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3連勝後のホンダF1 田辺豊治TD会見、「今はコンストラクターもドライバーもトップだが、一つ間違えればすぐに逆転されてしまう」
2021年6月21日 06:00
6月20日にポール・リカール・サーキットで行なわれたF1 フランスGPの決勝レースにおいて、レッドブル・ホンダはホンダパワーユニットを搭載したマシンとしては、1991年の故アイルトン・セナ(マクラーレン・ホンダ)の開幕4連勝以来30年ぶりとなる3連勝(モナコGP、アゼルバイジャンGP、フランスGP)を達成した。
F1フランスGP、フェルスタッペンが優勝しレッドブル・ホンダ3連勝 3位もペレスでポイント差を拡大
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1332716.html
優勝したのはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手で、ファステストラップポイントも獲得したことでフェルスタッペン選手のドライバー選手権ポイントは131点となった。2位のルイス・ハミルトン選手(メルセデス)は119点となり、そのポイント差は前戦までの4点差から拡大して12点となった。
チームメイトのセルジオ・ペレス選手も3位に入ったことで、コンストラクターズ選手で215点となり、2位メルセデスの178点に対して37点差とこちらもポイント差を広げている。
そうした30年ぶりの3連勝、そして両選手権でリードを広げて次戦シュタイヤーマルクGP(オーストリア)に向かうことになる、ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏のレース後会見をお届けする。
#F1jpフェルスタッペン選手のオーバーテイクを動画でもう一度🤩
— HondaモータースポーツLive (@HondaJP_Live)June 20, 2021
DRSを使って前に出ると、そこからさらに突き放す、素晴らしい走りでした!!#PoweredByHonda#ホンダモースポpic.twitter.com/G2Pg8AWBY5
金曜日からライバルとの強み、弱みを把握。強みを伸ばし、弱みを減らしたことが功を奏した
──最初に田辺TDから本日のまとめを。
田辺氏:今日のフランスGP、4人のドライバーがそれぞれ持てる力をそのポジションなりに十分発揮して、レースの展開の中で十分に発揮してゴールした。マックス・フェルスタッペン選手が優勝、セルジオ・ペレス選手が3位、ピエール・ガスリー選手7位、角田裕毅選手が13位という結果になった。
フェルスタッペン選手はスタートでハミルトン選手に前に行かれたが、ピットストップで逆転してトップに立ち、その後メルセデス勢がしつこく迫ってくる中で、チームが戦略を2ストップに変更した。
それに対してペレス選手は1ストップのままと作戦を分けていった。その作戦が成功してフェルスタッペン選手がハミルトン選手を抜いて優勝し、ペレス選手もボッタス選手を抜いて3位に上がった。
ガスリー選手はピットのタイミングで順位を落とし、スタートポジションから1つ落として7位でゴールした。角田選手はレースを冷静に進めて順位を上げて完走して13位。ピットレーンスタートで、激しい中段勢の争いの中、長いハードタイヤでもスティントの使い方は勉強になったのではないか。ホンダとして4人のドライバーが持てる力を出すことができたので、さらによい結果を狙うという意味では完全に満足している訳ではないが、優勝できたということを含めて満足できたフランスGPだった。
──通常のロードコースは3戦ぶりとなり。3戦前はスペインGPで、そこでは逆転負けになっていたが、今回は逆転勝ちをした。メルセデスもこの1か月のレッドブル・ホンダの性能向上を気にしているなど、見方も変わってきている。
田辺氏:逆転といっても、1周目に抜かれたりしているので……。金曜日からいろいろとデータを解析して、強み、弱みそれぞれに理解した上で、強みを伸ばして弱みをカバーするようなセッティングを進めてきたが、それがうまくいった。
レース前に雨が降って路面が洗われてラバーが乗っていく路面で、タイヤ戦略を理解しながら進め、ドライバーもそれを理解しながらドライブしたことが今日の結果に結びついたと考えている。
──無線の調子がよくなかった、どんな感じだったのか?
田辺氏:テレビと同じ音が聞こえていたが、担当のエンジニアが聞き取れないという返しをしていた。
──タイトル争いの拮抗する戦いが続くという一戦だった。田辺氏は第2期のF1活動で、90年はフェラーリと、91年はウイリアムズとタイトル争いを繰り広げたが、今との違いは何か?
田辺氏:チーム全員が、とにかく持てる力を十分に発揮する、現場のメンバーは常にそう考えて作業している。そういうところは昔も今も変わらない。昔と違うのは壊れて壊れてというところからスタートして、86年、87年と強くなっていって91年を迎えていた。今はコンストラクターもドライバーもトップだが、一つ間違えればすぐに逆転されてしまう状況だ。
今はそれをいかにして維持していくかというプレッシャーが上乗せになっている。われわれ全員がそういう気持ちでやっている。私個人はと言えば、第2期は担当エンジニアだったり、データエンジニアだったりという立場だったが、今はテクニカルすべてを見る立場で来ているので、その分のプラスアルファがあるというそういう状況でやっている。
──残り1周半で逆転、すごく面白い形でホンダ3連勝になった。
田辺氏:みなさんが非常に興奮してもらえるレース展開で、それで勝った。それは素晴らしいことだが、その半面エキサイティングなレースの展開は、われわれにはその反対のプレッシャーがかかっている。今日のレースでは2ストップに切り替えているが、その作戦変更を許可したストラテジスト、エンジニア、ドライバーも含めて全員がそういう思いをかけてやっている。最後も1周までそれは続くのだ。
──1991年はマクラーレンのセナが4連勝だったけど、当時と今の違いは?
田辺氏:第2期F1では86年からの流れで、ウイリアムズ、ロータス、マクラーレンと来て、みなさんも見ていてそうだったと思うが、勝って当たり前になってしまっていた。その当時も今も、何かミスしてしまえば、レースがすべて台無しになってしまうというプレッシャーは変わらない。その意味では今はかつての初期の段階と同じ所に来ており、気持ち的にはまだまだやれるところをやり尽くしていく。ここまでよく来たなという気持ちもあるが、まだまだ発展途上だ。
──セルジオ・ペレス選手が3位に入ってレッドブル・ホンダが2台表彰台という形になった。そのことの意味は?
田辺氏:この間のアゼルバイジャンGPでペレス選手が優勝したのが端的な例だが、従来のレッドブル・ホンダはマックス・フェルスタッペン選手の一本足打法になっていた。しかし、今シーズンからペレス選手が加入して、レースの走りがとても手堅くて、予選失敗しても徐々に上げてきていて、アゼルバイジャンGPではフェルスタッペン選手がタイヤバーストでリタイアする中でしっかり優勝してくれた。
今回のレースでもペレス選手が予選4位からスタートする状況の中で、序盤はフェルスタッペン選手とメルセデス2台という構図だったが、ハミルトン選手がスペインGPのようにピットインしてタイヤを交換するということができない位置をペレス選手が走っており、ボッタス選手の状況も含めて彼らも手詰まり状態に陥っていた。
今後チャンピオンシップを争うには、そうしたドライバーも含めて、ストラテジストやエンジニア、チーム全体がチームワークをよくしていくことが、この先もチャンピオン争いをする上では重要なことになる。
──このレースの前の2戦は、市街地サーキットだったが、その前にあった常設サーキットではメルセデスに対して苦労していたが、今回勝てたことはマシンパッケージとしての底上げができたということか?
田辺氏:そのとおりだ。レッドブル・ホンダとしては初戦から始まって毎レース進化を遂げており、新しいパーツの投入を行なっている。パワーユニットの方は一緒だが、エネルギーマネジメントをより洗練させ続けており、レースで学んだことを次のレース特性を見ながら調整している。そうした日々の開発などなどが、性能向上に結びついていると考えている。
──オーストリアの2連戦(次週のシュタイヤーマルクGP、再来週のオーストリアGP)ではどのようなレースになるか? ホンダのパワーユニットにとって強いコースか?
田辺氏:パワーユニットはものすごく弱いとか強いとかはない。われわれにとってはレッドブル・リンク(シュタイヤーマルクGPとオーストリアGPのサーキット)は19年、レッドブルと組んでから初優勝の地であり、レッドブルのホームレースでもある。
次の2戦は同じサーキットで2回なので、1回目を外すと1週間後にもう1回あるのでなかなか難しい展開になる。そうしたこともあり万全な準備を進めて向かいたい。
F1第7戦フランスGP 決勝結果
順位 | 号車 | ドライバー | 車両 | 周回数 | タイム | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 33 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・レーシング・ホンダ | 53 | 1時間27分25秒770 | 26 |
2 | 44 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 53 | +2.904秒 | 18 |
3 | 11 | セルジオ・ペレス | レッドブル・レーシング・ホンダ | 53 | +8.811秒 | 15 |
4 | 77 | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 53 | +14.618秒 | 12 |
5 | 4 | ランド・ノリス | マクラーレン・メルセデス | 53 | +64.032秒 | 10 |
6 | 3 | ダニエル・リカルド | マクラーレン・メルセデス | 53 | +75.857秒 | 8 |
7 | 10 | ピエール・ガスリー | アルファタウリ・ホンダ | 53 | +76.596秒 | 6 |
8 | 14 | フェルナンド・アロンソ | アルピーヌ・ルノー | 53 | +77.695秒 | 4 |
9 | 5 | セバスチャン・ベッテル | アストンマーティン・メルセデス | 53 | +79.666秒 | 2 |
10 | 18 | ランス・ストロール | アストンマーティン・メルセデス | 53 | +91.946秒 | 1 |
11 | 55 | カルロス・サインツ | フェラーリ | 53 | +99.337秒 | 0 |
12 | 63 | ジョージ・ラッセル | ウイリアムズ・メルセデス | 52 | +1周 | 0 |
13 | 22 | 角田裕毅 | アルファタウリ・ホンダ | 52 | +1周 | 0 |
14 | 31 | エステバン・オコン | アルピーヌ・ルノー | 52 | +1周 | 0 |
15 | 99 | アントニオ・ジョビナッツィ | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 52 | +1周 | 0 |
16 | 16 | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 52 | +1周 | 0 |
17 | 7 | キミ・ライコネン | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 52 | +1周 | 0 |
18 | 6 | ニコラス・ラティフィ | ウイリアムズ・メルセデス | 52 | +1周 | 0 |
19 | 47 | ミック・シューマッハ | ハース・フェラーリ | 52 | +1周 | 0 |
20 | 9 | ニキータ・マゼピン | ハース・フェラーリ | 52 | +1周 | 0 |
※フェルスタッペン選手に最速ラップポイントとして1ポイント追加
ドライバーランキング(F1第7戦フランスGP終了後)
順位 | ドライバー | 国 | 車両 | ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | マックス・フェルスタッペン | NED | レッドブル・レーシング・ホンダ | 131 |
2 | ルイス・ハミルトン | GBR | メルセデス | 119 |
3 | セルジオ・ペレス | MEX | レッドブル・レーシング・ホンダ | 84 |
4 | ランド・ノリス | GBR | マクラーレン・メルセデス | 76 |
5 | バルテリ・ボッタス | FIN | メルセデス | 59 |
6 | シャルル・ルクレール | MON | フェラーリ | 52 |
7 | カルロス・サインツ | ESP | フェラーリ | 42 |
8 | ピエール・ガスリー | FRA | アルファタウリ・ホンダ | 37 |
9 | ダニエル・リカルド | AUS | マクラーレン・メルセデス | 34 |
10 | セバスチャン・ベッテル | GER | アストンマーティン・メルセデス | 30 |
11 | フェルナンド・アロンソ | ESP | アルピーヌ・ルノー | 17 |
12 | エステバン・オコン | FRA | アルピーヌ・ルノー | 12 |
13 | ランス・ストロール | CAN | アストンマーティン・メルセデス | 10 |
14 | 角田裕毅 | JPN | アルファタウリ・ホンダ | 8 |
15 | キミ・ライコネン | FIN | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 1 |
16 | アントニオ・ジョビナッツィ | ITA | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 1 |
17 | ジョージ・ラッセル | GBR | ウイリアムズ・メルセデス | 0 |
18 | ミック・シューマッハ | GER | ハース・フェラーリ | 0 |
19 | ニキータ・マゼピン | RAF | ハース・フェラーリ | 0 |
20 | ニコラス・ラティフィ | CAN | ウイリアムズ・メルセデス | 0 |