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プジョー、“リアウイングなし”の前衛的な新型ル・マン・ハイパーカー「プジョー 9X8」公開

2021年7月6日(現地時間)発表

「NO REAR WING」(リアウイングなし)が印象的なプジョー 9X8を公開

 ステランティス(Stellantis N.V.)傘下であるプジョーのスポーツ部門「プジョー・スポール」は7月6日(現地時間)にオンライン会見を行ない、同社が2022年のル・マン24時間に参戦させる予定のハイパーカー規定の車両「プジョー 9X8(ナインエックスエイト)」を発表した。

 公開されたプジョー 9X8はレーシングカーとしては衝撃的なデザインになっており、レーシングカーとして異例とも言えるリアウイングなしというデザインになっている。パワーユニットは、リアに2.6リッターツインターボでバンク角90度のV6エンジンを搭載しており、最高出力は500kW(680馬力)。フロントには200kWの出力を実現するモーターを搭載しており、900Vのバッテリーを搭載している。それらにより4WDとして動作する。

 現在のWEC(FIA世界耐久選手権)には、ワークスチームとしてのTGR(Toyota Gazoo Racing)とプライベーターのグリッケンハウスがハイパーカー規定の車両で参戦しており、8月に予定されているル・マン24時間レースにはこの2車と、今年限りの例外として従来規定のLMP1で参戦しているアルピーヌが参戦するが、2022年にはこのプジョー 9X8も参戦することでより激しい競争が実現していくことになりそうだ。

プジョー 9X8
Introducing Peugeot 9X8 | Reveal WEC Hypercar(2分10秒)

3度のル・マン24時間レース勝者のプジョー・スポールが帰ってくる

プジョー・ブランド CEO リンダ・ジャクソン氏

 記者会見に登壇したプジョー・ブランド CEO リンダ・ジャクソン氏は「今はパワーユニットには電動化という変革の時代を迎えている。WECはその開発にとって素晴らしいフィールドだ。プジョーにとってモータースポーツはDNAであり、開発室そのものでもある。そしてそれは生産車にフィードバックすることが可能になると考えている」と述べ、プジョーにとってモータースポーツ参戦は非常に重要な位置付けとしており、ハイパーカー規定のル・マン24時間レースやWECに参戦するのは電動化技術や市販車に搭載する技術の開発に役立つからと説明した。

プジョー 905。1992年と1993年のル・マン24時間レース優勝車両

 実際、プジョー・スポールの歴史はモータースポーツでの数々の勝利とリンクしている。古くは1980年代の「プジョー205ターボ16」というグループB規定の車両を利用してのWRC参戦がある。この時代のプジョー・スポールは、現在のFIA会長 ジャン・トッド氏に率いられており、トッド氏のリーダーシップの下でWRCで1985年、1986年と2年連続でチャンピオンを獲得している。

 その後、グループB規定が終焉を迎えたことを受けてパリ・ダカール・ラリー(現在はダカール・ラリー)に参戦し、優勝しながら1991年からは当時のSWC(Sportscar World Championship)にプジョー905をひっさげて参戦し、1992年のチャンピオンを獲得したほか、1991年~1993年のル・マン24時間レースに参戦し、1992年と1993年の2連勝を実現している。

 さらに2007年~2011年にル・マン24時間レースに「プジョー 908」で参戦し、2009年に優勝を飾っており、ル・マン24時間レースは通算3勝となっている。

プジョー 908。2009年のル・マン24時間レース優勝車両を前にプレゼンテーションが行なわれた

 そうした歴史を振り返ると、今回のル・マン24時間レースの参戦はプジョーにとって3度目のル・マン24時間レースへの挑戦となる。過去2期の挑戦ではいずれも勝利を挙げており、今回も当然勝利が目標となる。

リアウイングなしという前衛的なデザインを採用しているプジョー 9X8

プジョー・スポールが発表したプジョー 9X8

 今回プジョー・スポールが発表したハイパーカーはプジョー 9X8という車両になる。プジョーによれば、9はプジョーの中で至高の車両という意味で、Xはハイブリッドを意味し、8はハイパーカーであることを意味するということで9X8という車両名が与えられているという。

フロント部分
エアインテーク
リアのテールランプ
リアウイングいらないよ、というジョーク
リアウイングの代わりになるような空力デバイスはある
コクピットまわり。四角いハンドルが印象的

 印象的なのは、レーシングカーにはつきものとも言えるリアウイングがないことだ。プジョー デザインダイレクター マティアス・ホッサン氏は「われわれが求めるレベルのパフォーマンスにはリアウイングは必要ないという結論に至った。われわれが他に対してのアドバンテージをこれで得ることができると考えている」と述べ、リアウイングがなくてもプジョーが想定している性能を発揮し、むしろそれが他車に対してのアドバンテージになると強調した。

 なお、プジョー 9X8の写真をよく見ると、確かにいわゆるリアウイングはないものの、その代わりになりそうな空力デバイスはリアにあるので、それによりきちんとダウンフォースを出しながらドラッグ(空気抵抗)を減らすという狙いがあるものと考えることができる。

 プジョー・スポールによればプジョー 9X8の技術仕様は以下のようになっているという。

パワートレーン

クラス:ル・マン・ハイパーカー(LMH)

全長:5000mm
全幅:2080mm
全高:1180mm
ホイールベース:3045mm
パワートレーン:プジョー HYBRID4 500KW(オール・ホイール・ドライブ)
リアドライブトレーン:2.6リッターツインターボ 90度V6 ICE+7速シーケンシャルトランスミッション(500kW/680HP)
フロントドライブトレーン:電子モータージェネレーター+シングル・スピード・レデューサー(200kW)
バッテリー:高密度、900Vバッテリー(プジョー・スポール/トタル・エナジーズの共同デザイン)
燃料・オイル:トタル・エナジーズ


 会見にはすでに発表されている7名のドライバーもビデオ出演した。参加したのはロイック・デュバル選手、ケビン・マグヌッセン選手、ジャン・エリック・ヴェルニュ選手、ポール・ディ・レスタ選手、ミケル・ジェンスン選手、ガストン・メネゼス選手、ジェームス・ロシター選手となっており、元F1ドライバーや日本のSUPER GT/スーパーフォーミュラを走っていたデュバル選手やロシター選手など多彩な顔ぶれになっており、強力なラインアップだ。この中から6名が実戦ドライバーに、1名が控えにまわることになり、ラインアップは2021年末までに決められると説明された。

ケビン・マグヌッセン選手を初めとしたドライバーも参加

 プジョー・スポールによれば、プジョー 9X8は2022年のWECおよびル・マン24時間レースに参戦する計画で、今後数か月のうちに実際にサーキットでテスト走行などを開始すると説明されている。