イベントレポート
ランボルギーニ初のハイブリッドモデル「シアン」について研究部門トップのレッジャーニ氏に聞く
形状記憶のスマートマテリアルを利用した自動ベント・フラップも搭載
2019年9月17日 14:13
イタリアのスーパーカーメーカーのアウトモビリ・ランボルギー S.p.A(以下ランボルギーニ)は、同社初の電動車(EV/PHEV/HVなどの何らかの電気由来のパワーユニットを備える車両の総称)となる「Sián FKP 37(シアンエフケーピー サーティセブン、以下シアン)」を発表した。同社の創業年となる1963年にちなんで63台が販売される計画だが、すでに完売になっているという。
そうしたシアンの特徴などについて、アウトモビリ・ランボルギーニ 研究・開発部門 取締役 マウリツィオ・レッジャーニ氏に話を伺った。
35馬力追加をわずか35kgで実現する48Vのスーパーキャパシタ搭載
──シアンの由来について教えてください。
レッジャーニ氏:シアンはボロネーゼ地方のスラング(俗語)で、「稲妻の閃光」を意味する言葉です。シアンはランボルギーニにとって最初の電動車。ですので、格好よく、電気を印象づけるようなブランド名にしたいと考えており、シアンに決めました。
──日本からの技術も搭載されていると聞いています。
レッジャーニ氏:スーパーキャパシタのいくつかのコンポーネントは日本由来です。このプロジェクトは、ボストンのMITにあるわれわれのチームが2年前からスーパーキャパシタの開発プロジェクトを開始し、そして今それが形になったのです。シアンはわれわれにとってロードカーでのファーストステップです。MITでの開発はもっと進んでいますが、それをいきなり市販車に載せるわけにはいきません。まずはシアンが第一歩なのです。
ですが、1つ言えることはシアンに搭載されているシステムは現時点で実現できるものとしては最高のものです。48Vのスーパーキャパシタは低電圧ですが、600Aという高出力、ハイパワーで、システムをブーストするのです。なぜこのシステムかと言えば、34馬力を34kgのシステム重量で実現しており、パワーウェイトレシオは1であり理想的なものです。
スーパーキャパシタのシステムは左右対称のエナジーフローを持っており、バッテリーのように冷却する必要がなく、オーバーヒートすることもなく、理想的な効率を実現することが可能なのです。エネルギー密度は2400W/kgで、バッテリーでは300W/kgに過ぎません。
スーパースポーツカーではトラクションが重要ですが、ストラーダモードに設定すると、ギヤをアップシフトする時でも電気由来のトルクが有効になっています。スポーツモードでは電気はパフォーマンスを上げるために使い、その場合0-100mは2.8秒を実現するなどパフォーマンスが大幅に改善されます。
──新しい技術はほかにもあるのでしょうか?
レッジャーニ氏:シアンはスーパーキャパシタだけでなく、透過型のルーフグラスを用意しています。これは設定によって、画像を表示させたりということも可能です。また、リアにはわれわれがスマートマテリアルと呼んでいる形状記憶の機能を持つ新しい素材を使った、自動ベント・フラップを用意しています。これは、排気温度がある一定の温度に達したときにスプリングを利用して自動的に開く仕組みになっていますが、電気的なセンサーやコントロールなどをなしに動作します。あくまで素材自体がそれを検知した時に自動で開き、逆にある一定の温度を切ると閉じるという仕組みなのです。自動車でこの素材を利用した例は初めてだし、弊社が特許を有しています。このシステムは、わずか19gに過ぎず、低コストでリスクはありません。
「シアンは最初のハイブリッドランボルギーニだ」と述べ、将来のランボルギーニ車への採用を示唆
──スーパーキャパシタのメリットは?
レッジャーニ氏:現状の一般的な電動化のメリットは、燃費とCO2の削減です。シアンのスーパーキャパシタの目的はそうではありません。スーパーキャパシタは高密度のブーストを実現します。一般的なハイブリッドでは400V、800Vの電圧を利用していますが、われわれは48Vを選択しています。なぜかと言えば、低電圧なシステムの方がシステムを簡素化できますし、重量の増加を軽減することができるからです。われわれの目的は性能をブーストすることにあるのです。この手のクルマで燃費がよくなるということに意味があるとは思えないですから。
──モノコックについてはアヴェンタドールと同じでしょうか?
レッジャーニ氏:モノコックについてはスタンダードなアヴェンタドールとほぼ同じです。リアフレームとフロントフレームはアヴェンタドールとは異なっています。
──今回のスーパーキャパシタはランボルギーニの通常の市販車に採用される可能性があるのでしょうか?
レッジャーニ氏:われわれのアプローチは、こうした特別仕様車ではイノベーティブな技術をまず使ってみるというものです。技術をスカウトするようなものです。現時点でこの技術が将来のクルマに採用されるかどうかは具体的には言えませんが、1つだけ言えることはシアンは最初のハイブリッドランボルギーニだということです。ハイブリッドにもいろいろありますが、これは48Vのシステムなのでマイルドハイブリッドに基づくもので、トラクションの向上などを目指したシステムです。
──eモーターのレンジは?
レッジャーニ氏:100km/hまでとなります。ギヤボックスとモーターのレンジが違っており、それをよい形でミックスするためにそうなっています。