インタビュー

ランボルギーニ・ジャパン 新ゼネラルマネージャーのダビデ・スフレコラ氏に、環境対策、電動化、日本市場での展望などを聞いた

ランボルギーニとして果たすべく役割は「お客さまの満足に対して心を砕くこと」

東京・六本木の「THE LOUNGE TOKYO」でランボルギーニ・ジャパン ゼネラルマネージャーのダビデ・スフレコラ氏に、環境対策や電動化について、日本市場でこれから何をしようとしているのかを聞いた

 10時からのインタビュー開始に合わせて少し早めに東京・六本木にあるランボルギーニの専用ラウンジ「THE LOUNGE TOKYO」に到着し、まだドアが空いていないかな、とウロウロする筆者。その後ろからテイクアウトのコーヒーカップを手にしながら笑顔で近づいてきたかっこいい男性が、ランボルギーニ・ジャパンのゼネラルマネージャーであるダビデ・スフレコラ氏だった。お互いを紹介して“肘タッチ”で挨拶を交わし、すぐに施設内に導いてくれてインタビューが始まった。

 ダビデ・スフレコラ氏はイタリア・ミラノ出身。中国や韓国、シンガポールなど10年にわたってさまざまなラグジュアリーブランドで経験を積んだのち、2016年にランボルギーニに入社。2020年9月1日付でランボルギーニ・ジャパンのゼネラルマネージャーに就任した。コロナ禍の影響などで来日が遅れていたが、今回初めて直接話を聞くことができた。日本に来ることができたのはとても嬉しくて、仕事についても「Best job in the World(世界で最高の仕事)」だと語るダビデ・スフレコラ氏。インタビューではスーパーカーメーカーとしての環境対策や電動化への現状・未来、そして日本市場でこれから何をしようとしているのか、などを聞いてみた。

ランボルギーニ・ジャパン ゼネラルマネージャー ダビデ・スフレコラ氏
THE LOUNGE TOKYOで展示中のフラグシップマシン「アヴェンタドール」

──現在、世界で電動化や環境問題が叫ばれる中、ランボルギーニはスーパーカーメーカーとして今後どう対応し、どのように展開していくのでしょう。

スフレコラ氏:美しい質問をありがとうございます。ランボルギーニとして最も気にかけているのがサステナビリティ、持続性です。最近になってますます世界中でサステナビリティ、エコフレンドリー、グリーン化などの声が大きくなっていますが、ランボルギーニではこうした取り組みをはるか以前から行なっていて、本社工場のまわりに植林をして森を作ったり、バイオ燃料を使用したりすることで、二酸化炭素の相殺、オフセットされるような取り組みを始めています。

 われわれは小さな会社ですので、大メーカーに比べて生産台数も少ない。そこでサステナビリティについても機敏に対応することができるのです。生産の調整もやりやすくなります。環境とニーズに合わせて仕事をしています。

ランボルギーニ本社が取り組むさまざまな環境対策
本社工場近くにランボルギーニが創設したバイオパーク。1万本以上のオークを植林している

──電動化についての進捗状況はどうでしょう。

スフレコラ氏:電動化について展望を見ると、ハイブリッド化と電動化が見通せています。忘れてはいけないのは、われわれはあくまでもランボルギーニであることです。すなわちクルマのパフォーマンスと運転したいというエモーションを意味するものです。同じ思いをあなたも思っていると思うのですが、これからの電動化へのジャーニー(旅路)を考えますと、ハイブリッド化のクルマがまず出てきます。そしていずれは完全に電動化されたクルマも出てきます。それは“まさにランボルギーニだ”というクルマになっていると思いますが、今はレンジ(航続距離)とパフォーマンスを比較した時に、二者択一という考え方に立つと、まだ100%電動化にするという準備は整っていません。

2017年にランボルギーニが発表した次世代の電動スーパーカーコンセプト「テルツォ ミッレニオ」

 サーキットでランボルギーニ車に1日中乗ることを想像してみてください。その時、感情に満ちて生き生きと体の中にアドレナリンが走る、そういった感覚を保ちたいと思うに違いないのですが、現在の電動車ではおそらく2ラップして充電、また2ラップして充電、という繰り返しで、ずっと乗っていることができないのです。今、私たちのエンジニアや研究開発部門が一生懸命技術開発をしていますが、いずれは思い通りに走り続けてくれるフルな形のハイブリッド、そしてその先にはフルな形のランボルギーニの電動車が出てくると思います。

──日本国内に目を向けてみると、政府は2035年には電動車に完全に切り替わる、としていますが、それへの対応はどうでしょう。

スフレコラ氏:2035年までには完全にそうした規制に準拠できている、と自信を持っています。電動化への切り替えは当然知っていて、各部門が積極的な取り組みをしている最中です。期限までに確実に規制に対応したものが出てくる、ということについては全然問題視していません。

 一方で、今はまだ美しいエンジンを持っているので、それを楽しむ、といったことに焦点を当てたいと思っています。われわれが持っているのは本当にエモーショナルなエンジンであると思っています。

新型コロナウイルスの影響は少なからずあるものの、“数字”ではなく“ユーザーの満足”が最優先

──2020年からの新型コロナウイルスによって輸入車の数は減っていますし、ランボルギーニも前年割れしてしまっています。今年の見通しはどうですか。

スフレコラ氏:2020年に少し減ったのは、イタリアのロックダウン、工場閉鎖の影響があります。世界は大きく変わり、働き方のレギュレーションも変わりました。イベントのあり方やサプライチェーンとのやり取りも然りです。工場も新しいやり方に合わせてやっています。これは今年も継続すると思っていて、やはり新型コロナウイルスの影響がまだ終わっておらず、当面続きます。

 そして考えているのは、今は成長について考える時ではなく、安定化、基本に立ち返ってお客さまに満足して喜んでもらうこと、それを第1としたい。そして社員の安全も。こういったことを2021年の優先事項にしたいと思っています。

 つまり今は数字を追いかける時期ではなく、今年は成長を追いかけません。今年追いかけるものは、やはり安定化とユーザーの満足です。

──日本での新型コロナウイルス対策として、独自のアイデアはありますか。

スフレコラ氏:ランボルギーニは現在、国やマーケットによって異なる対応を行なっています。それは状況がまちまちだからです。ランボルギーニの「THE LOUNGE TOKYO」は日本のお客さまに特化したもので、世界で2つあるラウンジのうちもう1つのニューヨークの施設は、新型コロナウイルスの影響で暫定的に閉鎖しています。日本では予約すれば誰でも使えるようになっていて、日本ならではの楽しみ方を期待しています。

 具体的には、積極的なスペースづくりをすることで、それもプライベートな形で1:1とか小さなグループで楽しんでいただくということです。このランボルギーニラウンジはそのためのスペースで、ユーザーの満足を高めるものです。東京のダウンタウンに「ランボルギーニ」と書いたフラッグが出ていて、ランボルギーニが所有するスペースですよ、ということが高々と謳われている。今インタビューを行なっているこのテーブルこそがお客さまのジャーニーの出発点になるのです。自分のクルマをパーソナライズするという瞬間となるのです。ここでスタートしてエンゲージメントして、満足感を高めてもらいたい。そして自己表現の手段にしてもらいたいと考えています。

 また、ほかの階に行くとラウンジがあるので、誕生日会などのプライベートパーティーや新作発表会、デリバリーセレモニー(納車式)など、いろいろな体験ができます。新しいやり方としてここが存在するのです。

 そして、日本のカスタマーはユニークで、美しくて独特です。ヘリテージや職人、デザインということを楽しむ人々です。われわれもそこは得意とする部分で、際立っている部分です。

 日本ではランボルギーニのヴィンテージが非常に多く集まっていて、ヒストリカルなクルマも多く、素晴らしくて美しくユニークな市場です。私たちも美しくユーザーとエンゲージしたい、高めていきたいと思っています。

好きなクルマはランボルギーニのアイコン「カウンタック」

──話は変わりますが、お好きなクルマはなんでしょうか。

スフレコラ氏:それは絶対に「クンタッチ(カウンタック)」です。美しいデザインに対する評価は今日においても変わりなく、将来がどういうふうになるのかというのが見通せるような、無限の可能性を有しているクルマだと思うからです。この形を見ていると、大人も子供も夢が湧き起こるような気持ちになると思います。今年はクンタッチ誕生50周年なので、お祝いをしたいと思っています。ユーザーの方からも「私のランボルギーニへの愛は、クンタッチから始まった」という方が大変多い。まさにランボルギーニのアイコンだと思っています。

イタリア サンタアガタボロネーゼの本社に併設する博物館に展示される初期型クンタッチ(カウンタック)
日本で開催されたランボルギーニデイに集結したカウンタック

──最後に今後の抱負とランボルギーニファンへのメッセージを。

スフレコラ氏:私たちが果たすべく役割は、お客さまの満足に対して心を砕くことです。それには画期的、革命的な計画があるわけではないのです。ランボルギーニは順調に推移していて、お客さまにエンゲージメントする、美しい製品を用意する、というのが私たちの仕事、使命、ミッションです。それを果たしていれば、「私たちは正しい仕事をしている」と言えるかと思っています。

 ユーザーとのエンゲージメントの実現や満足してもらうこと、リテールでクオリティをしっかりと維持する、日本のパートナーであるディーラーとしっかり手を握ってエンゲージメントする、ということが私たちの仕事です。店舗としては今年の半ばには札幌にも出店する予定ですが、このあたりが日本国内のネットワークのレベルとして最適と思っています。

 そして、ファンの皆さまが私たちのことを大好きであると思っていただければ、私たちもファンの方のことを大好きであり続けます。この関係がランボルギーニとそのファンたちの関係を独特のものにしているのです。引き続きエンゲージメントを高めて、彼らに対しては心を砕いていきたいと思っていて、そして引き続き彼らに対して語りかけ続けます。