイタイムラインニングランプを配置することで、オデッセイの車格を表現したという。また、リアコンビネーションランプもフルLED化して、メッキの上部にストップランプ、下部にシーケンシャルターンシグナルランプとバックランプを配置。リアコンビネーションランプは車格を表現するためにあえて薄型化はせず、立体交差する特徴的なデザインにすることで、上質さなどを表現したという。
森岡氏は参考にしたクルマとして、中国にある兄弟車の「エリシオン」を挙げ、「エリシオンは車格がワンランク上のお兄さんのような存在で、このお兄さんにちょっと近付いていった」と説明した。
華々しい装備だけではない細かい部分もブラッシュアップしたインテリアデザイン
インテリアデザインについては、長氏が紹介。今回は、クルマの中で最も視線が集まるものが多いというインパネまわりを大きく変えることで、効率的なリフレッシュを図ったという。その中でも、エアコンの操作パネルやシフトまわりを従来の硬い素材からソフトパッドにすることで、手触りの上質さに配慮してきたとのこと。
インターフェイスについても磨きをかけ、コンビメーターとナビゲーションをアップデート。従来のコンビメーターから、7インチのTFTパネルを用いた2眼の新しいデザインに変更し、新鮮さを加えた。ナビゲーションは、業界的に画面サイズが拡大していることに伴い、10インチにサイズアップすることで、マルチビューカメラの映像の見やすさも向上した。
そのほかにも、シンプルな水平基調のインパネデザインを採用することで、運転しているときに余計な情報が入らずじゃまにならないようにしたという。そのシンプルさの中にも機能をちりばめ、助手席リッド付き大型収納ボックスや、運転席側の高めの位置に収納式カップホルダーを採用し、ユーザーからの声にあった収納力の向上やカップホルダーの使いづらさの改善をした。加えて、撥水撥油シートのFABTECTを採用することで、子供の食べこぼしなどを掃除する際の手間を軽減して、車内で過ごす際のストレスを減らしている。
これらについて長氏は「華々しい装備ではないのですが、実際に使っている中では必要になってくるというか、あると助かるな、というようなところも忘れずに開発をしてきました」と話した。
走りのよさはそのままに静粛性を向上
ダイナミック性能については、本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター パワートレーン開発責任者の河口展之氏が紹介。Premium Saloonをコンセプトに、先代オデッセイの走りや燃費をキープしつつ、乗る人すべてが満足するようにNVを向上させ、上質と本質を鍛えていったという。
パワートレーンのラインアップは、CVTと組み合わせたガソリンエンジンモデルと、ハイブリッドの2種類。ガソリンモデルについては先代モデルにあった直噴エンジンを廃止し、アブソルートの装備を価格を抑えて手に入れられるようにしたという。これについて河口氏は「CVTとの協調によりまして、先代モデルと同様の走りと燃費をご提供できると考えています」とした。
静粛性については本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター 車体研究開発責任者の田中賢治氏が紹介。5代目オデッセイの静粛性については、音の発生原因を調べて、音源から対策をすることを念頭に置いて開発をしたという。今回はタイヤを変更するとともに、ホイールにレゾネーターを設けることで、段差を越える際の音を低減。
さらに、フロントドアやスライドドアに遮音ガラスを適用して、風きり音などを抑えるとともに、熱線が入っているため遮音ガラスを用いることができないテールゲートのガラスは板厚をアップすることで静粛性を高めた。田中氏は、「今回は特に2列目席にターゲットを絞りまして、3列目とともに静粛性を向上させるという目的で対策を行ないました」と今回の改良について語った。
使い勝手と快適性を向上させる初採用の新機能
安全運転支援システムは、本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター 車体設計開発責任者の河野英治氏が紹介。全車標準設定となるHonda SENSINGについて、新たに後方誤発進抑制機能を追加して、後退時の急発進の防止を図った。
加えて、ユーザーからの要望が高かったというハンズフリーアクセスパワーテールゲートを新たに追加したことについて、「デザインの刷新に合わせたタイミングでの投入となりますが、見た目だけでなく使い勝手も向上したいということから採用となりました」と説明。駐車場のスペースに限りがある場合のことも考え、任意に高さ設定をできるようにしたほか、大きな荷物で両手が塞がってしまっている場合にも使えるようにキックセンサーを搭載した。このキックセンサーは、初めて使うような場合だと探すような動きになってしまうこともあるため、キック動作だけでなくそういった動きにも対応しているという。
続けて、ジェスチャーコントロール・パワースライドドアについて本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター ボディー/エクステリア開発担当の賀川賢一郎氏が紹介。ジェスチャーコントロール・パワースライドドアでは、ジェスチャーの操作をLEDの光でガイドする光の演出と、パワースライドドアをジェスチャーで操作できるという、先進性と操作の楽しさを実現。ジェスチャーを静電操作で検知するという世界初のシステムを開発し、今回日本で初めて採用に至ったという。
賀川氏は「操作自体を光でガイドしてくれるという部分にかなりこだわりました。何より、光の演出とジェスチャー操作でパワースライドドアを開けるという、新しい価値を提供できると考えています」と語った。
また、ホンダ初採用となる予約ドアロックについては河野氏が紹介。これまで、ドアを施錠する場合にはパワースライドドアが閉まりきるまで車両を離れることができなかったが、予約ドアロックを採用することでドアが開いた状態でもドアの施錠が可能になったため、車両から少し離れた安全な位置でもドアロックを確認することができるようになった。
機能としては、ドアが開いた状態でロックボタンを押すとブザーが鳴って予約ドアロックが可能になり、すべてのドアが閉まるとドアロックが作動。ブザーが鳴ってハザードランプが点灯するとともに、ドアミラーが格納されるというものとなる。予約ドアロックの各フェーズにおいて音と視覚のアンサーバック機能を採用しているため、安心・快適に使えるようになっているという。
個性や使い勝手を高める純正アクセサリーをラインアップ
純正アクセサリーについてはホンダアクセス 純正アクセサリー開発担当 小林哲也氏が紹介。車両のデザインコンセプトであるSTYLISH PREMIUMをさらに昇華するとともに、個性を求めるミニバンユーザーに対して「Reborn Absolute」というコンセプトを定めて開発。
今回のオデッセイでは、イメージを大きく変えるフロントグリルを開発。車両標準のメッキをブラックアウトさせ、よりシャープさを演出したフロントアッパーグリルに加え、ハニカム形状の大開口イメージでミニバンの迫力とスポーティさを表現したフロントミットグリルを設定した。また、メッキがアクセントカラーとなるドアミラーガーニッシュやテールゲートスポイラーも継続してラインアップしている。
内装アイテムでは、上質な空間をさらに演出するため、イルミネーションを各種ラインアップ。従来のブルーイルミネーションに加えて新たにホワイト仕様が追加されている。また、スマートフォンやタブレット端末の充電に欠かせないUSBチャージャーも、ユーザーの用途に合わせてインパネアッパーボックス部、インテリアパネルセンターロアー部、3列目サイドドアライニング(運転席側部)と複数種類が準備されている。
ナビゲーションは、オデッセイ専用となる10インチ プレミアムインターナビ(VXU-217DYi)を設定。車両と連携してステアリングリモコンやマルチビューカメラシステム、USBやHDMIジャックを使ってユーザーの快適なドライブをサポートする。また、ナビのオプションとして11.6インチのフル液晶パネルを採用したリア席モニターを設定し、ナビとのデジタル接続によりリアでも高画質の映像を楽しむことができるようになっている。さらに、静粛性の向上に合わせてハイグレードスピーカーシステムも性能が向上している。
進化とともに変わっていない部分も伝えたい
最後に長氏がまとめとして、「進化させるところはお客さまが見てはっきり分かるようにというところを大事にして開発を行なってきました。このモデルは5代目が登場してから7年の月日が経っておりますので、変わってない部分でももう一度お客さまに伝えたいという想いがチームの中にあります」。
「例えばコンセプトのところでもご説明いたしましたが、誰でも扱いやすいサイズ感でありながら、室内はとても広いといった価値観、小さなお子さまやご年配の方でも楽に乗り降りができる超低床プラットフォームを受けたステップ、さらにはオデッセイが歴代使っております3列目のマジカルシートを使い、セカンドシートが約700mmも後ろに下がるような機能も付いています。700mm下げますと普通の乗用車では味わえないような室内空間になります。そういったところの価値もまたお伝えしていきたいと思っています」。
「また、ホンダのクルマですので、特にハイブリッドは走りと燃費、これをどちらかとるのではなく両方とりにいったパワートレーンのもたらす走りの楽しさ、こういった変えていないところもお客さまに見ていただいたり、触っていただいてもらったりして、感じていただければなと思っています」とオデッセイに対する想いを語った。