スバルとソフトバンク、5GとC-V2Xを活用した自動運転車の合流時車両支援の実地検証に世界初成功

合流試験に使用した5GとC-V2Xシステムを搭載した自動運転実験車両と美深試験場テストコース。実験車両は左から「WRX S4」「フォレスター」「インプレッサSPORT」（2台）

　スバルとソフトバンクは11月24日、自動運転車のユースケースに関する実証実験において、5G（第5世代移動通信システム）とC-V2X（セルラーV2X通信システム）を活用した合流時車両支援の実地検証に世界で初めて成功したと発表した。

　両社は、自動運転社会の実現に向けて、5GとC-V2Xを活用した安全運転支援や自動運転制御に関わるユースケースの共同研究を2019年から進めていた。今回、5G、C-V2Xシステムを搭載する自動運転実験車両を用いた実車ベースで、合流時車両支援の実地検証を行ない、2020年8月に世界で初めて成功した。

　今回の実証実験では、スバル研究実験センター美深試験場（北海道中川郡美深町）において、5GとC-V2Xシステムを搭載した自動運転実験車両として「WRX S4」「フォレスター」と2台の「インプレッサSPORT」を使用。

　また、テストコースに設置したソフトバンクの「おでかけ5G」（局地的に電波品質の高い5Gを提供できる可搬型設備）と、ノンスタンドアローン標準仕様の5Gネットワーク環境とC-V2Xの通信環境を活用して、合流時車両支援の2つのユースケースにおける技術検証を行なった。

　技術検証に必要な車両位置情報の取得については、ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill（イチミル）」が活用された。

ユースケース1：合流路から本線車道への合流

　1つ目のユースケースでは、高速道路などで自動運転車が合流路から本線車道へスムーズに合流することを目指して、検証を行なった。この検証では、車両の各種情報を5Gネットワーク経由で基地局近くにあるMECサーバーに伝送し、MECサーバー側で得られた車両情報を用いて、合流路を走行する自動運転車が本線車道を走行している車両に衝突する可能性の予測計算を行なう。

　衝突する可能性がある場合、MECサーバーから合流する自動運転車へ警告や減速指示を含むメッセージを送信し、メッセージを受信した自動運転車は、車載センサーで取得した周囲情報と併せて、適切な制御情報の計算を行なう。

　低遅延・高信頼な通信が求められるこのユースケースでは、5GネットワークとMECサーバーを活用することで、合流車両が制御情報をもとに、本線車道を走行する2台の車両間にスムーズに合流することに成功した。

ユースケース2：本線車道が渋滞している場合の合流

　2つ目のユースケースでは、渋滞などによって本線車道を走行する車両の間に合流可能なスペースがない場合に、自動運転車がスムーズに合流することを目指して、検証を行なった。この検証では、本線車道に接近した自動運転車から本線車道を走行している車両に、本線車道への進入要求および減速指示を含むメッセージを送信。メッセージを受信した車両は、合流における最適な位置関係になるよう制御計算を行なう。

　このユースケースでは、合流直前の限られた時間とスペースでのコミュニケーションという観点から、狭域での通信に有用性があるC-V2Xの車車間通信を活用し、合流車両と本線車両間の最適な位置関係を計算して、スムーズに合流することに成功した。

　ソフトバンクとスバルは、今後も車両制御システムと5GとC-V2Xの連携を見据えたユースケース検証を行ない、安全・安心なクルマ社会の実現に向けて研究開発を進めていくとしている。