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FCAジャパン、2020年の成長要因を振り返る新春記者会見 2021年も過去最高の販売台数を狙う

2021年末に新型EV「500e」の導入を予定

2021年1月14日 実施

FCAジャパンがオンラインで新春記者会見を開催。2020年の実績について分析するとともに、2021年の展望を語った

 FCAジャパンは1月14日、オンラインにて新春記者会見を実施。FCAジャパン 代表取締役社長 ポンタス・ヘグストロム氏が2020年の市場とFCAジャパンの実績、FCAジャパンの成長の要因、「ジープ」「フィアット」「アバルト」「アルファ ロメオ」各ブランドの振り返りと今後の見通し、ジープの戦略的課題といったトピックについて語った。

 なお、1月4日に開かれた臨時株主総会によって承認されたFCAグループとグループPSAの両社による統合会社「ステランティス」についても触れ、「今後何ら不測の事態はない見込みで、統合は来たる16日に実行に移され、ステランティスの株式の取引も始まります」と説明。この統合は「変革著しい自動車業界での大変化の1つ」としつつも、「あくまでグループレベルの段階であり、市場ごとの計画はまだ決定されていない」として、現在まだ未定の部分も多いと述べるにとどまった。

「ステランティス」についても触れられた

日本でのシェアを拡大した2020年のFCAジャパン

 まず、2020年度のFCAの業績については、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって影響を受け、工場生産や輸送、ディーラーへの来客数減など、2020年央にかけては逆風が吹いていたものの、日本の輸入車市全体場では年央以降需要が上向いてU字回復となり、FCAジャパンでは8月を除いて輸入車市場全体を上まわる成長で推移。第4四半期は対前年比44%増で過去最高を記録するとともに、FCAジャパンの四半期としても過去最高となった。重ねて、FCAジャパンの販売シェアが6月に初めて10%を超え、10月にも再びシェア10%を上まわることにより第4四半期のシェアは過去最高の9.8%まで上昇した。

2020年の輸入車市場の推移
FCAジャパンは8月を除き、輸入車市場全体の成長を上まわって推移
第4四半期は対前年比44%増を記録し、過去最高の四半期に
第4四半期のシェアが過去最高の9.8%となり、日本で販売される輸入車の10台に1台がFCAのクルマとなったことは、かつては想像できなかった快挙だと話すFCAジャパン 代表取締役社長 ポンタス・ヘグストロム氏

 また、下半期は1万4000台近い販売台数で過去最高となり、過去最高を記録していた2019年を12%上まわる販売率を達成。通年での販売台数は2万4185台で、2019年の2万4666台とほぼ変わらない数字となり、対前年比2%減という数字は輸入車市場全体での対前年比15%減と比較して、新型コロナウイルスの影響は軽微にとどめられたと強調した。

2020年通年での販売台数は2万4185台を記録
2020年のマーケットシェアは2019年の8.1%から15%伸長した9.3%となり、初めて通年で9%を超えた
FCAジャパンが設立された2015年と比べて58%の伸長

 これらの成長の要因として、「製品ラインアップがポジティブな方向に変革されながら成長を続けたこと」「革新的で耳目を集めるマーケティングがクルマと日本の消費者を繋げ、情熱に満ちた関わり合いを増やしたこと」「ディーラー施設がより高品位で上質かつ広くなったこと」を挙げ、これらの要因が既存オーターのプライドになるとともに、新規客の好奇心を刺激。さらにディーラーもやる気を出したことで利益を確保でき、FCAジャパンが設立された2015年に比べると58%増となったマーケットシェアにもそれが反映されたという。

 加えてもう1つの成長の要因として、車両の残存価値が高値で推移しているため、ほかのブランドに比べて所有コストの負担が軽減されることが挙げられるとヘグストロム氏は紹介。登録から3年後の残存価値はアバルト「595 コンペティツィオーネ」で53~73%、「124 スパイダー」で65~88%、フィアット「500」で48~74%、「500X」で50~78%、ジープ「ラングラー アンリミテッド スポーツ」で67~83%、「レネゲード リミテッド」で60~79%という数値が参考として紹介された。

アバルト 595と124 スパイダーの登録3年後の残価比較
フィアット 500と500Xの登録3年後の残価比較
ジープ ラングラーとレネゲードの登録3年後の残価比較
FCAジャパンはデジタルコンテンツにも力を入れているほか、ジープやアルファ ロメオのTV広告、全ブランドでフォーカスしているコミュニティづくりといったマーケティングも推し進めている
ローンの支払いを遅らせるスキップローンは2019年5月に業界初の取り組みとしてとして導入。その後、国内外のメーカーが追随していったとのこと。現在はローンで購入する顧客の55%がスキップローンを活用しているという。また、フィアットとジープでは、アクセサリや保険、税金などがカバーされ、不意の出費が抑えられる個人リースのプログラムを提案している
ディーラーネットワークも強化され、4年間にわたりショールームの新規オープンや新装オープンを行ない、2020年もそれを継続。新しいショールームは周囲からの視認性が向上したほか、スペースも広がり顧客体験がこれまでになく高まったとのこと

ジープ、アバルト、フィアット、アルファ ロメオの各ブランドともに成長

 ジープブランドでは人気と需要が伸び続けており、販売は順調に増加し、2020年も過去最高の1万3588台という販売台数を記録。第1四半期には販売記録を塗り替え、その後の感染拡大期においても販売に対する影響を競合と比較して最小限に抑え、業界平均を上まわる販売を達成。ジープの市場において、日本は世界的に6番目にランクされている市場となっているとヘグストロム氏は紹介した。

2020年のジープの販売台数推移
ジープは常に前年を上まわる販売台数を記録し、10年前と比較すると販売台数は約10倍に達している
日本における2020年の輸入SUVブランド別販売ランキングで、ジープは3位だった
ラングラーが著しい成長をみせ、2020年の販売台数は初めて5000台を突破
ラングラーに次ぐ人気車種のレネゲードは、FCAにとって初の電動化モデルとなる「レネゲード 4xe」が2020年10月に発売されたことで追い風となった
2021年はジープが1941年に初代ウィリスを世に送り出してから80年となる記念すべき年。80周年記念限定車に採用するボディカラーを決めるためにファンからの投票を募ったところ、約4万人を超える応募があったという
2012年から「リアル・ジープ」の傘の下で多岐にわたるコミュニケーション活動を行ない、2020年11月には3年間の無料メンテナンスパッケージなどのオーナー特典が付与されるカスタマーケア・プログラム「ジープ・ウェイブ」を開始した

 アバルトも前年を上まわる成長となり、販売終了となった124 スパイダーの販売台数は前年比41%増の461台という成長をみせ、“手が届く価格のスポーツカー”である595の2571台と合わせて3032台という販売台数を達成した。

アバルトも2020年は前年を上まわる成長を遂げた
アバルトの2020年の販売台数
124 スパイダーの販売台数
595ファミリーの販売台数
限定台数200台のうち50台をWeb受注とした限定車「595 スコルピオーネオーロ」は、2週間の受け付け期間中に50台に対して549件の申し込みを獲得したという
恒例となっているアバルト・デイは200台限定かつ車中からの参加となったが、1300件を超える申し込み件数があったとのこと
女性オーナーを対象としたオンラインイベントやドライビングレッスンも人気で、定員を超える申し込みがあった

 フィアットでは、上期は業界のトレンドと歩調を合わせたものの、第3四半期はFCAのどのブランドよりも早く回復。500Xには新グレードとなる「Sport」が追加され、販売台数が30%伸長。500と500Cは2020年も引き続きセグメント首位を維持し、500/500C合わせて10年連続で4000台以上を販売した。

 また、2021年末には新型EVとなる「500e」の導入を予定しており、2021年もフィアットブランド全体にエネルギーを注入するとしている。

フィアットの2020年の販売台数
500Xに新グレード「Sport」を追加
500/500Cの10年間の販売推移
500/500Cは競争が激しい小型車市場に属しながらも、競合他車に比べて安定した販売を継続している
ディーラーネットワークの改装は2021年央までに完了予定
日本は新型EV「500e」が欧州以外で唯一発売される市場となる

 アルファ ロメオは2020年央にジュリアとステルヴィオの改良を予定していたため、上期において従来モデルの売り切りを実施し、本国工場が閉鎖となった影響で、秋までディーラーの店頭在庫が品薄になったことが販売台数に影響。秋から販売を始めた新しいジュリアとステルヴィオでは、新設定されたグレード「スプリント」が好調で、特に「ステルヴィオ スプリント」が成功を収め、販売はV字回復を見せたと紹介した。

 2021年は生産終了を間近に控えた「4C」の限定車の販売を予定。この限定車は1967年発表の「アルファ ロメオ 33ストラダーレ」をモチーフとし、4Cが最も成功した市場である日本に敬意を表して開発。2月ごろに最終モデルに関する情報のアナウンスを予定している。

アルファ ロメオの2020年の販売台数
秋から「ジュリア」「ステルヴィオ」の新モデルの販売を開始
新設定となる「ステルヴィオ スプリント」が好調
改良モデルの導入以降、販売はV字回復を見せた
アルファ ロメオの公式アンバサダープログラム「We Love Alfa Romeo」を立ち上げたほか、オーナークラブ「パッシオーネ・ロッサ」もスタート
販売網はフィアットからの分離とアップグレードを2020年内に完了
F1は2021年で参戦3シーズン目となる
生産終了を間近に控えた「4C」の限定車が間もなく登場する

 ヘグストロム氏は「現在まだ見通しは暗いままではありますが、2021年は新型コロナウイルスのワクチンの普及や継続される警戒態勢によって、コロナ禍が徐々に収束していくものと予想しています。そのような展望の下、私たちは今年も過去最高の販売台数を狙っていくと申し上げても驚かれる方はいないでしょう」と今後について語った。

2021年も攻めた姿勢を続けるジープ

 2020年はジープの販売ネットワークにおける新CI導入といった刷新を完了した年となり、日本の販売ネットワークは世界的に見ても美しく、プレミアムなものになったとヘグストロム氏は説明。

 販売網への新規参入も増え、10年にわたる成長を続けてきた今だからこそ、勢いをさらに強いものとして販売を増やし、顧客満足度を上げ、ディーラーの利益や誇りをさらに増やしていくための“ジープ成長戦略第3フェーズ”を開始すると意気込みを語った。

ジープの販売ネットワークにおける新CI導入が完了
“ジープ成長戦略第3フェーズ”として2023年までに100拠点を目指す

 この“第3フェーズ”では拠点数を現在の82拠点から100拠点まで増やす必要があるとして、九州の空白エリアを埋める2月の長崎の新拠点開設から開始。2020年に保有台数が5万台の大台を突破したことも踏まえ、顧客数の増加に伴いディーラーのメカニックおよびセールススタッフの増員を行ない、2016年と比較してメカニックは32%、セールススタッフは56%の増員が行なわれ、今後も継続して増員を続けていくという。

 また、2020年に「ジープ・ウェイブ」を導入したことに伴い、ディーラーのサービス部隊の中でユーザーをフォローするための施策である「サービス・ドリブン」を本格導入。これは、ワークショップ効率を向上させ、プロセスを標準化するとともに、顧客満足度の向上やサービス受け入れ能力を増大することで、ディーラーの収益の増大に繋げるというもの。2021年はこの拡大初年として実施拠点数を2020年までの3倍に増やす計画としている。

ジープ保有台数とスタッフ数の推移
「サービス・ドリブン」の展開状況

 最後にヘグストロム氏は「私たちは将来に関して明るい展望を持っています。われわれ同様に輸入車市場も成長するとみており、日本市場にしっかりとコミットしてまいります。2021年を迎え、私たちは現在の勢いを止めることなく成長を続けてまいります。そのために魅力的な製品を揃え、革新的な巻き込み型ムーブメントを実行し、ネットワークを拡大してお客さまに素晴らしいブランド体験を提供してまいります。私は2021年がFCAジャパンにとってまた記録的な1年になることを確信しています。お客さまとのつながりをより強固なものとし、顧客満足度を向上するための努力は惜しみません」とコメントした。

2021年の展望を語るヘグストロム氏
FCAジャパン成長の推移