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SGTもてぎ戦で、ホンダ「NSX-GT」が史上初のトップ5独占 佐伯チーフエンジニアに勝利の理由を聞く

八郷社長に「初めてほめるよね」と言われた

2020年11月8日 開催

本田技術研究所 HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏

 SUPER GT第7戦もてぎが、11月7日~8日の2日間にわたりツインリンクもてぎで開催された。11月7日に行なわれた予選では、64号車 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組、DL)が第3戦鈴鹿に引き続き今シーズン2回目のポールポジションを獲得。2位は8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)、3位は100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)と、ホンダのNSX-GT勢が1-2-3と上位グリッドを独占した。

 この勢いは11月8日に行なわれた決勝レースでも続き、予選2位からスタートした8号車 ARTA NSX-GTが優勝し、ポールからスタートした64号車 Modulo NSX-GTが2位に、予選3位からスタートした100号車 RAYBRIG NSX-GTも3位に入り表彰台をホンダ勢で独占した。

 それだけでなく、4位には16号車 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京、YH)が入り、10位グリッドからスタートした17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)も序盤の追い上げなどが功を奏して順位を上げて5位に入ったことで、ホンダ勢による1-2-3-4-5フィニッシュをSUPER GTの歴史上初めて実現した。

SUPER GT第7戦もてぎで優勝した8号車 ARTA NSX-GTの鈴木亜久里監督(左)、福住仁嶺選手(中)、野尻智紀選手(右)
2位に入った64号車 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組、DL)
3位に入った100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)
4位に入った16号車 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京、YH)
5位に入った17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)。17号車はシリーズランキングトップに立った

 決勝レース後にはホンダ NSX-GT開発をリードする本田技術研究所 HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏によるオンライン会見が行なわれた。

ほかのメーカーと比較して中盤でのペースはよく、セーフティカーがなくても上位は独占できていた

──それでは佐伯氏からレースの振り返りをお願いしたい。

佐伯氏:予選ではフロントロー独占と、1-2-3のグリッドを獲得できたが、その時点では今日のレース結果のように1位~5位を独占できるとは思っていなかった。

 前回のレースとは逆に、今回はセーフティカーの入ったタイミングがホンダに味方してくれた。ただ、勝因はそれだけでなくレースペースを見ていくと、NSX-GTすべての車両がタイヤマネジメントを含めて安定したペースでレースを行なうことができていた。

 このレースに来る前はチャンピオン争いから脱落するかも……という不安も感じていたが、今回は上位を独占することができたため、ランキング上位に入っているホンダ車が3台に増えたのはチャンピオンへのチャンスが広がった意味があると思う。ただ上位はポイント差がほとんどないし、ストレートでは若干置いていかれる富士スピードウェイが舞台なので、最終戦もしっかり頑張りたい。

──トップ5独占、今の佐伯氏の心境は?

佐伯氏:自分がSUPER GTのLPLになったのは17年からなので、過去に取れてなかったんだというのが正直な感想。レース中盤から1-2-3-4-5になっていた時には、ほかのメーカーも結構いいペースで走っているクルマもあったので、45周ぐらいまでは心配はあった。その後は本当に抜け出しちゃったねという感じでした。そうした中で自分の想いなどはとくにはなかった。

──17号車が10位グリッドから5位に入ったのは大きかった。レースでもほかの車両と競り勝って5位に上がった、その要因は何か?

佐伯氏:難しいところはあるのだが、前に出れば速く走れるクルマになっていたことが大きく、よいタイミングで前に出ることができたことだ。自分のペースで走れるようになってくると、トップの8号車とほぼ同等のペースで走れるようになっていたので、クルマ自体が決まっていたという印象だった。

──土曜日の予選後の会見ではNSXの強みは中高速コーナーだという話があったが、今回のツインリンクもてぎのレースにむけて、とくに変更した点はあったのか?

佐伯氏:前回の第4戦もてぎの結果を参考にしながら紐解いていき、トータルとしてラップタイムが安定して走るクルマというのを目指してきているので、そこはキレイにはまったと考えている。

──第6戦鈴鹿のレースではセーフティカーが入ったタイミングがわるくて勝てなかったのに対して、今回はそれがドンピシャのタイミングで優勝できた。それについてはどういう感想か?

佐伯氏:40~50周目あたりのラップタイムを見ていると、ほかのメーカーに比べるとNSX-GTの方がレースペースがよくて力強いレースができていたので、1-2-3-4-5が実現できたかはわからないが、セーフティカーがなくても上位は独占できていたと思っている。

八郷社長からは「初めて佐伯さんのことをほめるよね」というホメ言葉をもらった

──今回ホンダの八郷社長が観戦に来場しているとのことだが、八郷社長から何かコメントはあったか?

佐伯氏:これ、言っていいのか?……。別に言ってもよいと思うので言うが、「初めて佐伯さんのことをほめるよね」と言われた(笑)。

 いつも発破をかけられているというイメージで、本当に喜んでくれていてそういう言い方になったのだと思う(笑)。弊社の八郷社長は結構持ってる人で、実は2018年にチャンピオンを獲ったレース(2018年のツインリンクもてぎでの最終戦)にも来てくれていた。担当者としては社長が来ている前でよい結果になって一安心(笑)。

──チャンピオン争いでは他メーカーも含めてかなりの台数が近いポイントでひしめき合っているが、その中で上位にホンダの3台が来るというのは近年なかったと思うが……。

佐伯氏:ここで17号車と100号車に何かがあると終わると思っていた。それがまったく逆の方向で8号車を含めてホンダのブリヂストン装着車3台が、ほかのメーカーの車両とほぼ点差なく最終戦でチャンピオンをかけて戦えるというのは本当によい結果に終われてよかったと思っている。

──中盤に17号車が16号車に追いついて行くというタイミングがあったが、そうなるといろいろメーカーとしては心配な部分が出てきたのではないか?

佐伯氏:正直そういう部分はあった。あったが、路面や温度のタイミングでペースがわるくなったりということがあったのは事実だが、その後改善していった。くっついた時にはちょっと「ん?」と思ったのだが、その後離していったので比較的安心してレースを見ることができた。

──今回トップ5を独占というレースになったが、担当者としてはやはり気持ちがいいものなのか?

佐伯氏:われわれマニファクチャラーはエントラントではないので、仮に1-2を取ったとしても、残りの3台は負けているということになるし、リタイヤがあったりすると、そちらもとても気になるので。正直優勝したからといって気持ちがいいかというと、なかなか難しい。

 それに対して今回のようにトップ5を独占していれば、ホッとするというのが正直な気持ち。

──チャンピオンの決まる最終戦富士に向けて最高速勝負などの側面があると思うが、何か戦略などあるか?

佐伯氏:われわれの立場としてはチームを支援するという形で、戦略などはチームが決めていく。各チームが過去3回の富士の結果をベースに勝負を賭けるセットをするかもしれない。基本はこれまでのセットアップを煮詰めてきた延長線上で行なうことになると思う。

──最終戦富士に向けてのは展望は?

佐伯氏:今年は富士のレースは3回やってきたが、一度(第2戦)はしっかり勝てている部分と、予選では3回ともフロントローに並んでいるなどしている。なので、予選でなるべく前を取って逃げ切るレースをするしかないと思っているが、それをトヨタさんが許してくれるかどうなのか、そこが勝負どころではないかと考えている。

GT500クラス 第7戦もてぎ決勝結果(正式)
順位カーナンバー車両ドライバー周回数タイム(2位以下はトップとの差)タイヤウェイトハンデ
18ARTA NSX-GT野尻智紀/福住仁嶺631時間56分02秒055BS28
264Modulo NSX-GT伊沢拓也/大津弘樹6346秒238DL15
3100RAYBRIG NSX-GT山本尚貴/牧野任祐631分10秒630BS38
416Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT武藤英紀/笹原右京631分12秒684YH17
517KEIHIN NSX-GT塚越広大/ベルトラン・バゲット631分19秒379BS45
637KeePer TOM'S GR Supra平川亮/山下健太631分27秒441BS46
723MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリ631分31秒659MI45
839DENSO KOBELCO SARD GR Supraヘイキ・コバライネン/中山雄一631分33秒652BS39
912カルソニック IMPUL GT-R佐々木大樹/平峰一貴631分35秒463BS18
1038ZENT GR Supra立川祐路/石浦宏明631分35秒957BS36
1119WedsSport ADVAN GR Supra国本雄資/宮田莉朋631分36秒697YH9
1214WAKO'S 4CR GR Supra大嶋和也/坪井翔631分37秒226BS47
1336au TOM'S GR Supra関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ621 LapBS45
1424リアライズコーポレーション ADVAN GT-R高星明誠/ヤン・マーデンボロー585 LapsYH4
153CRAFTSPORTS MOTUL GT-R平手晃平/千代勝正4518 LapsMI24
GT500クラス ポイントランキング(第7戦もてぎ決勝終了後[正式])
順位カーナンバードライバーRd1Rd2Rd3Rd4Rd5Rd6Rd7合計
117塚越広大/ベルトラン・バゲット2032011651
237平川亮218458551
323松田次生/ロニー・クインタレッリ220320449
4100山本尚貴/牧野任祐5615661149
58野尻智紀/福住仁嶺3112122048
614大嶋和也/坪井翔1111281547
737ニック・キャシディ21845846
836関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ151511445
939中山雄一656220342
1038立川祐路/石浦宏明841626137
1139ヘイキ・コバライネン6220331
1264伊沢拓也/大津弘樹9151631
1316武藤英紀/笹原右京1115825
143平手晃平/千代勝正4354824
1512佐々木大樹/平峰一貴315220
1639/37山下健太6511
1719国本雄資/宮田莉朋21429
1839阪口晴南55
1924高星明誠/ヤン・マーデンボロー134