ニュース
元86Racingオーナーの橋本洋平、新ワンメイクレースカー「GR86 CUP Car CONCEPT」を隅々までチェック
2021年7月19日 05:00
新型86&BRZの登場に合わせて、TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race用のワンメイクレースカーも生まれ変わることになる。新たに「GR86 CUP Car CONCEPT」と名付けられた今回のクルマは、一体どんな仕様になるのか? 元86Racingオーナーである筆者が隅々までチェックしてみる。
エアロも装着されず実はチープだった先代のワンメイクレース車両。ドアヒンジは素材色むき出しだったし、マフラーカッターもなくリアビューは貧弱。しかもベースモデルは鉄ホイールで納車という状況だった。だが、今回はそんなショボさが若干なくなると予測できる。
コンセプトモデルはすでにレース仕様を前提とした改造が施されているが、それにしてもエクステリアのカッコよさは旧型とは段違い。ダックテールがそもそも与えられていること、そしてドアハンドルがボディ同色となっていることがそう感じさせるのだろう。マフラーカッターは相変わらず装着せずだったが……。
インテリアは液晶メーターとオートエアコン、そしてリモコンキーが備わっていることに驚いた。たしかに今回のベースモデルには廉価版はなく、それらすべてを上位機種と同様にしなければならないという事情もあったと思うが、これはうれしい改良かもしれない。いちいちカギを差してエンジンスタートなんて、イマドキのレースっていう感じがしませんものね。豪華になったのはそれだけでなく、ステアリングは革巻きに。これについてはウレタンに変更するかもしれないとのことだったが、滑りやすい素材にわざわざ取り換えるのは……。
インテリアでもう1つ目を引いたのがロールケージだった。ダッシュボード貫通といえば貫通なのだが、エアコンの吹き出し口を加工して、下側をわずかに切っただけでダッシュボード貫通のように見える作り方はなかなか。そしてサイドバーが高くなっていることが特徴的だ。これならサイドからのインパクトだってさらに上手く吸収できそうだ。
エンジンルームを見てみると、ワンメイクレースカーの特徴の1つでもあるオイルクーラーが装着されているのが理解できる。オイルフィルター下にブロックをかませて装着しているが、興味深いのはノーマルにあった水冷式のオイルクーラーを排除していたところ。同時装着すればもっと冷えるのでは?なんて思ってしまったが、スペースの確保などさまざまな問題がありそう。だからこそ、水冷式オイルクーラーを廃止し、空冷一本でということになったのではないだろうか?
実は新型は2.4リッター化に伴い熱量が増えていることで水冷式オイルクーラーを標準装備したという経緯がある。果たして従来と同じ程度の空冷で冷却が足りるのか否か。これから真夏のテストが開始される。
フットワーク系についてはタイヤ&ホイールのサイズ変更が目新しい。まだ暫定的とはいえ、すでに215/45 R17サイズを装着していたのだ。それに伴いブレーキはアドヴィックス製の対向キャリパーを装備。フロント4ピストン、リア2ピストンとなるそれは、ブレーキ性能がきつかった旧型の反省もあるのだろう。
シリーズ開始直後はブレーキパッドメーカーも苦労が絶えず、ある時ブレーキが抜けるほどの危険な領域に陥ったこともある。ブレーキパッドメーカーの努力により次第にそんなこともなくなってきたが、あの難しい努力が新型では必要なしとなれば大歓迎。価格アップは必至となるだろうが、安全性を考えれば仕方がないところかもしれない。足まわりについては旧型と同様の車高調となると予測されるとのこと。ちょっと貧弱なスプリングレートやダンパー容量は見直してほしいところだが、これからの開発に期待したい。
懸念材料だったトランスミッションや燃料タンク&ポンプについては、ベース車両のレポートでもお伝えしたとおり、かなりの改善が行なわれていた。耐久性、信頼性については旧型とはまるで違う世界が広がっていそうだ。
このように変わっていないようで変化があった新型のワンメイクレースカー。ここまで奢った仕様となれば、あと期待するのはスピードリミッターの解除? そろそろソコにもメスを入れて貰えればと思うのは筆者だけではないはずだ。