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日産の新型「ノート e-POWER 4WD」はスポーツ4WDといっても過言じゃない
2021年6月11日 06:00
引き締められたシャシーによって高められた旋回性能
日産の新型ノート e-POWER に与えられた4WDは低μ路における発進アシストだけを目的としていた旧世代のe-4WDとは異なり、出力50kW(68PS)、トルク100Nmを発揮可能なモーターをリアに搭載していることがポイントの1台だ。FFモデルに比べればおよそ120kg増しとなり、WLTCモード燃費も今回試乗したXで比較すればFFモデルが28.4km/Lに対して23.8km/Lへとダウンしてしまうというネガもあるが、果たして乾燥路の一般道試乗でメリットが見えてくるのだろうか?
走り始めてまず感じることは、相変わらずの静粛性をキープしていることだった。リアを駆動するとなれば、そこから音の侵入などがどうかと気になっていたが、車室内に対する音のイメージはFFモデルとさほど変わらない感覚がある。開発陣に聞けばそこは確かに気を遣ったポイントらしく、リアのドライブシャフトにはダイナミックダンパーを中心部に巻き付けるように溶着しているとのこと。これにより回転振動が軽減され、車室内に進入する音も抑えられるそうだ。
静かに走る限りはFFモデルとそれほど印象は変わらない。だが、加減速時に感じられるピッチングは明らかに抑えられた印象がある。これは駆動が4輪に分散されたと同時に、回生ブレーキがリアからも得られることもあるのだろう。アクセルオフした瞬間からフラットに減速感が得られるところは好感触。高速道路における直進安定性も高まったように感じる。また、重量アップに対応した足の変更も効いているのか、しなやかさはややスポイルされた感覚があるが、リアの追従性はかなりよくなった感覚がある。
これはワインディングロードを走った時にもFFモデルとは違う感覚に繋がっている。車重はアップしているが引き締められたシャシーによって旋回性が高まっているのだ。そこに4WDのメリットが効いてくるから面白い。極端に言えばアクセルオンした瞬間からリアがやや巻き込むように動くような感覚が得られている。フロントタイヤの依存度が軽減されたこの感覚はなかなか面白い。100:0から50:50まで前後配分をリニアに変化させるその走りは、違和感なく仕上がっている。Bレンジに入れた状態で4輪回生ブレーキを積極的に使い、前後の荷重を自在に変化させながら走らせたフィーリングはノート e-POWER 4WDならではの世界観が広がっている。ワンペダルで効率的にコーナーをクリアする楽しみも十分感じられるところだ。欲を言えばもっとリアに駆動を振ってみても面白そうだが、それにはリアのマウント構造や遮音をより奢らなければならないという課題もあるようだ。
低μ路でなくても分かる走りのよさ
ノーマルモデルの4WDが追加になったということだったので、正直に言って低μ路で乗らなければそのよさはなかなか発揮しにくいだろうと想像していたが、それは見事によい裏切りをしてくれた。これはスポーツ4WDといっても過言じゃない。きっと今年の冬になれば雪上で試乗するチャンスがやってくると思うが、その時にはどんな走りが待っているのか、いまからワクワクが止まらない。
今後はこのクルマをベースとした追加モデルが登場するが、それらを含めて4WDならではの面白さがどんどん広がっていくことを期待したい。かつてリーフでは1万分の1秒単位でトルク制御を行なっており、それが雪道における乗りやすさに繋がっていた。リーフはいわずもがなFFだったわけだが、その状態で安定した発進加速と回生ブレーキによる確実な減速ができていたとすれば……。同様のトルク制御を行ないながら、さらに4WD化されたこのクルマの走りは期待せずにはいられない。間もなく登場するホットモデルと共に、ノーマルのノート e-POWER 4WDも注目の1台であることに変わりはない。