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愛知製鋼、EV向け電動アクスルのさらなる小型化と低コスト化を可能にする磁石材料を開発

2021年2月9日 発表

発表はオンラインで行なわれ、愛知製鋼株式会社 経営役員 開発本部長 野村一衛氏、執行役員 スマートカンパニー 磁石事業室担当 御手洗浩成氏、未来創生開発部 EVモータ開発グループ 磁粉開発チーム長 山崎理央氏のほか、画面外に東北大学大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻 教授 杉本諭氏が説明した

 愛知製鋼と東北大学は2月9日、Dy(ジスプロシウム)フリーボンド磁石「マグファイン」のコア材料である磁粉の高性能化を発表した。愛知製鋼が1月に発表しているEV向け電動アクスルをさらに10%の小型化を可能にするなど、小型化および低コスト化が可能になるという。

 モーターなどに使われる磁石は、焼結磁石と磁石の粉である磁粉を樹脂で固めるボンド磁石があるが、今回の発表は愛知製鋼の製品であるDyフリーボンド磁石「マグファイン」に使われる磁粉の磁力を向上させながら、保磁力を維持させるというものになる。その結果、モーターのサイズやコストが下がり、モーターやモーターを使った機器の小型化も達成することもできる。

EV向け電動アクスルはすでに40%小型化と発表しているが、磁粉の高性能化でプラス10%上乗せされ50%小型化となる

 磁粉の開発は東北大学の高度解析技術によって、磁石のより詳細な構造を解明。その知見をもとに愛知製鋼の磁粉の製造設備を用いて、さまざまな条件で磁石の開発を進めた。開発のポイントは2つあり、磁石粉末組織が多結晶であったものを単結晶化したこと、そして、水素処理による高配向度化技術となる。

愛知製鋼の磁粉である「マグファイン」
開発のポイント
東北大学の高度解析技術と愛知製鋼の実証技術によって成功した

 ポイントの1つである単結晶化は、“1つの粉末が1つの結晶であってほしい”という理想があり、水素解砕条件を最適化することで、単結晶化が成功したもの。

 2つ目の高配向度化技術については、制御された水素雰囲気中で熱処理を施すことで高性能の磁石粉末を得る「d-HDDR処理」の工程において、制御パラメータを最適化することで従来は75%配向だったものを、80%配向として微結晶粒の配向を揃えた。

マグファイン磁粉の製造プロセス。このなかの水素解砕処理とd-HDDR処理に磁粉の高性能化のポイントがある
水素解砕処理では、磁石粉末を他結晶状から単結晶状にした
d-HDDR処理では制御パラメータを最適化し、微結晶粒の配向を揃えた

 その結果、磁石粉末における磁力は従来を100とすると115へと高磁力化しながら、磁力を高めると変化していた保持力についても従来を100とすると103と、ほぼ維持することになった。

高性能化で変化した磁力と保磁力

 また、高性能化を行なった磁粉を用いることで、EV向け電動アクスルのモーターでは従来より10%小型化が可能になり、EV向け電動アクスル全体でも10%の小型化が見込めるという。

 今回高性能化した磁粉については、2021年度中に量産体制を構築できるよう準備を進め、まずは磁粉として提供開始する。EV向け電動アクスルについては1月の発表時に2030年以降の電動車の本格普及への対応に向けたものとしており、その際に採用する見込みだという。

電動アクスルのほかに補機モーターにも高性能化によるサイズやコストの変化が見込まれる