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新生ステランティス CEO タバレス氏の会見レポート Appleの自動車参入を歓迎、Google傘下の「Waymo」などハイテク企業との提携を進めると言及

2025年にはすべてのグローバルモデルで電動化車両をラインナップすると表明

2021年1月19日(現地時間) 発表

オンラインで開催された記者会見でタバレスCEOは2021年中に電動化車両を39車種に増やすと言及

 グループPSA(Peugeot S.A.)とFCA(Fiat Chrysler Automobiles N.V.)が対等合併してできた新しい自動車メーカー「ステランティス」(Stellantis N.V.)は、1月19日(現地時間)に合併企業として正式にスタートした後初めての記者会見を行ない、同社 CEO(最高経営責任者)のカルロス・タバレス氏が合併後の企業の概要や戦略などに関して説明した。

 この中でタバレス氏は「この合併は決して防衛的なものではない。未来に向けて安全で、クリーンで、価格競争力に優れた自動車を提供するという持続可能な自動車社会を実現する為に必要な決断だった」と述べ、グループPSAとFCAの合併が同社の競争力を高めてより魅力的な車両を作るために必要な決断だったと強調し、「2020年中には電動化車両を29モデルラインナップしている。2021年にはこれに10モデルを追加して39モデルへと強化する。そして2025年にはすべての新しいグローバル向けモデルでは必ず電動化車両をラインナップするようにする」と述べ、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気などの何らかの電気を利用した電動化車両の充実を目指していくと強調した。

 また、タバレス氏は「今後自動車メーカーはテック企業としての側面が重要になると考えている。テクノロジー主導のイノベーションが重要だ。話題になっているAppleだけでなくテック企業が自動車産業に参入することを歓迎したい。ステランティスではGoogle傘下のWaymoと協業しており、テック企業との協業はWin-Winな関係だと思っている」と述べ、テック企業との協業もさらに推進して新しいイノベーションを自動車に導入したいと意欲を示した。

グループPSA+FCA=ステランティス、合併により効率を改善することで傘下ブランドの価格競争力を向上させるとタバレスCEO

ステランティス CEO(最高経営責任者) カルロス・タバレス氏

 ステランティス CEO(最高経営責任者) カルロス・タバレス氏は、1月16日(現地時間)に発表されたグループPSA(Peugeot S.A.)とFCA(Fiat Chrysler Automobiles N.V.)が対等合併してできた新しい自動車メーカー「ステランティス」(Stellantis N.V.)の概要を説明した。

今回の記者会見でタバレスCEOは何度も「Scale」(規模の拡大)という言葉を使い、規模を大きくして効率を上げることが他社との競争で重要になると強調した(出典:Stellantis N.V.)

 グループPSAは、プジョー(フランス)、シトロエン(フランス)、さらには2017年からはオペル(ドイツ)/ボクスホール(イギリス)も傘下に加えていた自動車メーカーのグループ。FCAはアルファロメオやマセラティなどのブランドを傘下に収めているFIAT(イタリア)とクライスラー(米国)を中心とした自動車メーカーのグループ。ステランティスはその2社が対等合併してスタートした自動車メーカーで、オランダのアムステルダムに本社機能を置き、工場などは従来の両社(例えばグループPSAならフランスやドイツ、FCAならイタリアやアメリカなど)の拠点を活用する形になる。

 タバレス氏は「2019年に合意を発表してから今回の合併を実現するまでには実に1万2500ページの契約書をまとめたりさまざまな苦労を重ねてこの正式な発足にたどり着いた。FCAとPSAの両方のチームにこの合併を実現してくれたことに感謝したい」と述べ、その合併の実現までにはCOVID-19の感染拡大なども含めてさまざまなハードルがあったが、それらを乗り越えて遅延無く合併を実現できたと強調した。その上で、「この合併は決して防衛的なものではない。未来に向けて安全で、クリーンで、価格競争力に優れた自動車を提供するという持続可能な自動車社会を実現する為に必要な決断だった。その上で、グローバルに40万人の従業員の雇用も守っていくために攻めの経営を行なっていく」と述べ、両社の合併により合理化などにより従業員の解雇などもあるのではないかという不安の声に対してむしろ合併により効率化は行なうが、新しい開発などを行なうことで雇用を守るという姿勢を示した。

両社の合併で売上は1670億ユーロ(1ユーロ=126円換算で、日本円での21兆420億円)に(出典:Stellantis N.V.)

 タバレス氏によればグループPSAとFCAの合併によりできたステランティスは、1670億ユーロ(1ユーロ=126円換算で、日本円での21兆420億円)という売上を実現する自動車メーカーになり、30兆円規模の売上を実現しているフォルクスワーゲングループやトヨタの背中が見えるポジションに躍り出ることになる。タバレス氏は「すでに130か国で販売をしており、営業利益は1200億ユーロ、営業粗利益は7%という財務体質を実現しており、自動車向けに自由に使えるフリーキャッシュフローは50億ユーロとなっている」と述べ、合併により両社の財務体質は強化され、今後他メーカーに対して競争力を高めることにつながると述べた。

合併の効果(出典:Stellantis N.V.)
今後の目標(出典:Stellantis N.V.)
雇用の維持も重要なポイントに(出典:Stellantis N.V.)

 例えば、その両社の合併によるシナジー効果としてタバレス氏は、「われわれは19もの魅力的なブランドを活用できる。このため、異なるブランドでプラットフォームなどを共有し姉妹車を開発するなどして効率を引き上げることが可能になる。また、部材の購買も共通化が可能になり、部材のコストを抑えることができる。それらにより毎年50億ユーロに上る合併による効果がある。これは合併時に一度かかるコスト40億ユーロを補ってあまりある」と述べ、今後ステランティス傘下のブランドの自動車メーカーが車体のプラットフォームを共有して姉妹車をそれぞれのブランド向けに作ることで、開発費などを抑えながらそれぞれのブランドに即した自動車を開発することが可能になり、グループ全体の効率が向上することでより魅力的な車を購入しやすい価格で提供できると強調した。

多くのブランドを抱えているステランティス(出典:Stellantis N.V.)

 なお、ステランティスのWebサイトによれば、同社の傘下ブランドは以下のようなブランドがある。サービスのブランドであるFree2GoとLeasys、純正部品ブランドのMoparを除けば、(商用車向けのFIAT Professionalを含めて)自動車関連だけで15のブランドがあることになり、それらのブランドがプラットフォームを共通化して姉妹車として展開することができれば、確かに効率が上がっていく可能性が高いと言える。

・アバルト
・アルファロメオ
・クライスラー
・シトロエン
・ダッジ
・DSオートモービル
・FIAT
・FIAT Professional
・ジープ
・ランチア
・マセラティ
・Mopr(モパー、FCA車向けの純正パーツなどを販売するブランド)
・オペル
・プジョー
・ラム・トラックス
・ボクスホール
・Free2Move(レンタルサービス)
・Leasys(ストアやMaaSなど)

 タバレス氏は「2つのファミリーが1つになることで多数のアイコニックなブランドを抱えることになる。それぞれのブランドにCEOを任命して、それぞれのブランドの良いところを伸ばしていってもらう」と述べ、引き続きブランドに関しては今の複数のブランドを維持して、ディーラー体制なども現状のままで顧客に不安を与えないような体制を構築していくと説明した。

2021年には電動化車両を10モデル追加して39モデルに増やし、今後はパワートレーンの内製化など開発を加速

一般消費者の期待を上まわる自動車を開発していくことが重要(出典:Stellantis N.V.)

 タバレス氏は、ステランティスでの新しい課題として「今後自動車メーカーはテック企業としての側面が重要になると考えている。テクノロジー主導のイノベーションが重要だ。(Appleの自動車事業への参入があるのではないか、ということが話題になっているがという問いに対して)Appleだけでなくテック企業が自動車産業に参入することを歓迎したい。ステランティスではGoogle傘下のWaymoと協業しており、テック企業との協業はWin-Winな関係だと思っている」と述べ、AppleをはじめとするIT系のテック企業が自動車産業に参入することは歓迎すべき事であり、ステランティスとしても積極的にテック企業との協業を進めることで、どちらにもメリットがある関係を構築していきたいと述べた。

 なお、ステランティス(当時はFCA)は2020年7月にGoogleの子会社でロボタクシーの技術を開発しているWaymo(ウェイモ)との提携を発表しており、両社が共同でレベル4の自動運転技術を商用車向けに開発していく計画であることを明らかにしている(リリース)。

2030年の目標(出典:Stellantis N.V.)

 そして、2030年に向けた各種の目標として、電動化車両(HV/PHEV/EVの総称)の割合を35%以上に、またシェアエコノミー向けの車両を増やし、5Gに対応した車両を1600万台に到達させるといったことを説明した。また、テクノロジー面ではWaymoとの共同開発や、ゼロエミッションに向けた技術の開発にも取り組み、モーターやバッテリーなどの電動か車両向けのパワートレーンの内製化などにも取り組んで行きたい述べ、それらにより調達コストなどを下げながら、顧客に提供する価格を維持すると強調した。

電動化車両のラインナップを増やしていく(出典:Stellantis N.V.)

 そして電動化車両への取り組みについては、「2020年中には電動化車両を29モデルラインナップしている。2021年にはこれに10モデルを追加して39モデルへと強化する。そして2025年にはすべての新しいグローバル向けモデルでは必ず電動化車両をラインナップするようにする」と述べ、ステランティスとしても電動化車両への取り組みを強化すると述べた。

カスタマーファースト(出典:Stellantis N.V.)
まとめ(出典:Stellantis N.V.)

 タバレス氏は「われわれには競争力がある多数のブランドがある。合併により効率アップを実現することで、安全で、クリーンで、価格競争力に優れた自動車を顧客に提供することができるようになる。それにより持続的成長が可能な、自由度の高いモビリティ社会を実現していきたい」と述べ、合併により40万人の従業員にとっても、そしてより魅力的で購入しやすい価格で自動車を購入できる顧客にとっても、今回の合併はメリットがあるのだと強調した。