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トヨタGR、新型「GR010 HYBRID」がWEC(世界耐久選手権)開幕戦で優勝

2021年5月2日 発表

デビュー戦で優勝。2台揃って表彰台を獲得

 TOYOTA GAZOO Racingは5月1日に、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催された「2021年シーズンFIA世界耐久選手権(WEC)開幕戦スパ・フランコルシャン6時間」にて、新型ハイパーカー「GR010 HYBRID」の8号車がデビュー戦で優勝。また、7号車は3位入賞と、2台揃って表彰台を獲得した。

 新型GR010 HYBRIDは2台エントリーしていて、WECディフェンディングチャンピオンであるマイク・コンウェイ選手、小林可夢偉選手、ホセ・マリア・ロペス選手が7号車、セバスチャン・ブエミ選手、中嶋一貴選手、ブレンドン・ハートレー選手が8号車をドライブした。

 レースでは、ポールポジションの7号車コンウェイ選手が出場車両31台の先頭を切ってスタート。8号車は11周目に7号車を抜いて首位に浮上。2台のGR010 HYBRIDが首位を争う後方からは、ライバルのアルピーヌ36号車が続く。

 最初のピットストップで、先にピットインした7号車はピットアウト時に手間取りタイムロス。また、翌周にピットインした8号車は、給油作業時間のミスにより次のピットストップで30秒間のペナルティが科さられる。

 次のピットインで7号車はコンウェイ選手からロペス選手へとドライバーチェンジ。このピット中にアルピーヌ36号車が先行。レースが折り返しを迎える頃、ロペス選手は首位36号車との差を数秒へと猛追。8号車はハートレー選手へと交代したが、30秒のペナルティを消化したため3位に。

 その後、猛追を続けていた7号車のロペス選手が、他クラスの車両と接触したとで車両前部に軽いダメージを負い、この7号車を引き継いだ小林選手は、レースが残り2時間を切ったところでコースオフして、グラベルエリアでストップ。7号車はオフィシャルの車両に引き出され、レースへと復帰したが3位へと後退。

 ハートレー選手から8号車を引きついた中嶋選手は首位の36号を追いかけ、最後の給油ピットストップで、8号車はブエミ選手に交代。終盤も着実な走りで2位の36号車との差を守り切り、1分7秒196差でチェッカーを受けた。7号車は1周遅れの3位でフィニッシュとなった。

 次戦は6月にWEC初開催となるポルトガルで「ポルティマオ8時間レース」が開催れる。

チーム員のコメント

村田久武氏(TOYOTA GAZOO Racing WEC チーム代表)

「今日のレースは、チームにとって予測のできないドラマチックな展開になりました。ハイパーカーが新たな時代の競争の激しいカテゴリーとなり、世界中のファンの皆さまの期待に添えられることを望んでいました。今後も接戦が多くみられる、エキサイティングな展開となることを望んでいます。世界的に大変な時期にもかかわらず安全にレースできる機会を与えてくれたWECとレース主催者に感謝いたします。我々はいくつかの難しい問題に直面しましたが、メカニック、エンジニア、またドライバーたちの大変な努力のおかげで、表彰台の中央で耐久レースの新時代を迎えることができました。レースウィーク中も困難な状況が多数ありましたが、チームは決してあきらめない姿勢を貫きました。実際に可夢偉は、コースを外れ、グラベルにスタックしてしまった後も、わずか数周でトップ車両を追い抜き、この姿勢を体現してくれました。今日のレースは、我々の次世代レーシングハイブリッド技術の力強いスタートになりましたが、引き続きGR010 HYBRIDの改善を続け、学び続けていきます。 今回スパ戦は、決して順風満帆なレースウィークではありませんでしたが、ただ、改善すべき点を浮き彫りにできたので、次戦前、特にル・マン前までにしっかり対応をしていきます」

小林可夢偉選手(GR010 HYBRID 7号車)

「スタートはよかったのですが、厳しいレースになってしまいました。コースアウトした際、タイヤをロックさせてしまいましたが、車両を何かにヒットさせることは避けられました。不運にもこの時にグラベル上で動けなくなってしまい、レスキューカーにコースに戻して貰うまで待たなければなりませんでした。それまで我々のペースはよく、十分に勝利を狙える位置にいただけに残念です。今日は幾つかのトラブルがありましたが、まだまだGR010 HYBRIDの性能を最大限に引き出すための学習途上だと言うことがわかりました。いいパフォーマンスを示すことはできたと思いますが、幾つかまだ改善すべき点が残っています」

マイク・コンウェイ選手(GR010 HYBRID 7号車)

「レース中盤まではとても順調だっただけに、このような結果に終わりとても残念です。幾つかのトラブルに見舞われ、優勝争いからは脱落してしまいました。ドライブスルーペナルティだけなら取り戻せた可能性もありましたが、可夢偉のコースオフで周回遅れになってしまったことで表彰台が精一杯でした。我々はディフェンディングチャンピオンとして勝利でシーズンのスタートを切りたかったので、残念な結果ですが、みんなよくやってくれました。素晴らしいパフォーマンスを見せた8号車と、GR010 HYBRIDのデビュー戦で勝利を勝ち取るに値する仕事を成し遂げたチームに祝福を贈ります」

ホセ・マリア・ロペス選手(GR010 HYBRID 7号車)

「まずチームとしての結果には満足しています。最初から決勝まで、浮き沈みの激しいレースウィークでしたが、重要なのはシーズンの開幕戦で、2台が表彰台に上がり、TOYOTA GAZOO Racingが勝利を挙げられたということです。8号車は素晴らしいレース展開をしていました。我々7号車は、十分に勝てるペースだと感じており、レースでも序盤はやや優位に戦えました。しかし、幾つかのアクシデントでそれを失ってしまいました。GTカーとの接触は後悔しています。とても難しい状況でした。今日の結果からは学ぶべきことが沢山あります。我々には今日のレースで勝てるスピードがあったということをポジティブに受け止め、次戦以降も頑張ります」

中嶋一貴選手(GR010 HYBRID 8号車)

「TOYOTA GAZOO Racingのハイパーカーでの最初のレースで勝てたことを誇りに思います。我々はチームとして決勝レースで本当によい仕事ができたと感じています。チームと全てのクルーと共にこの勝利を祝いたいと思います。なかなか一筋縄ではいかないレースでしたが、ドライバーとしてやるべきことをこなしました。コース上での追い抜きは非常に難しく、ミスをしやすい状況で、アルピーヌや何台かのLMP2カーといった強力なライバルと戦うのは容易ではありませんでした。そんな中で、ミス無く自分たちの役割を上手くこなすことができ、満足しています。一時はどうなるかと思っていただけに、素晴らしい結果です」

セバスチャン・ブエミ選手(GR010 HYBRID 8号車)

「ハイパーカー時代の最初のレースで勝つことができて最高の気分です。このレースに臨むにあたっての、我々へのプレッシャーは大変なものでした。7号車がポールポジションを獲得し、8号車が勝てたというのは素晴らしいことですし、我々がそれを成し遂げられて本当に嬉しいです。この大変な挑戦に向けて、チームはこの数週間ハードワークをこなし、多くのテストを重ねてきましたが、その全てがこの勝利で報われました。しかしまだまだ多くの面で改善が必要なことも分かっており、まだスタートは切られたばかりです。やるべきことは沢山あり、すぐにでも戻って作業を始めなければなりませんが、今日は少しだけ勝利を祝いたいと思います。

ブレンドン・ハートレー選手(GR010 HYBRID 8号車)

「この新たなハイパーカー時代を勝利でスタートすることができて素晴らしい気分です。挑戦無くしてこの結果はありませんでした。ドライバーとしてはとにかくミスを犯さないことを心掛け、周回毎に学ぶことがありました。GR010 HYBRIDでの、ダブルスティントの対応やコース上のトラフィック対処といった、昨年までのクルマよりもとても難しくなった課題についても、さらに理解を深めていかなくてはなりません。とはいえ、この初勝利は本当に嬉しいです。チャレンジングなレースでしたが、とても楽しめました」