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SUPER GT第4戦もてぎ、ホンダ勢が早めにピットインしてアンダーカット NSX-GTが優勝できた理由とは?

2021年7月18日 開催

SUPER GT第4戦もてぎで優勝した1号車 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)

 SUPER GT第4戦もてぎが7月17日~18日の2日間にわたって開催された。その結果はホンダ NSX-GTを駆る1号車 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)が予選でポールポジションを獲得し、決勝では見事に優勝を果たした。

SUPER GT第4戦もてぎ、GT500は1号車STANLEY NSX-GTがポール獲得 GT300は11号車GT-Rがポール

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1338911.html

SUPER GT第4戦もてぎ、1号車NSX-GTが見事にポールトゥウィン GT300はFCYを味方につけた2号車ロータスが優勝

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1338934.html

 ホンダとしては、第2戦富士での17号車 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)の優勝に続く2連勝で、3戦(第4戦となっているがレース数としては3戦目。第3戦 鈴鹿は8月に延期)して2勝という上々の結果となっている。

 レース終了後にはホンダのSUPER GT活動を担当する本田技術研究所HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏、シャシー開発を担当する同 SUPER GT 車両開発担当 徃西友宏氏によるオンライン会見が行なわれたのでその模様をお伝えしていく。

夏場のレースでタイヤメーカーの差が小さくなってきている、優勝できたのは両ドライバーのがんばり

──2人から今日のレースの総括を。

佐伯氏:決勝レースを分析すると、ヨコハマタイヤを履いた19号車 GR Supraのレースペースが非常によかった。そのため、1号車がトップをキープするのは難しいと思っていたが、最初のスティントを担当した牧野選手がなんとかついていって、後半を担当した山本選手が抑えまくって、スタンレーさんに初めてのポールトゥウィンを与えることができたという非常によいレースだったと思う。今回のレースではタイヤが鍵になると思っていたが、実際ヨコハマ、ダンロップ、ブリヂストン、ミシュランともによいペースで走れており、各タイヤメーカーの差が詰まるという夏場のレースらしいレースになっていた。

 そうした中で、今回優勝できたのは、昨日ポールポジションを取れたことで、牧野選手、山本選手というドライバーの頑張りが大きい。次は鈴鹿で暑い中でのレースになるが、連勝をこれからも続けて行きたいと思っている。ファンのみなさまにはNSXの応援をお願いしたい。

徃西氏:佐伯氏が言ったことに同感だ。開発しているわれわれも、山本選手も、そしてメンテナンスを担当されているATJにとっても地元だということで勝ちたいレースだったが、接戦となったレースをドライバー2人がしっかりゴールまで運んでくれた。

──車体側の底上げを行なったという話だったが、今回の優勝でその効果が見えたのではないかと思うがどうか?

佐伯氏:詳しくは徃西から説明があると思うが、5台すべてにHRD Sakuraからさまざまなインフォメーションを流しており、それを各チームがうまく活用している結果ではないかと思う。

徃西氏:今シーズンはこれで戦っていこうとクルマを用意して臨んだ開幕戦だったが、ご存じのとおりスープラ祭りになってしまった。そこで開幕戦で見てきた弱点をカバーできるように、細かいところから、形のあるものやないものまでかなりの部分をやりこんだ。通常であればこんな小さな効果しかないものはやらないよということろまで、積み重ねて対策を行なった。

 昨年のツインリンクもてぎのレースではホンダが活躍したのに、今年はスープラ祭りなんてことになったら情けないので、気合いを入れ直して取り組んできた成果だ。基本的には効果が出やすいところに集中して取り組み、NSXのよさを伸ばす形になっている。

──次の鈴鹿でもその効果はあるのか?

徃西氏:鈴鹿もホンダのホームコースなのでなんとか勝ちたいと思っている。昨年は2回ともGT-Rに勝たれているので、ピットレーンに気をつけてぶつけられないように頑張りたい(笑)

──優勝後の会見で山本選手が「鈴鹿のドライではちょっと目がないかもしれない」と言っていたが、サクセスウェイトのことなのか、それとも車両として鈴鹿は難しそうということなのか?

佐伯氏:それはわれわれに対してのプレッシャーなのだと思う。結果だけ見ると、昨年の鈴鹿2回とも勝てていない。1号車はサクセスウェイトが50kgを越えて燃料リストリクターが効いてくるので、そういう意味合いだと思う。

ホンダ勢だけが早めにピットインして前のクルマをアンダーカットできたのはツインリンクもてぎが燃費に厳しいサーキットだから

第4戦もてぎを優勝した山本尚貴選手(右)と牧野任祐選手(左)

──鈴鹿に向けて何か対策を行なうか?

佐伯氏:引き続きセットアップの面の改良を目指すのと、今回トラブルが発生した車両がいたのでその確認をしないといけない。

──17号車のトラブルはなんだったのか?

佐伯氏:シフトコントロールユニットのトラブル、共通部品なのでトラブルが出たのがNSXだけなのか、ユニットそのものの問題だったのか、確認してサプライヤーにも報告しなければいけないと思っている。

──次の鈴鹿では昨年ダンロップが好調で、本命は今回4位に入った16号車ではないかと思うが、レースペースについてどのように評価したか?

佐伯氏:今回ダンロップのペースは去年から比べて落ち込みがないというのが確認できた。鈴鹿にも同じようなことが言えると思う。鈴鹿の暑い中での8月のレースも期待している。また、19号車が示したようにヨコハマも去年よりはこの暑い時期に安定したペースで走れており、夏のレースは僅差のレースになるのではないか。ホンダ陣営でもサクセスウェイトの軽いクルマはこのあたりでポイントを稼いでほしいので、8号車や同じダンロップの64号車も含めて頑張ってもらいたいと思っている

──今回のレースを見ている、ホンダの5台のNSXのうち16号車 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTを除く4台がほかよりも早めにピットに入り、その後の新しいタイヤのメリットを生かしてアンダーカットを成功させている。

佐伯氏:基本的にピットストップのタイミングはチームに任せており、チームが決めている。ただ、今日のレースを見ていると、ここのサーキットのピットウィンドウ(義務づけられているピットインすることができるタイミングのこと、SUPER GTでは1人のドライバーがレースの2/3以上を走ってはならないという規定があるので、今回のようにピット作業が1回になるレースでは1/3が過ぎればピットに入ることが可能)は、燃費との相談になり、規定のミニマムである1/3では足りなくなる。

 そのため、入れる周回は燃費との相談になるが、それを見るとホンダの方がほかのメーカーよりも広いのだということは見受けられた。チームはミニマムで入れて、クリアなところを走らせようという戦略を採ることができた。

──この先もそうした利点を生かしたアンダーカットが可能だと考えてよいのだろうか?

佐伯氏:それは一概にそうとはいえない。それが可能なのは、燃費がわるいサーキットでだけだ。燃費に余裕があれば、ピットウィンドウが規定ミニマムの1/3でどこでもピットに入ることができる。それに対して燃費に厳しいツインリンクもてぎでは、各車がピットに入れるタイミングは燃費で決まってくる。

──この先もそうしたサーキットはあるのか?

佐伯氏:今の時点ではどこがそうだとはなかなか言いにくい。しかしツインリンクもてぎが一番燃費に厳しいサーキットであることは間違いないと思う。