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ランボルギーニ、「Essenza SCV12」のカーボンファイバー・モノコックシャシーが市販車初のFIAハイパーカー安全規格を取得
2021年6月15日 13:32
- 2021年6月7日(現地時間) 発表
スチール製ロールバーを使わずにコクピットの高い安全性を実現
ランボルギーニは6月7日(現地時間)、40台限定のサーキット専用ハイパーカー「Essenza(Essenza)SCV12」のカーボンファイバー・モノコックシャシーが市販車として初めてFIA(国際自動車連盟)のハイパーカー安全規格を取得したと発表した。
これによりEssenza SCV12は、FIAのハイパーカー安全基準に準拠したカーボンファイバー製ロールケージを備えた初の市販車となり、この成果は自動車分野における複合材料の研究と応用におけるランボルギーニの30年に渡る経験の賜物であるとしている。
ランボルギーニのモータースポーツ責任者であるジョルジオ・サナ氏は「Essenza SCV12は“アイデアの実験室”として誕生しました。そのため、GTカーとしては革新的なソリューションである、負荷のかかるギアボックスに直接取り付けられたサスペンションなど、通常はレーシングプロトタイプに見られる技術的ソリューションを採用することができました。さらに、FIAとの技術協力により実現した、スチール製ロールケージを持たない新しいカーボンファイバー製モノコックシャシーを採用し、将来的にはGTレーシングドライバーの安全性を飛躍的に向上させるプロセスを開始しました」と述べている。
FIAがシャシーのホモロゲーションのために要求するテストは、静的テストと動的テストの両方を含む非常に厳しい内容で、ランボルギーニ・スクアドラ・コルセの技術者たちは、Essenza SCV12シャシーの元となったプロダクション・シャシーの構造を大幅に変更したという。
その変更によりカーボンファイバー製のモノコックはいくつかのポイントで補強され、FIAのホモロゲーションテストでは、12t以上の力を受けても大きな変形を起こさなかったという。また、シャシーに加えて、ペダル、ベルト、燃料タンクを含む20か所以上の静的テストも実施された。一方、動的衝突試験では最大で毎秒14mの速度で衝撃が与えられ、このテストではシャシーが破損・変形などしてドライバーと接触してはならず、もちろん燃料タンクから燃料が漏れてもいけない。
ランボルギーニ・スクアドラ・コルセの技術者たちは、カーボンファイバー構造を維持するために、スチール製のロールケージを取り付けないという決断をして、シャシー内部に革新的なラミネートフォーム(ROHACELL 71 XT)を使用することで、全体的な重量面でのメリットが得られただけでなく、コックピットのスペースが大幅に拡大され、最適なドライビングコンフォートを両立させた。
また、Essenza SCV12では、ドライバーはOMP製のFIA 8862ホモロゲーションを取得しているシートに座り、スクアドラ・コルセがデザインし、ランボルギーニのCFKラボで製造されたカーボンファイバー製クレードル(受け台)にセットされる。シートは市販モデルに比べて低くなっていて、ドライバーとパッセンジャーは、レーシングカーに見られる伝統的なスチール製ロールバーの代わりに、複合材料で作られた2つのサイドインパクトガードによってドア側は保護されている。
ランボルギーニのファクトリードライバーであるマルコ・マペッリ氏は「Essenza SCV12は、爽快な体験を提供できる速いクルマであるだけでなく、信じられないほど快適な広いキャビンを備えています。これは、このクルマが対象とするすべてのジェントルマンドライバーに喜ばれるユニークな特徴です。そして、もう1つの新しいソリューションは、モノコックの後部に設置されたクレードルです。このクレードルには、エンジンが縦軸上に配置され、ギアボックスは荷重を支える構造的も担っています。これによりウラカン GT3 EVOよりも20%も高いねじれ剛性値を実現しています」と語っている。
また、マペッリ氏は「トップスピードで1200kgを超えるダウンフォースとともに、このクルマのねじれ剛性は、並外れたドライビング精度の確保に貢献しています。これによりドライバーはステアリング舵角を大きく修正することなく、スピードに乗ったままカーブを曲がることができるのです。Essenza SCV12は、830PSのエンジンの並外れたパワーのおかげでとても速いクルマでありながら、比較的簡単に運転することができます」と説明している。