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ホンダ、新型「レジェンド」が実現したレベル3自動運転とは?

新型「レジェンド」が搭載する各種デバイス。これらを使ってレベル3自動運転が実現されている

新型「レジェンド」

 3月5日、本田技研工業からレベル3自動運転「Honda SENSING Elite」を搭載する新型「レジェンド」が発売される。この新型レジェンドは国土交通省が世界で初めてレベル3の型式指定をしたクルマであり、これまで発売されてきたADAS(Advanced Driver Assistance System、先進安全運転システム)を備えたクルマを一歩進めていくものとして登場した。

 新型レジェンドの大きなポイントは、“レベル3”の自動運転を市販車で実現したことにあるのだが、このレベル3はどのようなことを表わしているのだろう。

レベル0からレベル5まで定義されている自動運転

自動運転車の定義および政府目標(出典:国土交通省)

 自動運転レベルについてはいくつかの定義が存在しているが、現在国土交通省では「自動運転に係る制度整備大綱」で定めたSAE Internationalの「J3016(SAE J3016)」およびその日本語参考訳である「JASO TP 18004」を採用している。これは自動運転レベルを、運転支援の支援のないレベル0から、完全運転自動化のレベル5まで区分けしたものになる。

 レベル0は先述したように人がすべての運転をこなすもので、レベル1はACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keep Assist System)などシステムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施するもの。レベル2はACC+LKASのようなシステムが前後及び左右の車両制御を実施ものとなっている。

 レベル1とレベル2の区分けが分かりにくい面があるが、単に車線内で速度コントロールや車線はみ出し制御のみを行なうものがレベル1、車線を維持しながら前のクルマに付いて走るなど前後方向の制御を同時に行なうものをレベル2と位置付けられている。

 さらにレベル2では前後・左右方向の制御という意味で、ドライバーがウィンカースイッチを入れての自動レーンチェンジや高速道路の分合流も含まれている。この制御を実施しようと思うと前後・左右の監視がシステム的に必要となり、業界ではレベル2の進化版という意味で、“レベル2+(プラス)”というような表現が行なわれている。先進デバイスの開発メーカーによっては、さらに新世代のデバイスであることを表現するためにレベル2.5や2.9、レベル2++などという場合もあるが、なにが2.5でなにが2.9かは国際的な基準が存在せず、マーケティング的なイメージ用語として使われている。

 このレベル2までが新型レジェンド発売以前に実現できていた自動運転機能になる。このレベル2までは、ドライバーによる運転が主となっている(安全運転に係る監視、対応主体が運転者)。そのため、自動運転(の定義)という用語が分かりにくい面もあり、運転支援やADAS(先進安全運転システム)と表現されている。

レベル3以上はシステム主体の運転が一部可能

新型レジェンドで定義されている自動運行装置(出典:国土交通省)

 一方、レベル3以上は一部もしくはすべての運転をシステムが行なう領域へ踏み込んでいくこととなる。そのためこれまでと異なる法整備などが必要となっていたが、レベル3の自動運転車が安全に道路を走行することができるよう道路交通法と道路運送車両法の一部を改正し2020年4月に施行。レベル3の自動運転車が走ることが可能なよう法整備を完了した。

 ここまでの準備が必要なのは、レベル3からは一部もしくはすべての運転をシステムが行なう領域があるため。レベル3から最高位のレベル5までは、そのシステム領域がどの程度あるかによって異なってくる。

 レベル3では、特定条件下における自動運転となっており、自動運転が可能な装置(自動運行装置)が働く領域を届け出て審査に合格すれば、その特定条件での自動運転機能が認められる。

 新型レジェンドであれば、TJP(トラフィックジャムパイロット)がシステム主体の自動運転運行装置として認められた部分。「自動運転車の運行設計領域(ODD)において、自動運転システムが引き起こす人身事故であって合理的に予見される防止可能な事故が生じないこと」というのが自動運転車が満たすべき車両安全として設定されており、道路状況及び地理的状況、環境条件、走行状況など、ODD(Operational Design Domain、運行設計領域)がホンダから提供されている。

新型レジェンドに搭載されている各種先進運転支援システム

 また、このレベル3自動運転では、限定された領域のみシステム主体の自動運転が可能で、それ以外のほとんどは人が運転する必要がある。万が一、ドライバーが運転できない事態になっていないよう、ドライバモニタリングシステムによって常に監視されている。

 レベル4ではODDがさらに拡大されたものになり、特定条件下における完全自動運転と定義。自動運転の作動継続が困難な場合もシステムが対応する。レベル5は完全な動作をするレベル4自動運転で、常にシステムが運転する完全自動運転になる。レベル4、レベル5になるとドライバーレスの無人自動運転車も実証実験が行なわれ、多くの人がイメージする自動運転車になってくる。

 つまり、レベル3自動運転では、ある特定のシチュエーションでのみ自動運転が行なわれるため、ドライバーは必須。しかしながら、システムについては道路運送車両法で認証されているため、新型レジェンドであればトラフィックジャムパイロット動作中には、スマートフォンなどを使用することが可能になるわけだ。

 ただし、このレベル3自動運転においては「自動運行装置の使用条件を満たさなくなる場合等には、運転者が自動運行装置から運転操作を直ちに確実に引き継ぐこと」とされており、すぐに運転できる状態にしておく必要がある。トラフィックジャムパイロット中だからといって、寝てしまったり(これはドライバモニタリングに警告される)、後席に移動したり(そもそもシートベルト装着違反ですが)することは法律違反となる。

 一方、新型レジェンドであればIVI(In-Vehicle Infotainment)でDVD再生などを行なったりすることが可能になっている。いつでも運転に復帰できる状態であれば、これまでより高い自由度を得られることになる。

 この新型レジェンドが発売されたことで、ある特定の条件下とはいえ、システム主体の自動運転機能をもったクルマが世界に先駆けて日本で走り出すことになる。自動運転に関して世界的に遅れているという論調もあった日本だが、政府、関係省庁、そして自動車メーカーやサプライヤーの努力もあり、レベル3の自動運転車が(新型レジェンドは高価であるものの)購入でき、普通に利用できる、世界で初めての国になった。